フットボール宣言!!(前編)
私が常々理不尽だと思っていることの一つに「サッカー」という呼称が挙げられます。なぜ「フットボール」と呼ばないのか歯がゆくて仕方ありません。
いまさら私が言うまでもなく、フットボールをサッカーなどと呼んでいる国は日本とアメリカ合衆国くらいのもので、かつてはその仲間であったオーストラリアでさえ、最近は“FOOTBALL”と呼ぶ運動が展開されています。
オーストラリア代表の愛称が“SOCCEROO(サッカールー)”でなくなる日もそう遠くはないはずです。
では、日本に於いて一体誰が、或いはどの機関が「フットボール」ではなく「サッカー」などと呼び始め、広めていったのでしょうか。
歴史を紐解いてみると、日本に初めてフットボールが伝播されたのは1873年のことで、英国海軍のダグラス少佐が東京の築地にあった海軍学校に持ち込んだのが最初と言われています。そして、その頃は間違いなく「フットボール」とか「フートボール」と呼ばれていたに違いありません。なぜならば英国人のダグラス少佐が“SOCCER”と呼ぶはずがないからです。
実際、1896年に東京高等師範学校が課外活動の走りとも言うべき運動組織を立ち上げた時に、柔道部や弓技部等とともにフットボール部が設立されたとの記述が残っています。
なお、現在の全国高校サッカー選手権大会の第1回大会は1918年に「第1回日本フートボール大会」という名称で開催されています。
一方、明治時代に出版された関連書の表現方法も、「フートボール」「フットボール」「アッソシエーションフットボール」のいずれかであり、大正時代、そして昭和に入ってもその傾向は変わっていません(漢字による日本語表記では蹴鞠、蹴鞠ノ一種、蹴球、ア式蹴球等となっている)。
以上のことから、少なくとも明治、大正時代の日本に於いては「サッカー」ではなく「フットボール」、或いは「フートボール」と呼ばれていた可能性が極めて強いことがわかります。
因みに「サッカー」という言葉が日本で始めて使われたのは1918年と言われており、元関西協会副会長の神田清雄氏が明星OBチームを「大阪サッカー倶楽部」と命名したのが最初だそうです。
また、出版物における表記は大正11年に発刊された佐々木等著の「サッカー」という指導書のタイトルに登場したのが最初のようで、さらに昭和9年(1934年)には浜松一中蹴球団の市川忠平なる人物が同じく「サッカー」というタイトルで会報誌に近い出版物を創刊させています。しかし、前述のように大正、昭和の初期に於いてはまだまだ「サッカー」という表記は少数派でした。
ところが、昭和も戦後になりますと、出版物の表記が「フットボール」から「サッカー」へと顕著に変化していきます。
昭和23年(1948年)には日本協会発行の機関紙のタイトルが[蹴球]から「SOCCER」となり、昭和41年(1966年)に発刊された日本発初の専門誌も「サッカーマガジン」というタイトルでした。その創刊されたもう一つの専門誌も「サッカーダイジェスト」ですし、伝説のTV番組のタイトルも「ダイヤモンドサッカー」でした。
1921年に始まった全国選手権大会(ア式蹴球全国優勝競技会)も1951年(昭和36年)には「天皇杯全日本サッカー選手権大会」へと名称変更され、私の記憶でも昭和30年代の中頃には「サッカー」という呼称が一般に定着していたように思います。
しかし、冷静に考えれば、戦後数年の間は日本が連合国軍の占領下にあったわけですから、「サッカー」という呼び方が急速に普及浸透していったのも頷けます。なにしろ連合国軍といってもその殆どがアメリカの軍人と民間人で構成されており、アメリカ人にとって“FOOTBALL”は、我々が言うところのアメリカンフットボールでしかありえず、世界中でフットボールと呼ばれているスポーツはあくまでも“SOCCER”でしかないのですから。
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)のお達しで、日本のメデイアや公官庁が「フットボール」と呼んでいた球技を号令一下「サッカー」に変えたというのは大袈裟にしても、GHQ占領下の影響が少なからずあったことは間違いありません。
いずれにしましても、戦後急速に「サッカー」という呼び方が日本に広がり、国民の間にしっかりと定着してしまったことは否定のしようがない事実であります。 (つづく)
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登録日:2007年 02月 10日 18:32:21
コメント
ためになるな~
なるほど、そうだったのですね。
ところで、サッカーとはどういう意味なのでしょうか?
つんちゃん @ 2007年 02月 14日 17:36:15
ためになるな~
なるほど、そうだったのですね。
ところで、サッカーとはどういう意味なのでしょうか?
つんちゃん @ 2007年 02月 14日 17:37:19
つんちゃん様
19世紀後半にボールを蹴る、投げるなど何でもありのフットボールという競技が、RUGBY FOOTBALL(現在のラグビー)とASSOCIATION FOOTBALL(いわゆるフットボール、またはサッカー)に分派して行く歴史があるのですが、後者の略称がSOCCERであると言われています。
でも、本場英国ではSOCCERは定着せず、FOOTBALLという呼称が広まったと言うわけです。確かに、手は使わずに、足でボールを扱うのですから、自然な成り行きですよね。その点、AMERICAN FOOTBALLなどは、殆どの選手がキックなどしないのですから、どこがFOOTBALLかと言いたくなってしまいます。
でも、フットボール(サッカー)も、ラグビーも、アメリカンフットボールも、オジーボールも、ゲーリックフットボールも、ルーツを辿れば、全て中世の時代から英国の農民の間で盛んだったフットボールというかなり野蛮な競技(と言うよりは日本の喧嘩祭りに近い祝い事のようなもの)に行く着くのです。
小谷泰介 @ 2007年 02月 15日 11:50:18
つんちゃん様
19世紀後半にボールを蹴る、投げるなど何でもありのフットボールという競技が、RUGBY FOOTBALL(現在のラグビー)とASSOCIATION FOOTBALL(いわゆるフットボール、またはサッカー)に分派して行く歴史があるのですが、後者の略称がSOCCERであると言われています。
でも、本場英国ではSOCCERは定着せず、FOOTBALLという呼称が広まったと言うわけです。確かに、手は使わずに、足でボールを扱うのですから、自然な成り行きですよね。その点、AMERICAN FOOTBALLなどは、殆どの選手がキックなどしないのですから、どこがFOOTBALLかと言いたくなってしまいます。
でも、フットボール(サッカー)も、ラグビーも、アメリカンフットボールも、オジーボールも、ゲーリックフットボールも、ルーツを辿れば、全て中世の時代から英国の農民の間で盛んだったフットボールというかなり野蛮な競技(と言うよりは日本の喧嘩祭りに近い祝い事のようなもの)に行く着くのです。
小谷泰介 @ 2007年 02月 15日 11:51:20
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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