‘06年日本フットボール界の七不思議②

 今年の日本のフットボール界を振り返って、私が独断でこれはおかしいぞ、不思議だと思える出来事に順位を付けて検証する企画ですが、いよいよベスト3の発表です。

 第3位は、「川崎フロンターレ2位躍進の不思議!?」でございます。

 こんなタイトルを付けるとフロンターレのサポーターに怒られてしまいそうですが、不思議イコ-ルダメということではないのでご容赦いただきたいと存じます。いや、むしろフロンターレを褒め称える話なので安心して下さい。

 では何故フロンターレの2位躍進が不思議かと申しますと、コストパフォーマンスの高さが半端ではないからです。同クラブの2005年度収支は19億1300万円で何とJ118チーム中16位という低さで、断トツトップの浦和レッズの3分の1弱であります。

 
 そのフロンターレが並居る強豪を向こうに回して準優勝を勝ち得たのはりっぱの一言!しかも85という総得点はぶっちぎりの記録で、このチームがシーズンを通じていかに攻撃的なスタイルを貫いたかの証であります。また、我那覇、中村憲悟の2人が代表で活躍するなど、日本のフットボール界への貢献も大でした。

 フロンターレの好成績自体は関塚監督の采配によるところ大だと思いますが、クラブ全スタッフの努力、そしてサポーターの大きな支えがあったことは言うまでもありません。私は今年の年間最優秀クラブは川崎フロンターレに与えられるべきだと強く主張致します。

 一方でJリーグは本場のプロリーグと比較してまだ歴史が浅いせいなのか、資金が潤沢なクラブが必ずしも上位に食い込むとは限りません。例えばかねてから潤沢な資金を使っていた浦和レッズなどは、とっくのとうにリーグチャンピオンになっていなければならないクラブですし、柏レイソルやヴェルディ東京は昨年度の収入が30億円を越えていますからJ2に降格してはいけないクラブでした。

 フットボールクラブの運営は公共性の高い職種といえるだけにお金と時間の無駄使いの無きよう、収入が16番目のクラブがリーグで2位になるという不思議な現象が起きぬよう、多くのクラブは心していただきたいと存じます。

 さて、第2位でございますが、「首を切った監督にJ2に落とされる不思議!?」を取り上げたいと思います。

 言うまでもなく、シーズン序盤で首を切った松田監督率いる神戸に入れ替え戦で破れ、J2降格が決まった福岡のことですが、不思議というか皮肉というか世界のフットボール史でも前例のない珍事ではないでしょうか。

 福岡と神戸の入れ替え戦を観戦していて、この2試合に限っては福岡の選手に責任はないと思いました。なぜならば2試合を通して明らかに福岡の選手の方が優勢に試合を運んでいたからです。ただ、恐らくは松田采配の賜物なのでしょうが、神戸は福岡の良さを消す戦いが出来ていました。

 降格したアビスパ福岡はもちろんですが、他の多くのクラブがこの教訓から学ばなければならないのは、クラブの成績不振の責任は監督のせいだけではないということなのだと思います。

 クラブの運営は、まずクラブのルーツや存在意義を確認することに始まり、どのようなクラブを目指すのかを明確にするために青写真を描きます。その青写真を元に限られた予算を如何に有効に使うのか。そのためには良い指導者と良い選手に関する情報を得なければなりません。そして監督、選手、スタッフが揃ったら、それぞれの責任の所在を明確にしてそれぞれが全身全霊を傾けて職務を全うすれば、自ずと結果は付いてくることをJリーグクラブの関係者は肝に銘じていただきたいものです。

 さあ、いよいよ第1位でございますが、「優勝争いをしたシーズンの翌年にJ2に降格してしまうセレッソ大阪の不思議」を取り上げさせていただくことに致しました。

 ご存知のようにセレッソ大阪は昨季、最終節のタイムアップ寸前まで優勝する可能性を残していたチームです。すんでの所で同じ大阪を本拠地とするガンバ大阪に優勝をさらわれてしまいましたが、堅固な守備と効率の良い攻撃で最後の最後まで優勝争いをしたセレッソ大阪のパフォーマンスは賞賛に値するものでした。

