大善戦!? 普通あの展開ならば、勝たなきゃ!
昨日オーストリアのグラーツで行われた国際親善試合で、日本代表はW杯優勝候補の一角を担うイングランドと対戦しました。試合会場はオシム監督がかつて率いたシュトゥルム・グラーツの本拠地であり、余談ながら個人的には、昨夏にベルダーブレーメンの一員として鍼灸トレイナーのKさんと一緒にベンチでプレシーズン・マッチのグラーツ戦を観戦した懐かしのスタジアムでもあります。こじんまりとしたスタジアムではありますが、客席とピッチの距離が近いフットボール専用スタジアムなので雰囲気は申し分ありません。
さて、その注目の一戦ですが、日本代表は良いところが全くなかった先の韓国戦の反省を踏まえ、スイス合宿では選手同士が積極的な意見交換を行い、戦術面でも特に守備の意識の共有と連携を確認し合うなどの改善が試みられたようですが、このイングランド戦は同じグループリーグの強豪オランダや、デンマークを仮想しつつ、その改善策を試せる絶好の機会でもあったわけです。
そして肝心の試合ですが、何と前半のセットプレーから闘莉王選手が先制し、日本がリードするという願ってもない展開で前半を終えたのであります。
具体的には中盤の底に阿部を配置することで相手の攻撃をより効果的に受け止めることが出来、攻撃ではその安部選手を基点に中盤の遠藤選手と長谷部選手がテクニックを生かして前線の岡崎選手、或いは左翼を担っていた大久保選手や長友選手等と絡んで攻めるというパターンが機能していました。
後半に入るとイングランドは一気に選手を5人変えて現状を打開しにかかります。親善試合ですから選手を試す意図もあったとはいえ、この交代はこのままおめおめと負けるわけには行かないというイングランドの意思表示でもあったかと存じます。案の定、イングランドは勢いを増して攻勢に出ますが、前掛かりになった隙を突いて岡崎選手、本田選手、長谷部選手、そして途中で投入された森本選手等が絶好機を生み出します。ここで誰かが決めていれば、試合展開はもっと日本に優位になっていたでしょうが、そこで決められないのがやはり日本人選手。特に岡崎選手のキーパーと1対1になった場面でのシュートは決めなければならなかったと思います。
しかし、それでも自陣ゴール前でのフリーキックからPKを与えてしまったシーンでは、あのランパードの鋭く低いシュートを完全に読み切った川島選手がスーパーセーブ!そこまでの流れは完全に日本代表のものでした。
一方のイングランド代表は特に前半は運動量が少なく、緩慢なプレーが随所で露呈され、これで優勝候補は笑わせるといった拙攻を繰り返していました。(最もどのチームもこの時期はフィジカルト面で追い込みを掛けている為に体力的にはきつい状況での試合となり、前日にはスペイン代表もあのサウジに2点も取られ、ロスタイムでやっと引き離すという試合をしています。)
つまり、もう後が無いという危機感を持って万全のモチベーションで望んだ日本代表は、川島選手を中心にディフェンス面で最高のパフォーマンスを見せ、正に流れを呼び込み勝利を手繰り寄せていたのです。特にこの日の川島選手は気迫あふれるプレーで好セーブを連発!守護神として正に神懸かったプレーを見せてくれていました。この試合で一番際立っていた選手と言っても良く、普通ならばこのような当たっている選手を擁し、流れを掴んでいるチームが勝つのものなのですが、結果はご存知の通りの逆転負けでした。繰り返しますが、普通ならばあの展開ならば、悪くても引き分けに持ち込むのがフットボールの試合というものです。「普通、あの展開ならば勝たなきゃ!」ということに尽きます。
結果的には、逆転負けを喫し、しかも2失点とも守備の要の2人による自殺点でした。それも後半30分前後からの連続失点・・・。体力を消耗し、判断力を失った日本代表選手達の自滅とも言える失点でした。
そうなのです。2006年W杯直前の親善試合対ドイツ戦での2失点、2006年W杯本番初戦の対オーストラリア戦での3失点、同ブラジル戦での失点、今回のW杯予選のアウェーの対オーストラリア戦での2失点、昨年行われた親善試合対オランダ戦での失点、そして今回のイングランド戦での2失点と、オシム監督の時代を除いて、いずれも日本代表が格上の相手と対戦した際には、その殆どが後半、それも特に終盤に失点を重ねているのです。
