どうにも気に入らないJリーグ中継

 いよいよJリーグが開幕し、全国各地で熱戦の火蓋が切って落とされました。

 非常に嬉しかったのは埼玉スタジアムの57、188人を皮切りに、多くのサポーターが各会場に足を運んだことです。

 等々力(20、295人)、日本平(18、333人)、そして万博(18、355人)では、ほぼ満員の観客がスタンドを埋め尽くしていましたし、J2でも鳥栖スタジアムの14、124人を筆頭に国立競技場の10、275人と、各会場で平均を大きく上回る観客が詰め掛けました。

 待ちに待った開幕戦だから当然と言ってしまえばそれまでですが、2010年には年間1100万人の観客動員を目指すという目標を掲げたJリーグにとっては幸先の良いスタートとなったのではないでしょうか。

 試合内容に関しては悲喜こもごも。ジュビロ磐田やFC東京が大敗を喫したのは想定外でしたが、ホームゲームで勝ちを収めたチームが多かったのは良い傾向だと思います。

 しかし、一方で納得出来ないと申しましょうか、どうにも気に入らないことが多かったのもまた事実であります。

 その筆頭はマスコミの報道です。特にテレビ中継!

 
 NHKの地上波で生中継された浦和レッズ対横浜FC戦を録画で見ましたが、カメラワークのまずさは相変わらずですし、実況アナウンサーの進行も耳を覆いたくなるばかりです。日本のフットボール中継はどうして正当な実況が出来ないのでしょう!?彼らのやっていることは90分間を通して延々解説を行っているだけです。

 つまり、実況担当のアナウンサーは解説者に「○○さん今のプレーは・・・」とか「どうなのでしょう、この場合は・・・」といった具合に意見を求めるばかりで、試合の流れや展開を捉えていません。実況や解説者も含めてボールの動きとコメントが連動していないのです。ボールの動きを殆ど追っていないといっても良いかもしれません。

 この悪弊は、我が国で長い歴史を誇るプロ野球中継の影響によることは間違いなく、ボールが全く動かない時間(out of play)が多い野球実況中継の手法を、フットボールに持ち込んでしまっているのです。

 ご存知の方も多いと思いますが、本場欧州や南米の実況中継は基本的にコメンテーターと呼ばれる実況アナウンサーが1人で喋ります。解説者がいる場合でも口を挟むのはout of play のときに限られていて、実に小気味良い中継を茶の間に届けてくれるのです。

 何故ならば本場のコメンテーターは個々の選手に関する情報は勿論、チームの歴史、戦術に対する造詣が深く、ボールの動きを追いかけながらタイミング良く自分自身で解説を加えるからです。そしてシュートシーンやゴールシーンといった重要なポイントで選手出身のコメンテーター(解説者)に同調の意見や、より詳しい解説を求めるのです。

 残念ながら我が国の地上波では本場のような中継を行っている局は存在せず、従って前述のような実況をするアナウンサーもおりません。日本では主に衛星放送で活躍なさっている倉敷さんが最も理想に近い中継を行っていると私は考えますが、フジテレビの青島さんやニッポン放送(ラジオ局ではありますが)の煙山さんも、その気になれば本場のような実況が出来る実力を兼ね備えていらっしゃると思います。

 旧態然とした日本のフットボール中継の要因は各局のスポーツデスクにあるのでしょうが、私が拙著「拝啓川淵三郎殿」でこの点を指摘させていただいた6年以上も前から、状況が全くと言って良いほど変わっていないことが一番の問題であると考えます。

 いずれにしましても、NHKのJリーグ中継は期待感溢れる開幕戦の熱気に水を差したとしか思えず、局の一刻も早い対応を求める次第です。国民から受信料を徴収している以上、質の高い実況中継を遂行することは義務であるはずです。

コメント[5], トラックバック[0]
登録日:2007年 03月 05日 19:28:28

コメント

まったくそのとおりだ!特に民放の実況アナウンサーはひどい。悲しくなります。日本人であることが恥ずかしくなります。そんな時私は音声を消して観ることもあります。

浦和ファンA @ 2007年 03月 06日 11:25:06

浦和ファンAさん

ご賛同のコメントありがとうございます。

恐らくNHKや民放各局は、自分達が恥ずかしい中継をしているという自覚がないのでしょうから、視聴者やサポーターが結束して投書や抗議電話運動を展開してみるのも良いかもしれませんね。

小谷泰介 @ 2007年 03月 06日 17:14:55

本当にそうですね!
Jリーグの走りの頃に
『ゴーーーーーーーーーーール!!』
が流行ってましたが、本場の実況のモノマネはそこで終わっちゃってるのでしょうね

>この悪弊は、我が国で長い歴史を誇るプロ野球中継の影響によることは間違いなく、

なるほどすごくナットクしました。

ちなみに某局が『絶対に負けられない戦いが・・・』
と言っていた頃のW杯最終予選の時は地上波が某局の独占のような状態になっており、その時の実況・解説コンビが堪えられなかったもので、音を消した事もあったのですが、音が無いとやっぱり寂しいものでしたので、よっぽど局に抗議しようかと思っていました。
今後集団抗議の機会があれば是非参加させてください!!

クライフターン @ 2007年 03月 07日 12:26:44

そうですね。日本人は野球中継の慣例がフットボール中継にも伝染してるせいか、
アナウンサーが必要以上に解説者の意見を求めることが多いですね。

きっとこれは日本人の意識の中に「餅は餅屋」という固定観念も手伝っているように思えます。つまりアナウンサーはアナウンサー。「プレイに対して必要以上にあまり深く口出しするな」みたいな慣習が視聴者の意識化に存在しているのかもしれません。つまり、「著名な元選手で無ければプレイを語るべからず」みたいな偏見が存在している証のように思えます。プロ野球界ではまず元有名選手でなければ12球団の監督になれませんから、大半の日本人にこの類の偏見があるのは間違いなさそうです。

ちなみに06年オーストラリアの地上波放送局SBSで日本・クロアチア戦のコメンテーターをしていたのはSky sportsでおなじみのMartin Tylerでした。馴染みの低いであろうと思われる日本人の名前をほぼ完璧な発音で間違えることなく喋る彼に驚きました。

地上波放送局のアナウンサーは、フットボールという一競技だけに限らず、ニュースやその他の分野でもある程度できる能力を求められているような気がするので、こと専門性だけの能力が劣ってしまうのは仕方の無いことかもしれません。だからといってそれでいいとは全くもって思わないですけど。能力のあるアナウンサーがいるだけに残念ですね。

k @ 2007年 03月 23日 10:06:48

kさん

いつもシャープなコメントをお寄せいただきありがとうございます。 また、ひどい風邪にかかってしまい返答の遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。

全くもってあなたの仰るとおりで、確かな分析とご意見に感銘した次第です。

マーチン・タイラー氏の実況は本当に惚れ惚れするもので、英国内でも第一人者として長年活躍されていますね。

個人的には、ジミー・ローゼンタールも好きです。

小谷泰介 @ 2007年 03月 28日 17:47:33

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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