相思相愛

<サッカー・FAカップ>マンチェスター・ユナイテッド ミドルスブラを下し準決勝へ - 英国

【マンチェスター/英国 19日 AFP】サッカー、イングランド・FAカップ(FA Cup)・準々決勝・再試合、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)vsミドルスブラ(Middlesbrough FC)。試合は1-0でマンチェスター・ユナイテッドが勝利し準決勝進出を決めた。(c)AFP

AFPBB News


ヴァンフォーレ甲府が、元気です!

 ナビスコカップでは破竹の3連勝でグループの首位を走っていましたが、前節、勝ち星のなかったリーグ戦でも待望の初勝利を挙げたのです。その勝ち方も、ホームでヴィッセル神戸を相手に1対3の劣勢から3連続ゴールを決めての大逆転と、サポーターにとってはたまらないものでした。

 ヴァンフォーレ甲府の魅力は、スター選手はいなくても、チーム全員の戦術に対する理解度が高く、どんな相手でもその攻撃的スタイルを崩さないところにあります。これは大木監督の手腕によるところ大なのですが、同氏の魅力は何と言ってもその純朴な人柄とフットボールに対する情熱にあります。そしてエスパルスのコーチ時代に様々な監督の指導法に触れ、それぞれの良いところを自分なりに吸収、昇華させ、確固たる指導法を築き上げたことが今日の成功に繋がっているのだと思います。

 私が初めてヴァンフォーレ甲府の試合を観戦したのは2000年のシーズンでしたが、当時はあらゆる面でハンディを抱えて迷走中で、失礼ながらその甲府が数年後にJ1に昇格することなど想像もしませんでした。また、甲斐の山並みに抱かれた牧歌的な風景に触れ、どうしてこのような地域から中田英寿のようなメンタリティーを持った選手が育つのかという素朴な疑問が沸き起こった次第です。
ところが、よくよく考えて見ますと甲府はあの天下の武将、武田信玄を生んだ土地であり、フットボール界でも古くから社会人リーグでは甲府クラブ、高校選手権では韮崎高校という名門が活躍をしていたわけですから、甲斐の地にJのクラブがあっても何ら不思議はありません。

 しかし、現実的には地場に大きな産業があるわけでもなく、チームの運営はかなりの苦戦を強いられ、一時はチーム存亡の危機を迎えたほどでした。従って今日の礎を築くには、関係者の皆さんの血の滲むような努力があったことは容易に想像がつきますし、加えて大木監督の存在がなければ、今日J1で注目を集めるヴァンフォーレ甲府はなかったと思います。

 ところで、クラブと監督の関係なるものは極めて興味深く、特にクラブの栄光の陰には必ずといって良い程名監督の存在があり、事実、世界のフットボール史に於いてクラブと監督の様々な劇的ドラマが繰り広げられてきました。

 そして歴史の浅い日本ではまだ実現されないのが監督の長期政権であります。ご存知のようにマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は、今季で就任20周年を迎えましたし、アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督も今年で就任10年余を数えます。

 古くはリバプールをトップチームへと押し上げたビル・シャンクリーは20年間、ノッテインガム・フォレストを2年連続欧州No.1へと導いたブライアン・クラフは18年間、そしてブレーメンをトップチームの仲間入りをさせたオットー・レーハーゲルも14年間、それぞれのクラブに在籍しました。もっとも長い例を挙げますと、フランス人のギー・ルーなどは1961年にオーセールのプレーヤー・マネージャーとして指導者生活をスタートさせてから、途中で徴兵や病気療養による中抜けがあったものの、40年以上にわたって指揮を執り続けたのですから驚きです。

 残念ながらJリーグでは、フロントに監督力を見抜く人材が欠乏しているため、やたら監督の首が挿げ替えられてしまいますが、それでもガンバ大阪の西野監督などは既6年目のシーズンを迎えており、日本初の長期政権を築く監督候補No.1といったところでしょうか。

 一方、私は大木監督こそが甲府で長期政権を築くにふさわしい指導者だと確信しており、最低でも10年は同クラブのために腰をすえて情熱を注いでいただきたいと思うのです。否、ギー・ルー氏ではありませんが、甲斐の地に骨を埋める覚悟で戦っていただきたいのです。何故ならば、ヴァンフォーレ甲府と大木監督の関係を分析すると、日本フットボール史の中でも非常に珍しいものであり、かつ運命的な繋がりを感じるからです。

