鳴かなくなった鶯

<06サッカーW杯>ボールを競るL・ゴンザレスとシムコビアク - ドイツ

【ハノーバー/ドイツ 20日 AFP】06サッカーW杯・グループリーグA・第3戦、コスタリカvsポーランド。試合はポーランドが2-1で勝利を収め、通算成績を1勝2敗としてグループリーグAを3位で終えた。写真はボールを競るコスタリカのレオナルド・ゴンサレス(Leonardo Gonzalez、右)とポーランドのミロスラフ・シムコビアク(Miroslaw Szymkowiak、左)。(c)AFP/ODD ANDERSEN

AFPBB News


 シーズンオフ恒例の移籍に関するニュースがスポーツ新聞紙面を賑わせていますが、突き抜けたような明るい話題が殆んど無いのはどうしたことでしょうか。

 まず、日本人選手に関してはジェフとオシム・ジャパンの顔ともいえる阿部選手の浦和レッズへの移籍がついに決定しました。しかし、本来なら今日本で最もホットな選手の移籍話ですから、「阿部、年俸○○!!目指せ6冠!」といった勇ましいタイトルが紙面を飾っても良いはずです。6冠というのは国内で5冠(リーグ、天皇杯、ナビスコ杯、ゼロックス杯)、代表チームで1冠(アジアカップ)の意味ですが、そういった前向きな記事ではなく、所属チームとの確執や揉め事ばかりが目に付く内容になってしまっています。

 
 Jリーグの移籍については、選手の年俸がプロ野球と比較して著しく低かったり、契約更改時期と天皇杯開催時期が重なったりしてしまうため、今ひとつ盛り上がらないのも分からなくはないですが、根本的にはクラブの強化方針が明確でないことにあると私は考えます。

 Jリーグの草創期はどのクラブも手探り状態でしたが、混沌とした中にバブル景気が訪れたため、海外からビッグネームが次々と来日しました。しかし、確たる強化方針がありませんから悪徳エージェントの餌食となったり、それらの選手への大盤振る舞いをしたりで各クラブは軒並み赤字経営に陥ってしまいます。実際に横浜フリューゲルスなどは解散の憂き目に会ってしまったのはよく知られたところです。

 そしてその後に訪れたのは、よく言えば健全経営、悪く言えば赤字を出さないための消極的経営の時代ですが、私はこの現状を鳴かなくなった鶯状態と呼んでいます。鶯の鳴き声が人々の心を和ませ、昔は籠に入れてその声を聞くことを娯楽としていたことと、大物外国籍選手が格の違うパフォーマンスをすることをだぶらせた次第です。かつてJリーグが立ち上って暫くは鶯の鳴き声がそこかしこでしたものですが、いまはさっぱり聞かれなくなりました。鶯が鳴かなくなってしまったのです。

 そう、かつてはジーコ、レオナルド、ジョルジーニョ、ドゥンガ、サンパイオ、リトバルスキー、ストイコビッチ、スキラッチ、ラウドルップ、エムボマといったワールドカップで活躍したビッグネームが綺羅星の如くピッチを彩り(中にはベベト、イルハンのように名ばかりの選手もいましたが)、鶯の谷渡りのようにその音色を響き渡らせていたのに、ぱったりと聞かれなくなってしまったのです。彼等ビッグネームをJバブルの産物と片付けるのは簡単ですが、エンターテインメント性がプロリーグの大きな醍醐味である以上、各Jクラブはその効用を追及してもらいたいものです。その点においては、カタール・リーグに大きく遅れを取っていると言わざるを得ません。

 その原因は、強化と収支、そしてエンターテインメント性を同時に追求出来るGM(ジェネラル・マネージャー)が日本には存在しないことに起因しますが、強化面だけを見ても5年と黄金時代を続けられるクラブが存在しないのですから、高が知れているというものです。また、GMが誰も私は3年以内にタイトルを取りますとか、今年は優勝しますと宣言しないのもおかしな話です。

 現実問題として、クラブに不信感を抱いている選手は多く、今季だけでもマリノスから横浜FCへ移籍した奥と久保、ジェフからレッズに移籍した阿部といった大物選手はその代表格と言って良いのではないのでしょうか。

 幸い、FC東京がワンチョペを獲得したのでJリーグにも先のワールドカップで活躍した選手が一人いるリーグとなりましたが、果たして鶯の鳴き声がJに戻ってくるのでしょうか。でも、たったの一人というのはあまりに寂し過ぎます。

 今年の夏までに、浦和レッズあたりがアッというような大物選手を獲得してくれることを祈るばかりです。勿論、しっかりとした強化ビジョンと収支のバランスを考えた上での話ですが・・・。

コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 01月 24日 18:54:38

コメント

いつも明快かつ鋭いブログ楽しく読ませていただきます。
本文とは関係ないのですが、ブログが無くなると知人に聞いたのですが、本当ですか?
どこかのサイトで小谷さんのブログは読めるのでしょうか?

権太郎 @ 2007年 01月 26日 01:01:38

権太郎さん

はじめまして!いつも当ブログをお読みいただいているようでありがとうございます。
このAFP BB NEWSの私のブログは無くなる予定はございませんので、今まで通りアクセスしてご愛読いただければ、幸いに存じます。

小谷泰介 @ 2007年 01月 26日 18:28:48

コメントを追加

Trackback

この記事に対するトラックバックURL:

カレンダー
< 2007年 01月 >

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31


プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
最近のトラックバック
[12/05] スッキリ♪
カテゴリー
お気に入りリンク
検索