人の振り見てわが身を直せ!プロ野球界の裏金問題に想う
日本の野球界全体に激震を与えている西武ライオンズの裏金事件ですが、昨日、同球団から金銭を受け取っていた清水勝仁選手(早大)の母校である専大北上高校の黒沢校長が、引責辞任されました。
「現在の指導部も部員も問題には全く関係なく、日常的にクラブ活動が出来ることを切望している。」とのコメントとともに、不祥事の責任を取られた格好ですが、ご本人が事実を把握されていなかっただけにさぞや無念であられることと推察致します。そして同情申し上げます。
これで西武より金銭を受け取っていた東京ガス所属の木村雄太投手と早大の清水勝仁選手がそれぞれ1年間の謹慎と1ヶ月間の停学処分。そして早大野球部の川口部長と応武良監督は厳重注意、また問題に関与したとして当時の専大北上高野球部コーチであった高橋利男教諭が懲戒解雇とアマチュア側は全ての当事者や関係者が処分を受けたことになりました。救いだったのは、ある意味でこの事件の最大の犠牲者ともいえる木村、清水の両選手が謝罪会見場でとても潔く振る舞っていたことでした。今回の事件で、球界が若い両選手が将来を棒に振るようなことがないよう配慮をすることも大事であると考えます。
一方、今回の事件に関して開いた口が塞がらないのは、プロ野球両リーグの対応の酷さ、遅さです。
まず、諸悪の根源ともいえる西武ライオンズの大田秀和社長兼オーナー代行及びスカウト陣は、調査委員会の結果など待たずに即刻辞任すべきです。アマチュア選手に金銭を渡すという重大なルール違反を犯した上に、それを選手本人が知らなかったことにするように画策していたわけですから、言語道断であります。
ただでさえ西武グループは前オーナーの堤義明氏が反社会的行為で有罪判決を受け、企業として再生に向けての第一歩を踏みしめたばかりなのですから、社会的責任の重さをもっと深刻に受け止めるべきでしょう。アマチュア球界に比べて何と情けない対応であることか!
さらに、高野連からの希望枠撤廃を受けて開かれたオーナー会議の対応も本当に信じられません。ヒルマン監督!今こそ声を大にして「シンジラレナ〜イ!!」と叫ぶ時です。ドラフト制度改革の是非はさておき、まず希望枠は即刻撤廃でしょう!?
ロッテの瀬戸山球団社長が4月2日開催のパリーグ理事会で、今年も希望枠制度が維持されるならばパの6球団は希望枠を返上する事を提案なさるようですが、極めてまともな発言だと思います。そして、「返上とかではなく、基本的には撤廃は今年からやるべき」という福岡ソフトバンクホークス角田代表の見解こそが正しいのだと思います。
プロ球界は襟を正すといって正せなかったのですから、まずは撤廃です!!ドラフトの抱える抽選、ウェーバー制、或いはFA取得期間等の問題については後でじっくり話し合えば良いではないですか。希望枠の存在が裏金問題を引き起こしているのは明々白々なのですから、何と言われようが即刻撤廃が先決であります。
この結論が素直に素早く導き出せないプロ球界はどうかしていると思いますし、各マスコミがその点を何故舌鋒鋭く批判、指摘しないのか、不思議としかと言いようがありません。
また、西武ライオンズに対する制裁も事件発覚から半月以上が経過しているにも拘らず何の発表もなく、パリーグも既に開幕してしまいました。本来ならば今秋のドラフト会議への不参加は当然のこととして、今シーズンの最終成績から20勝を剥奪する、或いは如何なる成績でもプレーオフへの参加を禁止するといった制裁が既に下されているべきです。
プロ野球界とマスコミは、現状の対応がスポーツ先進国では考えられないほどお粗末で遅いことを、まず認識することから始めなければならないと私は考えます。
さて、翻ってフットボール界はといいますと、ドラフト制度がないおかげで選手獲得のための裏金問題は表面化しておりません。そしてクラブ関係者は、フットボールがベースボールと違って1試合で最大14人しかプレーできないために、出場機会を求めて実力者が1チームに集中せず分散する傾向があることと、FIFAを頂点にルールが世界的にしっかりと統一されていることに感謝せねばならないでしょう。
ではフットボール界に不正がないのかと言えばとんでもないわけで、世界のフットボール史を紐解けば移籍に関連した贈収賄事件や、協会或いはクラブ幹部の横領や使途不明金問題等々、枚挙に暇がありません。また、移籍金こそ発生しませんが、Jリーグの新人獲得合戦は毎年水面下で繰り広げられているわけですから、そこに落とし穴がないとは言い切れないのが現状です。
Jリーグは今回のプロ野球界の裏金事件を受けて、「人の振り見てわが身を直せ」の金言を心に刻み、ピッチの内外でフェアプレー精神の模範を示さねばならないと声を大にして申し上げたいと思います。
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登録日:2007年 03月 30日 23:38:04
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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