シドニーに舞い降りた赤い天使たち

<サッカー 第86回天皇杯>浦和レッドダイヤモンズ 2連覇で2冠に輝く - 東京

【東京 1日 AFP】サッカー第86回・天皇杯(The 86th Emperor's Cup)・決勝、浦和レッドダイヤモンズ(Urawa Red Diamonds)vsガンバ大阪(Gamba Osaka)。
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(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA

AFPBB News


 AFCチャンピオンズリーグ1次リーグの第2戦が行われ、川崎フロンターレがタイのバンコク・ユニバーシティーを相手にホームでまさかの引き分け。浦和レッズもシドニーFCの本拠地に乗り込んでの引き分けといまひとつ残念な結果でした。
しかし、試合結果以外のことでは大変に嬉しいニュースが海の向こうから届きました。

 そのニュースは、10時間のフライトをものともせずシドニーに乗り込んだ2000人の浦和レッズサポーターが、そのパフォーマンスと友好的態度で地元の人々に感動を与えたというものでした。(3月22日付けの「J’S GOAL」に詳しいレポートが掲載されています。)

 そもそもシドニーのサポーターは本場欧州、とりわけイングランドの影響を多分に受けた筋金入りの連中なのですが、そんな彼らにもレッズのサポーターは驚きを与えたようです。

 それもそのはず、何しろ2000人という数のサポーターが海を越えて押し掛けて来ること自体が大変なことであります。そしてその一団が90分間途切れることなく、声をひとつにして応援を繰り広げるのですから圧巻でありましょう。

 試合中には場内のオーロラビジョンにレッズサポーターの応援風景が何度も写し出されたといいますし、スタジアムとその周辺ではサポーター同士の記念撮影やユニフォームを交換する光景が見受けられたようです。そしてその振る舞いは「シドニーに舞い降りた赤い天使たち」と形容され、讃えられるべきだと思います。

 私はレッズサポーターの繰り広げる応援の素晴らしさを機会があるごとに訴えてきたつもりですが、いわば今回が彼らの海外デビューであったわけで、これからもレッズが海外で公式戦を戦う先々で今回のような美しい交流が繰り広げられることを祈らずにはいられません。

 余談にはなりますが、私が初めて本場欧州を訪れた1975年にベルギーの首都ブラッセルでチャンピオンズカップの準々決勝(アンデルレヒト対リーズ・ユナイテッド戦)を観戦した時のことです。
はるばるドーバー海峡を渡ってやってきたリーズ・ユナイテッドのサポーター数千人が地元アンデルレヒトのサポーターを圧倒する応援を繰り広げる光景にいたく感動したのですが、当時は極東のフットボール後進国日本からクラブレベルのサポーターが海外に出かけて行くことなど全く想像できませんでした。

 しかし30余年の歳月を経た今、地より沸き出でた幾多の菩薩の如く、赤い衣をまとった2000もの親善大使達が遥か遠いオーストラリアの大地に降り立ち、浦和レッズへの素晴らしい応援のみならず心温まる国際交流を繰り広げたのです。この厳然たる事実は、40年間日本のフットボールを見つめてきた私にとって、感動以外の何ものでもありません。

 ただ、いつまでも感動に浸っているとそれは感傷へと変貌しかねず、ジャーナリストとしては前述のように海外デビューを果たしたレッズのサポーターがその伝統の歴史を1ページ1ページと綴り行くことを願いつつ、僭越ながら下記のような提案を申し上げる次第です。

1.浦和レッズのサポーターは、フットボールという崇高かつ世界的な文化の発展に寄与するために、AFC等主催の国際公式戦(以下国際公式戦)に於いては浦和のみならず日本の国際親善大使との自覚を持って行動する。

2.浦和レッズのサポーターはフットボールを愛する者として、暴力と人種差別の撤廃を宣言し、その模範となる行動を取る。

3.浦和レッズのサポーターは、国際公式戦を最大限に尊重し、アウェーの地へ赴くための努力を惜しまない。

4.浦和レッズのサポーターは、国際公式戦に於いて国内公式戦と変わらぬ応援を繰り広げ、チームを鼓舞する。

5.浦和レッズのサポーターは、国際公式戦に於いて極力地元サポーターとの交流に勤め、ご当地の料理、文化、風習に触れ国際親善の輪を広げる。

6.浦和レッズのサポーターは、国内開催の国際公式戦に於いて来日するサポーターに対して試合前後にエールを送る等、最大限の敬意を払う。

 以上思いつくまま列挙させていただきましたが、当然のことながらこれらは浦和レッズのサポーターのみならず、Jクラブ全てのサポーターの皆様に対しての提案でもあります。

 また、いまさら私が仰々しく明文化するまでもなく、今回シドニーを訪れた浦和レッズのサポーターの皆様は、上記の提案に沿った振る舞いを自然にされていたことは百も承知の上でございます。それにレッズのサポーターのみならず、インドネシアを訪れた川崎フロンターレのサポーターや、過去には横浜Fマリノスやガンバ大阪のサポーターの皆様も規模の違いはあるにせよ同じような行動を取られていたのだと思います。

 しかし、本場欧州や南米の各地でサポーターによる暴力や人種差別が深刻な影を落としている現状を鑑みると、奇跡的にも(比較論ではありますが)老若男女が一同に介して安全かつ友好的な応援を繰り広げることの出来るJリーグのサポーターは、世界に先立ち率先して非暴力と人種差別の撤廃を訴え、世界のサポーターの模範となる使命があると思い敢えて書かせて頂きました。

 勿論、一日の長がある本場のサポーターから見習うべきことはまだまだ沢山あります。魂のこもった応援であのガットゥーゾを唸らせたセルティックのサポーターや、ビールとフットボールをこよなく愛し、アウェーゲームの醍醐味を知り尽くしているタータン・アーミー、声の大きさでは右に出る者のいないイングランドのサポーター、そして2002年に来日し多くの日本人に愛するチームを応援することの素晴らしさを教えてくれたアイルランドのサポーター等々、数え上げたら切りがありません。

 しかし、1998年のワールドカップ・デビューの舞台で、チームカラーである青色のゴミ袋を試合中は膨らませて風船がわりに使い、試合後にはゴミを入れて持ち帰った日本のサポーターもなかなかのものなのです。また、同年のワールドカップで次回共催国となる韓国代表の応援を買って出たというエピソードも大きな話題となりました。

 今回の浦和レッズサポーターの振る舞いはその流れを汲むものであり、今後全ての日本人サポーターが日本の良き伝統として築いて行かねばならない道、或いは使命なのだと考える次第です。

 繰り返しになりますが、今世界のフットボールシーンは暴力と人種差別という二つの障害に苦しんでいます。実際にスタジアムとその周辺で何人もの人が命を落とし、重症を追っているのです。(詳しくは同コラム2月7日掲載の「シチリアダービーの惨劇に想う」と、2月21日掲載の「あれにはオイラも驚いた」をお読みいただければ幸いです。)

 まとまりのない文章となってしまいましたが、今の気持ちを整理するなら次のようになるのかと存じます。

「今後、AFCチャンピオンズリーグやFIFAクラブワールドカップ、またワールドカップの予選や本大会に於いて日本人サポーターの情熱的、友好かつ平和的応援が世界中から称賛される時代の訪れんことを切に望みます。何故ならば日本のサポーターにはその資格と使命があるからです。」

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登録日:2007年 03月 23日 14:57:33

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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