W杯ドイツ大会の報告会に思う

 11月9日付けの日刊スポーツに、「JFAハウスにて日本協会技術委員会によるW杯ドイツ大会の報告会が行われ、日本代表不振の原因がコンディショニングの失敗などにあると報告された。」との書き出しで、前技術委員長の田嶋専務理事らが日本代表の戦いぶりを解説した様子が記事となっていました。

 まずは、その大筋を本文から引用させていただきたいと思います。

 
 『前技術委員長の田嶋幸三専務理事らが、日本代表の戦いぶりを解説。1次リーグ敗退に終わった原因の1つとして「ピークが大会直前のドイツ戦にきてしまった」と説明した。さらに高さに対する弱さ、球際の弱さ、決定力のなさなどが次々と挙げられた。W杯の全試合を分析したDVD「JFAテクニカルレポート」が発売されるタイミングに合わせての大会4ヵ月後の報告会は、世界との差をあらためて知る場になった。日本協会の目標は「15年に世界のトップ10入り」だが田嶋専務理事もFIFAランク46位を「妥当な数字」と話したように、世界への道はまだまだ険しそうだ。』

 ざっと以上なのですが、私はこの記事を読んであきれ果ててしまいました。日本人の欠点である「木を見て森を見ぬ」傾向が、報告内容に色濃く反映されているうえに、今日日小学生でもわかる日本人フットボール選手の傾向性や欠点を今更ながらに並べ立てて1次リーグ敗退の原因にしているからです。まるで他人事のような姿勢も気になります。

 そもそも、ピークが大会前にきてしまったというのは、戦争に例えると予行演習をやりすぎて、本番では疲労から士気が低下して負けてしまったと言っているようなもので、そんなミス自体が4年間もの準備期間が与えられているのにあって良いはずがありません。また、本当に問題なのはピークが大会前にきてしまったことではなく、そんなお粗末なコンディショニング管理をしたのは誰なのか、或いは誰の責任かということです。

 現場の責任で言えば、コンディショニングのイロハのイもわからなかったジーコ監督であり、フィジカルコーチも何のためにいたのかと指摘されても仕方ないでしょう。

 さらには、当たり前のことですが、最終的には誰がそんなお粗末な監督を選んだのかということです。或いはそんな監督を選んでしまうシステムを問題にするべきであって、それが木ではなく森を見る作業であると私は確信いたします。

 まあ、ざっと報告会の内容を知る限りでは、残念ながら現在の協会には敗戦の分析能力が著しく欠如していると指摘せざるを得ず、この事実をマスコミ以下誰も指摘しないことも問題だと思います。何故ならば、正しい敗戦の分析ができないということは、同じ過ちを繰り返すからです。

 そもそも協会の強化なるものは、次のような手順を踏んで行われるべきであると私は考えます。「まず、日本のフットボールのあるべき姿を示し、ワールドカップに向けて明確な目標を設定する。次にその目標を達成するために最良の監督を選ぶ努力をし、選んだからにはその監督を最大限サポートする。そして、残念ながらその目標が達成できなかった場合には、その分析をあらゆる角度から厳しく行い、反省点と責任の所在も明確にする。さらにその分析や反省を今後の活動に最大限反映させる努力をする。また、よしんば目標が達成出来たとしても、分析と反省は怠らず、追撃の一手とも言うべき向こう4年間の明確なる強化プランを打ち出す。」

 以上ですが、これらの手順に照らし合わせると、協会の強化のあり方がいかにでたらめであるかが、よくお解かりいただけるかと存じます。もっとも、解っていても組織に歪みあると実行できないケースがあります。むしろ今の協会の体質を考慮すると、そちらの可能性の方が高いのかも知れません。

 例えば、今回のワールドカップの日本代表の戦いぶりについて、現場では正しい分析が出来てもそれを公表すると首が飛んでしまうのではないかといった雰囲気がある場合です。

 ワンマン体制の下では仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、サラリーマン根性や役人根性の蔓延る組織は極めて危うく、フットボールという崇高かつ偉大な文化の発展を阻害してしまいます。

 少なくとも私自身はそんな日本のフットボール界の現状を憂いている者として、指摘をさせていただきました。さらに「もしも私が今の専務理事の立場であったなら」という想定のもと、仮想の報告会を次回のブログにて展開致したいと存じます。

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登録日:2006年 11月 17日 17:34:11

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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