大学にスーパーリーグを!
1998年6月14日、トゥールーズで行われたグループHの日本対アルゼンチン戦、アルゼンチン代表DFアジャラ(Roberto Ayala,右)と競り合う日本代表FW中山雅史(左)。試合は1-0でアルゼンチンが勝利した。(c)AFP/Jean-Loup GAUTREAU
以前から日本の学生スポーツとその将来の有り方について、私は大いに考えるところがありましたので、今日はその一端を述べてみたいと思います。
そもそも我が日本国の場合には、学校体育などという言葉が存在し、政府も文部科学省でスポーツ政策を扱っている位ですから、教育と深い結び付きがあることは明々白々。そして、少くとも戦前までは学校教育と共にスポーツが発展してきたと言っても過言ではありません。
また、柔道、剣道、弓道、合気道といった武術を中心とした日本古来の文化も、道という言葉に表されるように、教育的要素、習い事として定着してきた歴史があります。まぁ、花を活けることや、お茶を入れることまで道にして極めようとする位ですから、日本人は民族的に余程習い事が好きなのでしょう。
だからこそ日本は、世界で最も文盲率の低い国のひとつとして、また、教育水準の高い国として君臨出来る(最近はそれもあやしくなってきているとの噂ですが・・・)のだと思います。
戦後、遅ればせながら欧米のプロスポーツの真似事のようなことをして、学校以外の分野でもスポーツが発展し始めましたが、今度は企業が学校に取って代わっただけで、文化としてその競技を昇華して行こう、育んで行こうという機運は希薄なままです。
例えば数十年の歴史を誇り、先のWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)で世界一の栄冠を勝ち取った日本の野球界ですが、その基盤はヤクルト、ロッ テ、日本ハム、オリックス、ソフトバンクといった名だたる企業に支えられています。それらの企業は毎年広告宣伝費という名目で巨額の資金を各球団に提供し ている為、独立採算制が実施されていません。ほとんどの球団が赤字ですし、親会社抜きでの経営が出来ないのですから、プロ野球ではなく企業野球と呼ぶべき なのです。
ちょっと学校スポーツと話しがそれてしまいましたが、 そういった日本のスポーツの土壌に新風を吹き込んだのは、皆様御存知の通り、Jリーグです。
言うまでもなく、Jリーグが誕生したことで、地域密着、独立採算、総合スポーツクラブといった概念が日本に誕生し、アルビレックス新潟に象徴される斬新かつ理想的なスポーツの形態が浸透し始めています。
日本の野球界もその余波を受けて序々に序々に変化し始めているわけですが、一世紀以上に渡って我が国のスポーツ発展の土台になってきた学校スポーツは、今後どのような道を辿るべきなのでしょうか。
私は、今年の夏の甲子園大会のフィーバーを見てもわかるように、まだまだ根強い人気と注目度を誇っており、高校野球やフットボールの全国高校選手権を悪と決め付けるべきではないと思います。要はスポーツを文化としてどう捕えるかであり、具体的にはシステムの問題なのです。現に後者の場合は日程等が随分と緩和された経緯があります。
そして、結論から申し上げると、日本人の長所とも言える習い事好きの国民性、いわゆる勤勉であることを考慮した場合に、学校体育をスポーツの発展に活用すべきだと思います。
特に大学スポーツに関して、私は具体案を持っているので、ここに御紹介させていただくことに致しましょう。
まず、日本の大学スポーツの有り方について、ヒントとなったのはアメリカ合衆国です。
アメリカに於ける大学スポーツは、バスケットとアメリカンフットボールに代表されるように、非常にレベルが高く、いわゆるプロの予備軍、サテライトリーグ のような存在となっています。その文武両道精神は徹底しており、成績の悪い選手や落第組はトップチームに残れないと聞いていますし、優秀な新卒業生達は毎年プロの即戦力としてスカウトされ、実際に活躍しています。
日本も特にプロのある野球やフットボール、そしてバスケットという競技に関しては、このアメリカのシステムを積極的に取り入れば良いと考えます。
フットボールの場合ですが、まず地域を東日本と西日本に分けて、フットボールを国技ならぬ校技として内実共に積極的に強化する大学を募ります。そして1 万人以上収容の本格的な芝のスタジアムを所有すること、最低1人以上のプロの監督或いはコーチ(S級ライセンス所有)を雇用することを最低条件とします。 また、かつてのカルバリオやマリーニョのように優秀な外国人を留学生として受け入れるのも良いでしょう。
