原さん、オニール監督はいかが!?
プレミアシップ開幕を5日後に控えた8月の9日、イングランドの古豪アストン・ビラを率いていたマーチン・オニール監督の辞任が突然発表されました。主力選手の放出を巡ってクラブと対立したことによるものと推測されていますが、現在のところ真相は明らかになっていません。
オニール監督は現役時代、ノッティンガム・フォレストのチャンピオンズカップ優勝やリーグ優勝に貢献したミッドフィルダーとして知られ、北アイルランド代表選手としても60試合以上に出場しています。特に1982年のW杯スペイン大会では、同国の主将としてグループリーグ突破の牽引車として活躍しました。私自身も現地で彼のプレーを10試合ほど見ていますが、派手さはないものの、常に冷静で攻守の要としていわゆる効いている選手であったと記憶しています。
現役を1986年に引退すると、翌年からノンリーグ所属クラブの監督としてその指導歴をスタートさせますが、1990年から指揮を執っていたウィコム・ワンダラーズを1993年には全国区のフットボールリーグ3部へ昇格させ、その翌年には2部昇格を果たすなど監督としての才能を発揮し始めます。
監督としての名声を獲得したのは1995年から指揮を執ったレスター・シティ時代で、就任したシーズンにプレミアシップへの昇格を果たすや、1997年、1999年、そして2000年とリーグカップ決勝に進出し、2度の優勝を飾るという快挙を成し遂げます。また、在籍期間はプレミアシップに於いて常に10位以内の成績を収めるなど、サポーターからの絶大な支持を得ました。
その後2000年にセルティックの監督に就任するや、最初のオールド・ファームで過去数年に渡って劣勢を強いられてきた宿敵レンジャーズを6対2と粉砕。以降、その力関係を逆転させることに成功します。また、退任をする2005年までに、トレブル(3冠)
を含むリーグ優勝3回、FAカップ優勝3回、リーグカップ優勝1回という輝かしい成績を残し、その名声を不動のものとします。また、2003年のシーズンにはUEFA杯の決勝戦でモウリーニョ監督率いるFCポルトと戦い、延長戦の末に2対3で敗れるというクラブ史に残る熱戦を繰り広げました。オニール監督に率いられたセルティックは、282試合213勝29分け40敗という素晴らしい成績を残しただけではなく、オールド・ファーム7連勝、英国記録であるリーグ戦25連勝という金字塔も打ち立てたのです。
悪性リンパ腫を患った奥さんの看病の為に、2005年にセルティックを辞任しますが、2006年にはアストン・ヴィラの監督としてプレミアシップに復帰。低迷していた古豪クラブの建て直しに着手します。そして就任1年目にそれまで下位に沈んでいた同クラブを中位に押し上げるや、2年目以降は常に上位争いに加わるチームへと変貌させ、さすがオニール監督と英国のメデイア並びにフットボールファンを唸らせました。
今回の辞任はそんな矢先の出来事であったわけですが、このマーチン・オニール氏こそは本場の欧州に於いて確固たる名声を築いている数少ない監督であり、ファーガソン、アンチェロッティ、ベンゲル、モウリーニョ、カペッロ、ファンハールといった超大物クラスに続く勢力の筆頭に位置する実力者です。本来なら日本代表にとっては高嶺の花的存在の人材ではありますが、今回は本場欧州市場のマネーゲームにいささかうんざりしていることが予想され、そういった面ではチャンスかも知れません。
その指導法は、オシム、ベンゲル、シャーフ各監督のようにリスクを背負ってでも攻撃的スタイルを貫くものではなく、選手の特徴を最大限に活かしつつ、その持ち駒の中で理想のスタイルを見つけ出すフットボールを目指しているように見受けられます。何よりも知性派で知られ、プロに転向する時点では大学で犯罪心理学を専攻していたというインテリです。現在も学位取得の夢を捨てていないと言われ、何でも犯罪心理学の知識と実地体験がチーム強化に活かされているとか・・・。私も一度お会いしたことがありますが、小柄で非常に物静かな洗練された紳士という印象を持ちました。また監督としては、弱いチームを確実に強く出来る手腕があるだけに、もし私が日本代表の強化責任者であれば、駄目もとでも誠意と情熱をもって交渉に臨むでしょう。
次期日本代表監督選びのため、現在欧州に滞在なさっている原さんの苦戦が伝えられるだけに、いかがでしょう。ここはひとつ思い切って打診なさってみては!?
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登録日:2010年 08月 10日 16:20:46
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- プロフィール
- 小谷泰介
- 1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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