おめでとうジェフ千葉市原、そしてごめんなさいアマル監督

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 Jリーグよりも歴史の長いヤマザキナビスコカップの決勝戦が行われ、ジェフユナイテッド千葉市原が鹿島アントラーズを2対0で下し見事に連覇を達成しました。

 決勝戦の内容はそのキャッチコピーの通り、それぞれのチームが連覇と10冠を賭け、意地と闘志が激しくぶつかり合うなかなかのものでした。

 特に優勝したジェフは、守備の要であるストヤノフを出場停止で欠いたうえに、攻撃の中心であるハースをも前半の早い時間帯に負傷交代で失うという、言わば2人のクオリティープレイヤーを欠きながらも、その攻撃的スタイルを全く変えることなく見事なパフォーマンスを披露してくれました。

 オシム監督が率いた去年の優勝チーム顔負けと申しましょうか、PK戦勝ちではなく90分間ですっきりと決着を付けているのですから、昨季を上回る内容の優勝といっても良いのでしょう。

 
 これは、筏に載っているチーム全員をフィジカル、メンタルの両面でぐっと押し上げたうえに、全員が同じ方向へ呼吸を合わせて筏を漕ぐことを教え込まないと成し得ないことで、
指導力の勝利といっても過言ではありません。オシム監督の後を継いだ息子のアマル監督には最大級の賛辞を送りたいと思います。

 また、世界のフットボール史上、恐らく同一タイトルを親子で連続して獲得したというのは初めてのはずで、これは大変な快挙であり、ジェフの選手及び関係者、さらにサポーターには心よりお祝い申し上げたいと存じます。

 ところで、私は今回のジェフの連覇を受け、アマル監督及びその父親であるオシム代表監督に対してお詫びを申し上げなければなりません。なぜなら、私はこのブログの「良い監督の条件①」のなかで、オシム監督が去った後、調子を落としていったジェフを指して、わが子を後釜に据えるなどと安易な選択をしたためだと批判したからです。

 しかし、ナビスコカップの決勝戦を見る限り、それは誤りであったと申し上げねばなりません。なにしろ、アマル監督は就任半年でタイトルを獲得したし、その内容を見る限りは天皇杯とのカップダブル獲得の可能性を大きく残しているのですから。父上の域にはまだまだ道のりは厳しいでしょうが、是非父子で名監督と呼ばれる存在になっていただきたく存じます。

 そして私としましては、ジャーナリストとして読みが甘かったと大いに反省し、この場を借りてオシム親子に謝罪をせねばなりません。セルビア語でごめんなさいをなんというのかは知りませんが、ここは日本語でご勘弁を。

「ごめんなさい、アマルさん。そしてオシムさん。」

 さて、一方で敗れたアントラーズは10冠が実に遠いですね。9冠まではスムーズに来たものの、その後4年間は無冠のシーズンを過ごしています。今回もその闘志と最後まで勝利をあきらめない姿勢には敬意を表しますが、内容的には完敗で、またしてもその機会を逸しました。

 正直に申し上げますと、このクラブは現状のままの体制だと10冠に手が届く日はやって来ないでしょう。それは、何故このクラブがJリーグの草創期に強豪チームでいることができたのかを分析すれば自ずと答えが見えてきます。

 まず、なんといっても偉大なプレイヤーだったジーコの存在です。そう、住友金属という弱小クラブに選手として迎えられ、チームにプロフェッショナリズムを叩き込んだことが、栄光の始まりです。

 裏を返せば、当時Jリーグ入りを目指していた10数チームの中でも、最後尾どころか番外にいた日本リーグ2部の住友金属が無知の知と申しましょうか、己の立ち位置を自覚して、チェアマンの要望に誠実に応えていったことが勝因でした。

 そして、そのジーコ・コネクションを最大限に活用してアルシンド、ビスマルク、レオナルド、ジョルジーニョといった真のクオリティー・プレイヤーを次々と獲得し、9冠という栄光の日々を築いたのです。日本人選手も常に大勢のトッププレイヤーを抱えていましたから、指導者の良し悪しにかかわらずタイトルを獲得できました。

 しかし、一方でその路線は赤字経営という十字架をアントラーズに背負わせることになり、遂には行き詰まります。

 そこでクラブが下した決断は、筆頭株主の住友金属が累積赤字を解消する代わりに脱赤字の経営改革です。これでクラブはアキレス腱であった赤字経営からの脱却を果たし、健全経営クラブへと生まれ変わりました。

 しかし、その代償としてもう赤字経営は繰り返せませんので、多額の移籍金と年俸を払ってブラジルからスター選手を連れてくるという従来の手法が使えなくなりました。

 でも、指導者に関しては相変わらずのブラジル一辺倒ですから、自然と地盤沈下が起こってきます。常勝クラブの地位から陥落したばかりでなく、タイトル争いに加わることもままならなくなったのです。シャムスカ氏のような監督もいるのでブラジルの指導者全員がダメとは言いませんが、ブラジル本国は言ってみれば人材の宝庫であり、代表監督時代のジーコを見ても分かるように自ずと指導方法がまず素材ありきとなり勝ちで、日本にはマッチしないのです。

 少々長くなりましたが、ズバリ、アントラーズは完全に構造不況に陥っていて、脱ジーコ路線を敢行しない限り、或いは強化セクションを一新しない限り、10個目のタイトルは獲得できないと敢えて申し上げておきましょう。

 ジェフとアントラーズの成績を含めた総合力を折れ線グラフに表して比較してみると、アントラーズが9個目のタイトルを獲得した‘02年あたりを境にちょうどアントラーズが下降線を、そしてジェフが上昇線を描き始める格好になります。そして今日のナビスコカップ決勝戦で交差したとは申し上げませんが、二つの線は過去最も接近したことは間違いありません。

 サポーターは正直なもので、国立競技場の半分を埋め尽くしたジェフのサポーターを見て、時代は変わったと実感しました。かつてはゴール裏さえも埋めることができなかったジェフだったのに、黄色の波、波、波。秋の国立競技場にもみじと銀杏の見事な紅葉の如きコントラストが描き出され、実に感動的でした。

 今年のヤマザキナビスコカップを観戦し終えて、クラブの改革には勿論指導者が大事であり、それ以前にクラブが何を掲げて何処を目指すかが大切であることを再認識した次第です。

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登録日:2006年 11月 06日 17:39:24

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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