良い監督の条件 ①

<サッカー>記者の質問に答えるオシム日本代表新監督 - 日本

【東京 21日 AFP】日本サッカー協会は、理事会を開き日本代表新監督にイビチャ・オシム(Ivica Osim)氏を正式決定した。
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(c)AFP/Kazuhiro NOGI

AFPBB News


 オシムが去った後のジェフ千葉市原が苦しんでいます。

 リーグ戦でここ3連敗と優勝戦線からは完全に脱落した格好で、敗戦の内容も失点が多く、かつての勢いが見られません。

 天下のオシム監督が抜けた後ですから、大変なのは理解できますが、オシム氏のDNAを受け継いだ息子アマル氏が監督だけに、何とか踏み止まって欲しいものです。

 しかし、正直に申し上げると私はアマル氏が父親を上回る成績を残すことはあり得ないと予想しています。

 最終的にはジェフ側が決定したこととはいえ、我が子を後釜に据えるあたりは、オシム氏も人の子だと思いますし、ジェフ千葉市原は安易な道を選んでしまったという印象は拭えません。

 オシム去りし後のジェフユナイテッドを真剣に憂慮するならば、ベンゲルやモウリーニョとまでは言いませんが、他に人選があったはずです。

 ちなみに私ならば、2000年に清貧弱小クラブであった水戸ホーリーホックを率いて旋風を巻き起こしたバビチ・ブランコ氏か、2年間で清水エスパルスに 3つのタイトルをもたらしたゼムノヴィッチ・ズトラヴゴ氏にオファーを出します。彼等ならば、オシム氏と同じ流れを汲むライセンスを取得していますし、本国でも日本でもキッチリと結果を出しているからです。

 ともあれ、ひとつのクラブが安定して良い監督を選び続けることは至難の業であり、世界的に見てもそれが実行できているクラブは、大目に見てバイエルン・ミュンヘンか、リバプールくらいのものではないでしょうか。

 では、いったい良い監督の条件とは何なのか。少なくともプロと名乗っている以上は、ジェネラル・マネージャーであれば、これとこれとこれといった具合に即答できねばなりません。

 明確な条件を出せたところで、その条件を備えた監督を何人か知っていなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。

 クラブの強化費にはそれぞれ上限があり、その中で良い選手、良い指導陣を選んで強いチームを作ることは実にプロフェッショナルな作業であり、ましてや10年、20年の長きに渡って結果を出し続けることは偉業といって良いでしょう。

 Jリーグが始まって15年になろうとしていますが、ヴェルディもアントラーズもジュビロも、黄金時代は僅か4~5年しか続かなかったことがその何よりの証拠ではないでしょうか。

 ところで、私も偉そうなことを述べている以上は、明確なる良い監督の条件ぐらいは皆様に披露するべきだと思いますので、早速実行に移すことに致しましょう。

 私の考え得る良い監督の条件は次の通りです。

1.フットボールを心から愛していること。
2.人間性に優れ、信頼に足る人物であること。
3.強運の持ち主であること。
4.ある程度の経験を積み、実績を残していること。
5.向上心に溢れ、勉強熱心であること。
6.本場の主流たるライセンスを取得していること。
7.攻撃的フットボールを標榜するだけでなく、実践かつ具現していること。
8.心理学者、哲学者的素養があること。
9.調教師的センスを持ち合わせていること。

 以上ですが、これらの条件についてひとつひとつ補足していきたいと思います。

 1つ目のサッカーを心から愛していることについて。

 非常に漠然としていて掴みどころがないようなのですが、とても大切な条件だと思っています。

 まず、競技としてのフットボールに幼い頃から慣れ親しみ、愛していること。そんな中からfootball people(本場英国で、フットボール・ビジネスに従事する人達の総称)になった人は四六時中フットボールのことを考え、フットボールの為に人生を捧げ ています。フットボールの仕事をしているのに、友人と会えばフットボール談議、父親と久しぶりに会ってもフットボール談議、息子とライブを見ながらフット ボール談議といった具合です。

 俺はサーフィンや音楽も好きだからとか、いずれは独立してビジネスをといったようなブレがありません。何もそれが悪いということではないのですが、フットボー ルの指導者の道は奥が深く、果てしないですから、ブレがあっては良い指導者になることが出来ない。ただそれだけのことです。

 2つ目の人間性に優れ、信頼に足る人物であることについては、補足は必要ないかも知れません。フットボールの指導者であろうが、学校の先生であろうが、 人にものを教える立場にある人は、その道に長けているばかりではなく、人間性に溢れ、魅力がなければ一流にはなれないと思います。

 ひとつの例えなのですが、大事な試合で、しかも接戦で苦しい局面にあった時、選手達がその状況を打破するためには様々な要素が必要となってきます。 日頃のフィジカル・トレーニングや充分な休養といったフィジカルな部分から、タイトルに対する執念や家族への想いといったメンタルな部分に至るまで、色々 な要素が織り成されて選手を突き動かすのですが、その中にこの監督を男にしたいという動機が加わるかどうか。これはとても重要なことなのです。

 かつて原監督が浦和レッズを指揮していた頃に、ペトロビッチという当時のユーゴ代表の選手が不甲斐ないプレーをするチームメイト達に、「おまえ達は、こんな良い監督の為にやってやろうと思わないのか!?」と言ったそうですが、まさに好事例と言えるでしょう。

 また、その他にも監督はピッチの内外に於いて、人事権に関わる仕事をしていますから、金銭のからむ誘惑が多い立場にあります。そういった悪徳エージェントの魔の手を振り払うことができるか、寄せ付けない威厳があるかどうかは正に人間性の成せる業なのです。

 人間性に優れ、信頼に足る人物であることは、良いフットボール監督になる為の必須条件と言えるでしょう。

 (以下の条件については次回で補足させていただくことに致します。)

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登録日:2006年 09月 20日 16:06:01

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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