2010年 07月 20日

メスット・エジルという選手


W杯南ア大会で3位となった新生ドイツ代表の象徴であり、今夏移籍市場の超目玉ともいうべきエジル選手の現所属チームとの契約延長の交渉が不調に終わり、獲得合戦がいよいよ本格化しそうな気配です。獲得に名乗りを上げているクラブが、バルサ、レアル、マンU、アーセナルといいますから、彼が如何に移籍市場で高く評価されているかが分かります。

しかし、ドイツのヴェルダー・ブレーメンに籍を置くこの21歳の若者は、ブンデスリーガ通や欧州フットボールの事情通の間では既に知られた存在でしたが、今回のW杯で彗星の如く突如として現われたように感じた日本のフットボールファンが少なくなかったようです。

それもそのはずで、ドイツ代表は伝統的に20歳前後の若者を中盤の要に据えることなどありませんでしたし、実際バラック選手がFAカップで怪我さえ負わなければ、今回ドイツの中核としてこれ程活躍することはなかったかも知れないのです。また、私も現地で観戦しましたが、去年の2月にデュッセルドルフで行われたドイツ対ノルウェーの親善試合では、後半途中から交代出場を果たしたものの殆ど目立った活躍はしておらず、それから僅か1年半後のW杯であのような勇姿を見ることなど想像すら出来ませんでした。

そういった意味では強運の持ち主であることは間違いなく、そのノルウェー戦に出場した約3ヵ月後のドイツカップ決勝戦では唯一の決勝ゴールを挙げてMVPに。そしてその直後に開催された欧州U-21選手権ではドイツ代表の中盤の要として優勝に貢献と、立て続けに大きなタイトルを獲得します。また、明けて始まった昨シーズンからは、絶対的エースとして君臨したジエゴ選手がユベントスに移籍したため、中盤の要として活躍するようになり、ブレーメンの3位躍進に貢献しました。

そして何よりもレーブ監督と彼を支えるドイツ協会が、若手育成強化プロジェクトで育ってきた彼ら若者を積極的に起用すると言う明確な意図があったことも、彼にとっては幸運でした。具体的には、よりスピーディーに試合を展開する為に選手1人当たりの1回のボールキープ時間をこれまでの3秒から、その半分近くに短縮するという目標を監督が掲げていましたが、エジル選手が難なくそのコンセプトを理解し、適応出来たことも更なる追い風となります。

このように幾つかの伏線が敷かれていた上で今回のW杯での活躍があったわけですが、幸いにも友人であるブレーメンのシャーフ監督との縁で、ここ2年間にわたってエジル選手のプレーを具に見る機会を得たり、実際に会話をしたりする機会があったので、本日はこの未完の大器について私の知り得る範囲で紹介させて頂くことに致しましょう。
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登録日:2010年 07月 20日 02:30:09

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プロフィール
小谷泰介
1955年、タイ王国バンコク市生まれのフットボールジャーナリスト。

四半世紀に及ぶ取材経験を生かしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説は、ラジオやテレビで人気を博した。
また、本場欧州にプロクラブの監督や選手の友人が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に「拝啓 川淵三郎殿」(モダン出版)や「Jリーグ入門」[講談社)などがある。
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