なお、東西をそれぞれ10校ずつに分けて、本格的なリーグ戦をホーム&アウェーで実施して、東西のチャンピオン同士が更にホーム&アウェーで日本一を決するという仕組とするのです。目指す方向性としては、昔のように、それらの大学の中から天皇杯のチャンピオンを輩出させるようにします。各大学は相当な努力を必要とするでしょうが、少子化社会を見据えた時に、フットボールの名門校となることは、経営面でも大きなプラスとなると思いま す。
このシステムが機能すれば、フットボールの場合、競技生命が短い為に文武に秀でた高校生が、卒業に際してどちらかをあきらめる傾向に、歯止めがかかる事が期待されます。そして、これまでの日本代表がそうであったように、結果的に大学卒のJリーガーが常時2~3人、代表の中心選手として活躍出来ることを日本のフットボールの特徴、武器とすることが出来るのです。
何故ならばフットボールの本場である欧州と南米では、大卒の選手が代表入りどころか、プロ入りすることなど極めて希であり、かつて僅かにイングランドリー グで、スティーブ・ハイウェイとスティーブ・コッペルという大卒の選手が活躍していた程度です。しかも、彼等は仰々しく学士プレイヤーなどと呼ばれていました。
その点、日本は釜本、杉山以前より歴代の代表選手の多くは大学を出ており、最近でも井原、長谷川健太、中山、名波、堀池、桂谷、宮本といった中心選手達は皆大卒です。
日本人の頭脳明晰、勤勉さをフットボールの世界にも反映させる大学のスーパーリーグ(仮称)設立は、オシム氏も納得してくれると思うのであります。
コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2006年 09月 05日 14:35:20
コメント
こんにちは。
いつも大変参考になります。
大学のスーパーリーグですか!!
確かにアメリカでは野球・バスケと大学スポーツは花形だと聞きます。私は日本の高校野球やサッカーの冬の選手権のような位置づけと認識していたのですが、実際はどうなのでしょう?
私は「競技生命の短いサッカー」において18~22歳の貴重な時間をアマチュアで過ごすのはあまり良いことでは無い気がします。
大学に通いたい文武に優れた選手の受け皿とするのならば、東西2つ程度の強豪チームを作り上げてJリーグに加盟させてはいかがでしょうか?10チーム程度とどうしてもリーグのレベルが低くなるような気がします。やはり高いレベルでプレーしていないと平山選手のように(今日、ヘラクレスを退団したニュースがありました)せっかくの才能が伸び悩んでしまう気がします。
さらにその大学では優秀な選手を育てるのと同時に、優秀な指導者やフィジカルトレーナー等を育成するプログラムを作って欲しいです。もちろんプロ志望の学生にもそういったプログラムはきっちりと学ばせます。
優秀な指導者を数多く輩出しているオランダでは、そういった指導者アカデミーがあり、例えば近代サッカーの非常に複雑化しているシステム1つをとってみても何十種類ものシステム対して、相性の良いシステム、悪いシステム、効果的な攻撃パターン、非効果的なパターンを徹底的に叩き込む事から始まると聞いています。
もちろん頻繁に現役のプロコーチを講師として招き、早い現場の変化に対応しているようです。
かのヒディング監督ですら講師として招かれつつ、学生の意見に真剣に耳を傾けているというほどです。
最近福島県に出来た中高一貫のサッカースクールがそういった位置づけになるのかもしれませんが・・・
ちなみに今日もオシム監督が「いろいろな状況に対応できるようなクレバーな選手を今回は連れてきている」といっているように彼が「頭脳明晰」な選手を求めているのは明らかです。
まあ、何のスポーツでも理解力・判断力等の運動能力以外の部分は選手の成功に大きな影響を与えているのは間違いなさそうです。
まとまりの無い文章で申し訳ありません!
クライフターン @ 2006年 09月 06日 13:27:36
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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