 ところが今季は自慢の守備陣が崩壊し、もともと分厚くなかった攻撃も機能しないという悪循環に陥り、最終的に17位となり自動降格が決定してしまったのです。

 私は、40年近く世界のフットボールを観戦してまいりましたが、前年の最終節の最後の最後まで優勝争いをしていたトップリーグのクラブが翌年、下部リーグに降格した例を他に知りません。(もし、ご存知の方がいたら是非教えてください。)

 そう、普通ではありえないことが、Jリーグで起こってしまったのです。しかもセレッソ大阪は2000年のシーズンでもファーストステージで最後の最後まで優勝争いを繰り広げ、何と翌年にJ2に降格しているのです! これはもう不思議以外の何ものでもありません。

 とはいえ私もジャーナリストの端くれですから、ここは冷静に分析を試みることに致しましょう。まず、ひとつにはJリーグに確固たる強化の手法を持っているクラブが存在しないからこそ起こってしまうのだということが挙げられます。例えば、プレミアではここ13年間、トップ5の中には常にマンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナルが顔を出しています。しかし、Jリーグではまだそのようなクラブは存在しません。歴史が浅いということが最大の要因だとは思いますが、まだ確固たる伝統が築かれていないのです。だから、ちょっとしたことで急にチームが強くなったり、弱くなったりするのです。

 次にセレッソ大阪の顔としてJリーグ草創期からチームを引っ張ってきた森島、西澤両選手の運命的なものが作用していると私は考える次第です。ご両人には大変失礼な話なのですが、スポーツ界の歴史を紐解けば実力があっても万年2位ばかりの選手とか、決勝までは何回か進出するのだけれどもいつも準優勝で終わってしまう監督とかが存在するのは事実でございます。

 しかし、それにしてもこのセレッソ大阪のケースは本当に珍しいものであることは間違いなく、文句なしで今年の不思議大賞に選出させていただきました。

 以上が今年の日本フットボール界の不思議ベスト7でございますが、いかがでしたでしょうか。まだまだ変なことや不思議なことは沢山あるかとは思いますが、皆様からのエントリーをお待ち申し上げます。

 ところで、ワールドカップ直前からスタートしましたこのブログも、いよいよ今年はこれで最後でございます。今年は、中田英寿、中村俊輔、稲本、小野、高原、三都主、宮本、川口といった優秀な選手が全盛期を迎えた年に開かれたワールドカップで1勝も出来ずに惨敗を喫するという悲しい出来事がありました。私はこの失敗を二度と繰り返すことのない体制を築けぬまま年を越している日本フットボール界を憂いていますが、このブログでは真実を追究し、発信する姿勢を変えることなく続けていく覚悟です。

 来年が皆様と日本、世界のフットボール界にとって良き年となりますように、心よりお祈り申し上げます。

コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2006年 12月 29日 12:30:06

コメント

日本サッカーを取り巻く事柄には不思議なことばかりですが、最大の不思議はワールドカップ(過去三大会)の日本の試合(三流カードなのにプラチナペーパー)の日本ゴール裏にはなぜかいつも同じグループが入場している事です。とくに2002年の日本開催分のチケットは公平平等の抽選と当時のJAWOCのお偉方はおっしゃっていたと思いますが?

東プリ @ 2007年 01月 05日 20:39:33

東プリさん
世界のフットボール史を紐解けば、クラブレベルでも熱狂的サポーターとクラブ幹部の癒着が問題となった過去がありますが、フットボール界の不正や疑惑をきっちりと調査、判定する公的機関が日本に存在しない(機能しない)のが最大の問題だと思います。

小谷泰介 @ 2007年 01月 09日 10:16:29

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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