シチリア・ダービーの惨劇に想う
<サッカー セリエA>シチリア・ダービーで大暴動で警官1人が死亡、週末の全試合が中止に - イタリア
【ローマ/イタリア 2日 AFP】サッカー、イタリア・セリエA・第22節、カターニア(Catania)とパレルモ(US Citta di Palermo)の試合で暴動が起こり警官1人が死亡したと、ANSA通信が伝えた。
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またしても、フットボールの本場イタリアで惨劇が起こってしまいました。
皆様ご存知のように、シチリア・ダービーのカターニャ対パレルモ戦の試合後に暴動の沈静化に当たっていた警察官がフーリガンに襲われ、死亡してしまったのです。
死因は暴徒の投げつけた爆竹が眼前で爆発したことによるものであるとか、肝臓の破裂によるものであるなど情報が錯綜気味ですが、いずれにしましても決して起こしてはならない事件でした。
ただ、今回の事件が単純にサポーターの暴挙によるものと捉えるのは早計で、実際に先頭に立って暴動を扇動したり、警官めがけて物を投げつけたりする連中は、サポーターではありません。
彼等は日本の社会に置き換えると暴走族のような存在で、自分達が社会から爪弾きにされているという被害者意識を深層に抱き、その鬱憤を反社会的行為で晴らそうとする哀れな輩達なのです。
彼らの本当の目的は、フットボールを楽しむことでも贔屓のクラブを応援することでもなく、スタジアム内、或いはその周辺で騒ぎを起こして暴力的行為を繰り広げ、鬱憤を晴らすことにあります。
例えば彼らはカターニャのサポーターに成りすますことで、パレルモのサポーターという暴力を行使する格好の対象が得られますから、スタジアムに足を運びます。そして彼らにとってクラブのレプリカやマフラーは格好の隠れ蓑に過ぎません。実に姑息かつ利己的な卑怯者達であり、ましてやその愚かな行為によって傷害や殺人まで犯してしまうのですから、許しがたい存在と言えるでしょう。
また、問題なのはそのような行為が頻繁に繰り返されているにも関わらず、有効な手立てを打たないクラブ、リーグ、警察当局、そして行政の姿勢です。催涙弾や爆竹等はボディーチェックで持込みを阻止できるでしょうし、監視カメラ設置などの策を講じることで未然に防げることは少なくないはずです。
イングランドがヘイゼルの悲劇やヒルズボロ事件を契機に、スタジアムの環境整備を徹底的に改善していったのに対して、イタリアは‘90年のワールドカップ開催という絶好の機会があったにも拘らず、明らかに手抜きをしてきました。
もっともイングランドと違ってイタリアの施設はクラブの所有物ではなく、市や地方自治体の持ち物である場合が殆どで、責任の所在が曖昧と申しましょうか、責任逃れの出来る環境が足を引っ張ったことは間違いありません。
まあ、遅ればせながら政府や協会も重い腰を上げて懸命に対策を練り始めましたが、既にイングランドやドイツのチャンピオンズリーグ出場常連クラブを中心に欧州のスタジアム環境は劇的に改善されつつあるだけに、カルチョの国イタリアも世界チャンピオンの名に恥じぬよう一刻も早く着手すべきでしょう。
しかし、スタジアムの改善や監視の強化は、あくまで事故を未然に防ぐための補助的要因にしかなりえず、本当に解決せねばならないことはフーリガンを生み出してしまう土壌の改善です。これこそは人間社会の闇の部分にメスを入れねばならず、フットボール界だけで解決できる問題ではありません。政府、連盟、協会、クラブ、サポーターが一致団結して取り組むべき大きな課題であります。
口で言うのは簡単ですし、一筋縄では行かないことも明白です。しかし、フットボールという崇高な文化の破壊行為に対しては、当該者が智慧と勇気を出し合い、毅然とした態度で臨む以外に方法が無いこともまた事実です。
幸いJリーグには、今回のような事件を起こしたセリエの病巣とも呼ぶべき存在のフーリガンは根本的にいません。これは世界に誇るべきことであり、老若男女が安心してスタジアムに足を運べるJリーグの伝統を守らなければならないと強く思います。
12年前にカズこと三浦和良選手が、ジェノアのチームメイトを率いて横浜スタジアムで凱旋興業をした時のことです。ジェノアの選手達が満員の観客席をピッチから見上げ、珍しい生き物に遭遇した時のように眼を輝かせながら、笑顔で交わしていた言葉を忘れることが出来ません。
「おい、見ろよ!こんなに若い女の子がいるよ。」「ああ、子供も多いな。」「半分は女子供達だぜ!」云々と・・・。
また、Jリーグ開幕時の盛り上がりを取材に来たBBCのTVディレクターが、日本平のゴール裏で大きな旗を振り、力の限り応援するサポーター達を指差しながらカメラマンに叫んだ言葉も忘れることができません。
「おい、こいつらイケテルぜ!! このカット、押さえておこう!」と。
このように日本のサポーターのあるがままの振る舞い、出で立ちは本場のフットボール・ピープルの心をも動かす素晴らしい何かがあるのです。
日本のサポーターが、今回の警官殺害騒動に苦悩し、翻弄されるカルチョの国に対してエールを送る意味でも、来るべき新シーズンの会場をいつものように老若男女で埋め尽くしていただきたいと熱望致します。
また、ベルルスコーニがその傘下にあるテレビ局の取材スタッフを日本に派遣し、「美しい国!?の平和なサポーター」とでも題した番組を制作してくださることを合わせて熱望致します。勿論、ヤラセは無しで!
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登録日:2007年 02月 07日 20:41:48
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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