アラン・ボール氏の訃報に想う
1966年に行われた第8回大会は、サッカーの母国イングランドで行われた。
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(c)AFP
私の少年時代のヒーローがまた一人、亡くなってしまいました。火の玉小僧のニックネームで親しまれた元イングランド代表のアラン・ボール氏です。
現地時間の24日夜、自宅の庭で火の手が上がり、消化を試みている間に心臓発作を起こした模様と時事通信は伝えています。
同氏は、1966年ワールドカップ英国大会優勝のイングランド代表のレギュラー選手で、精力的な動きでピンチの目を摘んだと思えば、すぐさま攻撃に加わって好機を演出する素晴らしい選手でした。
また、現在と違って間延びした牧歌的フットボール全盛の時代に、攻守の切り替えの速さを意識していた稀有な選手で、まさに攻守の要という表現がぴったり。168センチと小柄な選手ではありましたが、相手チームにとっては本当にいやな存在であったに違いありません。
私が記憶する限りではブラックプールを皮切りに、エバートン、アーセナル、サウサンプトンなどで22年間にわたって現役生活を続け、引退後は監督としてポーツマス、サウサンプトン、ストーク・シティなどを率いた生粋のフットボール・ピープルでした。
それにしても、ボビー・ムーア、ジェフ・アスル、ビリー・ブレムナー、エムリン・ヒューズ、ジョージベスト、ジミー・ジョンストン、アラン・ボールと次々に‘70年代に活躍した私の少年時代のヒーローが60歳前後の若さで亡くなってゆき、寂しい限りです。
実は私、一流のフットボール選手は長生きできないという持論を持っており、実際、多くの世界的選手が様々な病で若くしてその生涯を閉じていることは、否定しようのない事実であります。
特に心臓発作による死亡事故が多く、2003年に28歳で亡くなったカメルーン代表のヴィヴィアン・フォエ選手や、2004年に24歳で亡くなったハンガリー代表のミクローシュ・フェヘル選手のケースは若すぎるにしても、今回のボール氏のように心臓系の病気で命を落としたかつての名選手は少なくありません。
元選手で監督だった、ジョック・ステイン、ビル・シャンクリーも心臓発作でなくなっており、ヨハン・クライフ、グレアム・スーネス、ジェラール・ウリエらも心臓に問題を抱えていたために手術を余儀なくされています。
しかし、よく考えてみるとそれは何ら不思議のないことで、不随意筋でできている心臓は一生の間、活発に活動するものの、多少の個人差はあれその収縮数は限られているわけです。
10年、20年と過酷なプロの世界でフットボール競技生活を強いられれば、心臓への負担は尋常ではありません。スポーツ心臓になってしまうのは必定ですし、同じ年齢でも一般人男性とプロフットボール選手の心臓収縮数には大きな開きがあって当然です。
従って、初老に差し掛かる頃には心臓に何らかの問題を抱えるのも道理ということが言いえると私は考えます。
超一流選手でも、スタンレー・マシューズ、ディ・ステファノ、フェレンツ・プスカシュ等のように80歳以上生きた鉄人達もいますが、極少数派でしょう。
今回は不謹慎かつ暗い話題で恐縮ですが、要は何が申し上げたいかと言いますと、フットボール選手は一流であればあるほど命を削っているということに尽きます。
アラン・ボール氏は間違いなく命を削りながらフットボールを長年続け、その短い生涯を閉じました。
私がフットボール選手を尊敬する理由のひとつは、彼らが命を削りながらプレーをしているからです。そう、ゴン中山選手などがプレーしている姿を見ていると、命を削る音が聞こえてくるからです。
一昨日亡くなったアラン・ボール氏は間違いなく命を削りながら長年にわたってフットボールを続け、その長くはない生涯を閉じました。でも、愛するフットボールのために命を削ったことに対して後悔はないと信じたいですし、誇りに思っていることでしょう。
彼はエリザベス女王よりMBE(大英勲章第5位)を叙勲していますが、この度天国の入り口でフットボールの神様より最高位の勲章を授かったに違いありません。合掌。
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登録日:2007年 04月 27日 16:28:30
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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