果報は寝て待て!? 小倉氏会長就任の仰天人事
今回の新会長人事を巡るドタバタ劇について述べる前に、まずは新会長に就任された小倉純二氏当人にスポットを当ててみたいと存じます。何故なら小倉会長は、これまでずっと縁の下の力持ちとして外交面で日本協会を支えてこられた方で、ご本人は会長に就任することなど夢にも思わなかったはずだからです。
実際小倉氏は選手経験どころか、フットボールの競技経験が全くなかった方で、三ツ沢の古川電工独身寮に入っておられた若かりし時に、その直ぐ傍の公園内で練習に興じる同僚の古川電工の選手達(若かりし川淵三郎氏や宮本征勝氏ら)に興味を示され、球拾い役を買って出たことがフットボールとの出会いであったと聞いています。
元来、温厚で面倒見の良い性格である為、フットボールに情熱を傾ける同世代の若者達の単なる世話役から、やがて古川電工サッカー部の部長を務めることになりますが、同サッカー部のOB達が重鎮として実質協会を切り盛りするようになると、ますますその国際感覚が重用されるようになります。特に古川電工ロンドン支社勤務時代には協会の窓口として、キリンカップで来日するチームの交渉を一手に引き受けるなど、外交面で協会の為に尽力。当時の協会のみならず、日本のフットボール界で英語を流暢に操られる方など殆ど見当たりませんでしたから、その語学を含めた外交能力は抜きん出ていたのでしょう。
因みに元日本代表監督の二宮寛氏なども国際感覚に長け、1970年代にフットボール先進国との太いパイプを持たれた逸材であられましたが、当時のアマチュアリズムにどっぷり漬かった協会役員からは急進派と見なされ、その実力を発揮する機会に恵まれなかっと言われています。また、故人の村田忠男元副会長も国際派であり、2002年W杯では役員として活躍されたものの、古川閥が力を持っていた協会にあって二宮氏同様に三菱重工出身であったことが、やや不遇を囲う要因となっていたように思います。
その点、小倉氏は古川電工出身ですから、Jリーグ誕生を期に同社を離れて協会一筋の生活をスタートされ、当然のこととしてFIFA関連の仕事を中心とした責務を黙々とこなされることになります。恐らく最も多く飛行機に乗られた日本人の一人であろうと推測していますが、小倉氏が協会の役員として世界を駆け巡った移動距離だけでも尋常ならざる数字であるはずです。
しかし、前述のように自身に競技経験がなく、フットボールに情熱を傾ける同僚をサポートすることからこの世界に飛び込まれた経緯もあって、権力欲とは無縁の方であったと私は感じております。生涯黒子といったら言い過ぎかも知れませんが、いつお会いしても自分は縁の下の力持ちで良いといった紳士然としたオーラを発していらっしゃいました。そしてそれは、どなたかのようにギラギラとした権力欲が見え隠れするオーラとは全く異質のものでした。
やがて時は流れ、小倉氏も70歳を越えられて、来年のFIFA理事の退任を機に、恐らくは悠々自適のご隠居生活をなさろうと考えておられたはずなのですが、人生とは全く分からないもので、突如として異例の協会会長就任が決定するわけです。
そこに至る経緯を分析、論評することがジャーナリストの責務かとは存じますが、意外にドロドロとした日本協会という利権の館の会長の座に、無欲であった小倉会長が就任するという誰もが想像し得なかった仰天人事に接し、「果報は寝て待て」という有名な諺を思い出したこともあって、このような内容とさせて頂きました。1990年以降、Jリーグの発足と共に急速に発展を遂げ、財政的にも潤ってきた協会のトップの座を夢見た輩が何人いたのか、また現在何人いるのかは知る由もありませんが、小倉新会長がその中に含まれていなかったことだけは間違いないでしょう。
なお、小倉氏が会長就任の記者会見で述べられたことは、犬飼会長の退任理由を除いてはどれもなるほどと納得の行くものばかりで、是非とも掲げた目標の遂行の為、正に最後のご奉公として全力で取り組んで頂きたいと願う次第です。また、「無欲の勝利」とはよく言われますが、2年後の退任時に同氏が真の勝者としてその勤めを終えられることを心よりご祈念申し上げます。
一方で、今回の会長選以降は、じっくりと日本のフットボール改革に取り組む意味でも2年単位の短期政権で終わらぬよう、万民が納得できる選考で是非とも若い人材を登用して頂き、会長職が天下りならぬ年功序列職とならぬよう期待致します。
コメント[6], トラックバック[0]
登録日:2010年 07月 27日 22:23:03
コメント
小谷さん、こんにちは。
今回の交代劇は???ですね。
川渕さんのコントロールがきかなくなったんですかね?
