岩本選手の移籍に想う

オークランド・シティーと契約をした元名古屋グランパスの岩本輝雄選手が公式戦に途中出場し、逆転勝ちに貢献しました。
2年間も足首の痛みに悩まされていた天才肌のレフティーにとっては、久しぶりの現場復帰であり、とてもめでたい話であるはずなのですが、どうも今回の移籍話は釈然としません。
それは、もしもガンバ大阪なりヴェルディ東京なり、日本のクラブがアジアチャンピオンズリーグの頂点に立っていれば、今回の移籍話はまず無かったに違いないからだと思います。言い方を変えれば、岩本選手はあくまで客寄せパンダであって、その実力を評価しての移籍ではないということです。
昨年は、カズこと三浦和良選手に白羽の矢が立ち、まさにクラブワールドカップ要員として横浜FCからシドニーFCへ電撃移籍しましたが、思えばこれも明らかに客寄せパンダとしての移籍劇であったわけです。
ご存知のように今年も日本で開催されるFIFAクラブ・ワールドカップは、各大陸のチャンピオンクラブに出場権が与えられます。従って日本のJリーグクラブにも出場の可能性が大いにあるはずなのですが、何故かJリーグの王者達はAFCアジアチャンピオンズリーグに勝つことが出来ません。何と’02~‘03年の第1回大会より、今年の第4大会まで4年連続でグループリーグ敗退という有様です。
アウェーのピッチ状態やホスピタリティーが極端にひどかったり、観客動員が見込めないために参加すること自体が財政的負担となるなど、様々なハンディーがあるとは思いますが、頂点に立てばクラブ世界一への挑戦権を得られるのですから、ここはひとつクラブ一丸となって本気モードで戦っていただきたいと思います。サポーターもその辺を考慮し、頑張ってホームにアウェーに熱い応援を繰り広げましょう!
とはいえ、中東のクラブは財力にものを言わせてなりふり構わずやってくるし、韓国のトップチームも闘争心むき出しで手強いですから、簡単でないことは明々白々です。しかし、いまやアジアの盟主とも言うべき日本がクラブレベルでもアジアの頂点に立たない限りは、毎年人身御供ならぬ客寄せパンダの移籍を繰り返さねばなりません。
信頼出来る情報かどうかはさておき、FIFAクラブワールドカップ ジャパン2006の観客動員のためにFIFAのブラッター会長から川渕キャプテン直々に、客の呼べる日本人選手をオークランドシティFCに移籍させて欲しいとの依頼があったといいます。そこで協会は最初に中田英寿氏に白羽の矢を立てましたが、けんもほろろに断られ、次に小野伸二にアプローチしたもののレッズから「伸二は優勝争いには欠かせない」と拒絶されたとか。そこで岩本輝雄が急浮上するわけですが、協会もなかなか良いところに目を付けたなと思います。しかし、岩本選手本人やオークランドシティFCのためというよりは興業優先の移籍であることは間違いなく、モラルハザードと指摘されても仕方ないでしょう。
ところで今後、客寄せや興業優先の移籍劇を封印するには、クラブワールドカップの日本開催を辞退するというネガティブな手法をとるか、或いはJリーグクラブがアジアチャンピオンズリーグの覇者であり続けるというポジティブな目標を掲げるしかありません。当然選択するならば後者を選ぶべきですが、それが容易でないことは過去を振り返れば誰もがわかることです。しかし、目標は高く掲げてこそ目標たりえるわけで、要は協会、Jリーグ、そしてJリーグ各クラブがAFC チャンピオンズリーグに対する認識を共有すること、同じベクトルを持つことが大切なのだと思います。
アマチュアリーグの時代に古川電工や、読売クラブが成し遂げたことを、プロのJリーグクラブができないわけがないのです。さらに繰り返しにはなりますが、アジアの壁を突破した暁にはクラブ世界一の称号を獲得するチャンスが待っているのですから、Why not best ?! であります。
また、アジアのチャンピオンクラブを日本から常に出すという挑戦は、FIFAクラブワールドカップが今後どこで開催されようと続けなければならないことであり、アジアのフットボールを牽引する立場にある日本にとって使命、宿命であると敢えて申し上げておきましょう。
さて、話を岩本選手に戻しましょう。先ほど彼の移籍に対して否定的な意見を述べましたが、彼だけに焦点を当てて検証すると、ドラマチックかつ非常に意義のある移籍劇だと個人的には思います。
うまく言った場合には、ワールドクラブカップ本番でコンディションを上げた岩本選手がオークランドシティの中心となって大活躍。その後Jリーグクラブのオッファーを受けて見事復活するというドラマが見られるでしょうし、そのままセルティックの中村選手的な立場でニュージーランドに留まるのも悪くはないと思います。
いずれにしても、永遠の青年のようなあの甘いマスクのテルこと岩本輝雄選手が、今回の移籍をきっかけに不死鳥の如く蘇り、今までの鬱憤を晴らすが如く出来る限り長く現役として活躍してもらいたいと願う次第です。
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登録日:2006年 11月 10日 18:14:58
コメント
クラブワールドカップは世界中のトップリーグに所属するチームに世界一のチャンスが与えられた、素晴らしいアイディアであり大会ですが、日本で行なわれる限り永遠に興行目的の3流大会でありつづけるでしょう。
東プリ @ 2006年 11月 18日 18:37:14
東プリさんのおっしゃることに一理あるとは思いますが、そもそもトヨタカップが日本で開催されることになった経緯を紐解けば、この手の大会を維持開催し続けることがいかに困難かがわかります。
恐らくFIFAクラブワールドカップが今後も日本で開催し続けることはないでしょうが、Jのチャンピオンがいつの日か(願わくば私が生きているうちに)世界一の称号を手にするまで、またそれ以降も未来永劫続くことを祈るばかりです。
小谷 泰介 @ 2006年 11月 21日 10:10:07
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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