組織力と個の力


いやあ~、ウルグアイ対オランダの準決勝戦は実に見応えのある試合でしたね。
強豪相手にはポゼッションを与えておきながら、ボールを奪うや際どいところまで相手を追い詰める堅守速攻型のウルグアイと、流れるような早いパスワークから攻撃の糸口を見出すオランダの対決の構図は、1998年W杯で観戦したフランス対クロアチア戦を思い起こさせるものでした。

しかし両者に共通していたのは、決定的なシーンや得点がらみの局面は個の力によって生み出されていたということです。オランダの1点目はファン・ブロンクホルスト主将の鮮やかなロングシュートでしたが、32年前のW杯でやはりオランダ代表の主将であったアーリー・ハーン選手がねじ込んだ圧巻のロングシュートを彷彿とさせる見事なものでした。

一方、ウルグアイの同点ゴールも、フォルラン選手がシーズン中に再三見せていた技ありのシュートによるものでした。この選手の凄いのは、どんな形からでも得点できるところで、今がもっとも油の乗った最盛期を迎えているのではないでしょうか。ドイツのクローゼ選手が32歳で、フォルランは31歳と稲本選手や遠藤選手、そして高原選手に代表される99年Wユース準優勝組と同世代だけに、30歳を越えた彼等日本人選手達にはまだまだ第一線で活牽引車として活躍して頂きたいものです。

そして個の力といえば、何といってもオランダのスナイデル選手であります。彼はまだ26歳と若いですがその存在感は抜群で、オランダ代表の得点の多くは彼がチャンスメークしたものですし、自らフィニッシュも決めるという縦横無尽の活躍です。中盤の選手でありながら得点も量産するあたりは、かつて将軍と呼ばれたフランスのプラティニ選手に引けを取りません。否、プラティニ氏は3回出場したW杯で一度も決勝に行っていませんから、それ以上といっても良いのかも知れません。プラティニ選手と違って170センチと小柄ですし、お世辞にも華麗とは言えませんが、日本人選手が手本としなければならないところが沢山ある選手と言えるでしょう。

オランダ代表の今大会の特徴は、前半よりも後半のパフォーマンスが必ず上回ることと、一見何となくポゼッションを維持しているように見せかけつつ、突如として前述のスナイデル選手や、ロッベン選手がその高い個人技で前線に変化を付けてくるところにあります。カイト選手の圧倒的な運動量に裏打ちされた攻守にわたる献身的な働きも圧巻ですが、やはり、このレベルになると基本戦術と高い個人技とが絶妙のバランスで組み合わさり、優勝を狙える位置まで上り詰めて来ていることが良く分かります。

一方のウルグアイ代表ですが、同じ堅守速攻でも彼等を見ていると、日本代表に何が足りないのかが如実に分かるというものです。例えばボールを奪ってからゴールに向かう攻撃時の推進力がまるで違うわけですが、それは前線の2、3人選手が個の力で世界トップレベルのディフェンダーを1人、2人とかわせるからこそ為し得ることであります。リーガ・エスパニョーラで2回も得点王に輝いたフォルラン選手や、エールディヴィジョンで35得点ものゴールを量産して得点王に輝いたスアレス選手のような偉大なストライカーが二人揃って日本代表の前線に揃う日がくることなど想像もつかないことを考えると、本気でベスト4を狙いに行ったときに、日本代表に堅守速攻型がマッチしているかどうかは甚だ疑問に思う次第です。

いずれにしましても準決勝ともなると、幸運や大健闘やチームワークだけでは及ばない次元の高いフットボールが繰り広げられるわけですが、今夜のドイツ対スペインは事実上の決勝戦といっても過言ではないスペクタクルな展開が待ち受けていることでしょう。また、この両チームも、オランダやウルグアイのように日本代表に何が足りないのかを示してくれることは間違いなく、今夜は固唾を呑んでこの一戦を見守りたいと存じます。

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登録日:2010年 07月 07日 14:59:32

コメント

確かに。
堅守速攻型には前線に圧倒的な個の力が存在するというのが必須条件なんですよね・・・。

さらに、ウルグアイやパラグアイのように予選でアルゼンチンやブラジルを倒すために必然的に堅守速攻型となったチームとは違って
日本はアジアでは必然的にポゼッションサッカーが成り立ってしまうので、
堅守速攻を磨ける相手と真剣な試合が出来ないという欠点も。

ただ、今回の収穫である組織的なディフェンスシステムというのは、
勤勉な国民性にもマッチしていると思うので、今後も継続して欲しい部分です。

そこで、以前も言いましたが、
ブラジルやアルゼンチン、スペインのように、
どこが相手でも同じスタイルで受けて立つとのではなく、
相手のストロングポイントを消すという事を最優先事項で
こちらのスタイルはポゼッションと堅守速攻をその都度柔軟に変化させるというのが望ましいのかなと思います。

これは日本企業の歴史を見たときに、発明するのは苦手でも、
何かをアレンジする力、完成度・精密度を高める事が
世界的にも郡を抜いて得意とする部分だということから、
受動的な国民性にもあっているのではないでしょうか?

多少エンターテイメント性は犠牲にしてでも
とにかく勝つことを最優先という考え方です。

私の知ってる限りこのスタイルを目指した場合の最適任者は
ヒディングです。

そして、今回ほぼこれに近いスタイルのドイツが優勝すれば、
協会もそういうビジョンを描いてくれるのではないかと
ひそかに期待しています!

勝手な想像ですが、
小谷さんの理想像は2008EUROのスペインチームですか?

クライフターン @ 2010年 07月 07日 17:45:58

クライフターンさん

いつもコメントを有難うございます。

「私の理想像は、2007年にアウェーでオーストリアとスイスと対戦したオシムジャパンです」な~んちゃって・・・。

でも、あながち出鱈目を言っているわけでなく、欧州の二番手グループに着けている国に対してアウェーでポゼッションで勝る日本代表を初めて目の当たりにしたので、強烈な印象として残っています。実際、当時戦ったオーストリア代表の選手からも、日本代表と中村俊輔選手を絶賛する声を直接聞きましたし、今大会でオシム監督が指揮を執る日本代表を本当に見て見たかったというのが、本音です。

しかし、EURO2008の時と言い、今大会と言い、スペイン代表のフットボールはかなりの域に達していることは間違いありませんね!

小谷泰介 @ 2010年 07月 08日 17:39:13

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プロフィール
小谷泰介
1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。

四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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