 ご存知のように大木監督が甲府の指揮を執るのは2度目のことで、最初は財政面でも成績面でもどん底のJ2時代でした。そして色々面で自信をなくして負け癖のついているチームに活力を注ぎ込み、最初の上昇気流に乗せた人物こそが大木監督だったのです。

 その後、エスパルスのトップチームの監督に就任するために甲府を離れますが、期待されたにも拘らず何故か結果はさっぱりで、エスパルスを1シーズンで離れる憂き目に会います。そして再度乞われて甲府の指揮を執ると、チームは再び上昇気流に乗り始めるのです。

 そして2度目の上昇気流は強力で、入れ替え戦で柏レイソルを破ってチームを悲願の1部昇格へと導きます。この年の柏レイソルの収入は40億円近くで、一方に甲府は恐らく10億円以下ですから、コストパフォーマンスの面からしても大変な快挙と言えるでしょう。

 あくまで私見ではありますが、要するに大木監督と甲府の相性が抜群なのだと思います。チームと監督、互いが互いを求め合うと申しましょうか、相思相愛の関係とも言えるかも知れません。

 リバプールもノッテインガム・フォレストもヴェルダー・ブレーメンも2部のパッとしないクラブであったにもかかわらず、一人の指導者との出会いによって世界的なクラブへの仲間入りを果たした構図に近いものを、甲府に見出すことが出来るのです。さすがに現段階ではまだ世界的クラブには程遠いですが、ヴァンフォーレ甲府と大木監督の関係は日本においては出色であると実感致します。

 当面は、J1に定着するための基盤作りが課題でしょうが、かつてはイプスウィッチやアバディーンといった小さな町が若き日のロブソン、ファーガソンに率いられて欧州の頂点に立ったように、近い将来、大木監督率いるヴァンフォーレ甲府が何らかのタイトルを獲得すれば、鳥栖、草津といった小さな町のクラブやJリーグ参入を目指す地方都市のクラブにとって大きな励ましとなることでしょう。

 甲斐に武田の軍勢ありとその名を全国に轟かせてから450年余を経た今、山梨にヴァンフォーレ甲府あり、とその名を日本国中に知らしめていただきたいものです。頑張れ、ヴァンフォーレ甲府、そして大木監督!!

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登録日:2007年 04月 10日 19:02:18

コメント

はじめまして、いつも楽しみにしております。

本当に仰るとおりでJでは不可解な監督交代が多いですよね。

先日も私はナビスコ杯の名古屋対甲府戦を観ましたが、
甲府の攻撃は基本的にワンタッチのシンプルなもので、
それがチームとしてよく理解されているようで、羨ましかったです。
名古屋は2-0で負けてしまいましたが、甲府のフィニッシュの精度が高ければ
点差はもっと広がったと思います。

名古屋もフェルフォーセンの2年目で、彼流に言えばかなりオーガナイズされてきましたが、攻撃面での判断の遅さが目立ちます。

勿論どこをどうすればいいのか私にはわかりませんが、
その辺りができている甲府のプレーは観ていて面白いです。
そこが監督の手腕いうことでしょうね。

private ledger @ 2007年 04月 11日 09:12:18

private ledgerさん

コメントありがとうございます。

貴殿は名古屋のサポーターとお見受けしましたが、冷静に試合を分析なさっているようで結構なことと存じます。

甲府の切り替えの速さに関しては、大木監督のコーチとしての長い下積み時代に、ある監督から学んだ練習法を徹底してチームに投下しているのだと思います。

下積みと言えば、ブレーメンのシャーフ監督も自分はあらゆる年代層の選手を指導してきたことが財産だと言っていました。シャーフも大木さんも徹底したアタッキング・フットボールの体現者であることで一致しています。

誰でも攻守の切り替えの早いフットボールはイメージできますが、チーム全員にいかに浸透させるか、そのための効果的な練習方法を幾つ知っているかが監督の手腕なのです。

小谷泰介 @ 2007年 04月 11日 10:40:03

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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