日本代表は相手が強豪となると、どんなに善戦をしていても終盤に失点を重ねる、終盤に足が止まってしまう、即ち90分間持たないという致命的な欠陥を抱えていると言わざるを得ないのです。
それを克服する為には日本人選手の持ち味を熟知し、それらを最大限に活かし切る戦術を生み出し、そしてそのためのハードなトレーニングを2006年W杯のブラジル戦終了後から今日まで積んでこなければならなかったのです。しかし、本番2週間前になってもなフィジカル面で90分間持たないという問題を抱えてしまっている現状は、あるい意味で救いようがありません。
何故ならば、現在の日本代表チームがW杯でベスト4を目指す上で抱えている問題は、単に高地に慣れるとか、走力を上げるとか、フィジカル・コンディションを上げるといったことではないからです。イングランドのようにフィジカルに優れ、技術もあって、ルーニー選手のようなスーパースターのいるチームを日本代表が攻略するには、全員が走りながら頭を使って判断力を上げつつポゼッションを高め、その流れるようなパスワークの中で得点を狙うという難度の高いパフォーマンスを90分間続けなければならないからです。そしてそのパフォーマンスを大会期間中毎試合において維持し続けた暁にベスト4が見えてくるのです。残念ながら、現状は世界の強豪チーム達と対戦するには、最高のパフォーマンスを見せたところで90分間戦えるだけの総合的な力が足りません。ガソリン切れを起こしてしまうのです。
今回のイングランド戦の善戦も、先の韓国戦で屈辱的な完敗を喫した為に選手がこれではいけないという危機感が持ち上がり、モチベーションが上がったことが最大の要因です。結局は、日本代表はモチベーション面で、まだこの時期には上げる必要のないイングランド代表のそれを上回っていたに過ぎず、根本的な課題は何もクリアされていないと言わざるを得ません。
これが、イングランド戦を終えての私の分析でございます。要するに時既に遅し。手遅れです。
モチベーションは戦う上で、最も大事な要素のひとつですが、それを最大限に活かせば勝てるほど世界は甘くありません。カメルーンには善戦出来るかも知れませんが、グループリーグ突破は無理でしょう。残念ながらこれが私の予想であり結論です。
指揮官としてベスト4を狙うということ以外は、ブレブレの発言と迷走を続けてきた岡田監督。今回の一見善戦に見えるイングランド戦の後に、本大会初戦(カメルーン戦)への道筋が見えてきたとはつげんされたようですが、一体どこまでおめでたい方なのでしょう。本来ならば道筋は監督就任時にはっきりと見えていなければならず、この時期にはそれが確信に変わっていなければならないはずです。
次回は、そんな状況下でも、岡田監督には是非取って頂きたい戦略、策略についてお話ししたいと存じます。
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登録日:2010年 05月 31日 10:46:44
コメント
小谷様
最下位の某在京球団のファンが、「弱い時代を知っているだけに、余計悔しい。」と漏らしました。私も同じ心境を日本サッカーに感じます。
私は無力なしがないサッカーファンですが、川渕さんは勲章も受章されたそうなのでこれを機に勇退を決断して戴きたいものです。
サッカーのある生活 @ 2010年 06月 03日 13:22:11
サッカーのある生活さん
変身が遅くなって申し訳ございません。
川淵さんは名目上勇退されているはずなのですが、その影響力が負の遺産として受け継がれてs閑っていますね。この負の遺産については、近くブログ似て述べさせていただきたいと存じます。
小谷 @ 2010年 06月 10日 23:19:24
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- プロフィール
- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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