年功序列、古河・早稲田閥の流れはしばらく続いてしまいそうです。
個人的には、中田英寿会長に期待していますが
中田氏こそ重鎮たちの手の中で踊りそうに無いので
やはり、次あたりは今回の功労者岡ちゃんが最有力なのでしょう。
思い切って経営の神様、稲盛京セラ元会長に
組織改革委員長、長期戦略作成委員長として
就任してもらうというのもいいかも(笑)
クライフターン @ 2010年 07月 28日 17:51:11
セルジオ越後氏に拠ると(football weekly参照)会長は、1期2年だと名誉会長になれないそうですね。だから犬飼氏は顧問になって、川淵氏は名誉会長に留まれたわけですか。そうなると、小倉新会長も1期2年しか務めないと言う事は、川淵氏は名誉会長のままですね。決まりとは言え、これはどうなっているのでしょうか? あと、今回の一件は「週刊新潮」に載っていましたが、田嶋幸三氏がクーデターを起こして、文科省に働きかけをしたと言うことでしょうか?また記事の終わりに、元サッカー協会関係者のコメントとして(木之本氏か森氏ですか)段々川淵氏の発言力が落ちているとあったのですが、本当でしょうか? 文科省も相撲協会だけでなく、サッカー協会もしっかり監視して貰いたいです。
クマダ @ 2010年 07月 30日 14:09:24
クライフターンさん
いつもコメントを有難うございます。
岡ちゃんはかつては協会のことを伏魔殿ではないですが、卑怯な連中が多く
て嫌いだと仰っていたことがあるので、もし会長になるようなことがあれば
、是非とも理不尽な制度を改革して頂きたいものです。しかし、今回の一連の迷走劇やベスト4発言とその顛末を鑑みると、ちょっと不安になることも確かですね。
とにかく先ずは若返りです!幕末に命を賭して改革を成し遂げた志士達は皆20代、30代の青年達でした。青年こそが歴史を動かしてゆくのであり、協会に限らず日本の社会はもっと若者が重用されなければならないと常々考えています。
その他詳細については、次回のブログで述べさせていただきたいと存じますので悪しからずご了承下さい。
小谷泰介 @ 2010年 07月 31日 16:30:15
クマダさん
コメントを有難うございました。
今回の一連の騒動は、田嶋さんが動議を発動してその口火を切ったという報道がございますが、あながち嘘ではないだろうというのが私の見解です。
良く悪くも協会内のクーデターという表現が当たっているのかと存じますが、詳細は次回のブログで述べたいと存じますので、またご意見をお寄せ頂けると幸いです。
小谷泰介 @ 2010年 07月 31日 16:35:55
お久しぶりです。
スペインが優勝し日本ではスペインのスタイルをという流れの報道になってますが
何か違和感を感じますね。
日本を知らない監督を頼むよりオシム氏など日本に精通した監督などのパイプを
使い選考というわけにはいかないものなんでしょうか。
毎回毎回違う国の監督で毎回違うスタイルになるようで一貫性が無いようにしか見えませんね。
ある程度の形が見えてきてからプラスになる違うモノを取り入れるべきではないのでしょうか。
自分が携わっているスポーツでもスペインや南米、東欧系が目立ってきていますが
協会はぶれずにアメリカのやり方で一貫していて成果が出だしています。
素人目にはJFAには行き当たりばったりな感じですね。
オシム氏の流れで行くならオシム系統の監督を呼んで長いスパンで考えるべきではないかと思いますが。
自分のような素人が生意気ですが、また同じことの繰り返しなのかと思えてしまいます。
レコバ @ 2010年 08月 06日 12:58:21
レコバさん
お久しぶりですが、返信が遅くなって申し訳ございません。
確かに日本サッカー協会の代表監督人選の歴史をみると、一貫性がありませんが、今回強化担当技術委員長が自身の人脈を活かし責任を持っ手選んでいる、つまりあまり現場に明るくない親分が独断と偏見で選ぶことがなくなったことは進歩だと思っています。少なくとも責任の所在ははっきりしていますし、システム的には改善されたのではないでしょうか。但し、原さんはじめ大仁さんには、就任時の記者会見で人選の意図及び経緯を明解に説明して頂かなくてはなりません。
ところで、レコバさんが携わっていらっしゃるスポーツって何なのか、興味がございます。バスケットかバレーかハンドボール、或いは水球のいずれかではないかと想像致しますが、果たしてどうなのでしょう。
しかし、圧倒的な規模と予算を誇る日本サッカー協会がぶれずに結果を出せば、他のスポーツ界にも良い影響を与えることが出来るので、本当にJFAハウスのお歴々には襟を正し、全身全霊を賭けて文化の発展に貢献してい頂きたいと存じます。
小谷泰介 @ 2010年 08月 19日 20:45:35
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- プロフィール
- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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