元Jリーガーをもっとフロントに!!

 先日行われた鹿島アントラーズ対浦和レッズ戦の後、現役を退いたばかりの本田泰人氏と会食をする機会に恵まれました。

 ご存知のように本田泰人氏は小柄な体格にもかかわらず、J開幕以来アントラーズ一筋に15年間でリーグ戦に328試合、天皇杯等を入れると計431試合に出場した鉄人です。代表選手としても31試合に出場し、「スッポンマーク」と言われた粘りのディフェンスを身上とした名選手でした。

 また、父君のスパルタ教育を受けたこともあって、小兵ながら闘志を全面に押し出すプレーで精神面の強さが如何に大切かを全身で示した選手でもあります。

 現役時代、それも全盛期に何度か優勝インタビューをさせていただいたことがあるのですが、久々にお会いして表情が随分穏やかになった印象を受けました。

 引退をされたのだから当然のことと言えばそれまでですが、力を出し切った充実感と悔いの無い満足感が清々しい笑顔を作り出しているのだと感じた次第です。

 ところで、引退して間もない選手に対面した際に、必ずと言って良いほど口をついて出てしまう話題といえば、今後の進路についてであります。私もご多分に洩れず、本田氏の顔を見るなり思わず訊ねてしまいました。「今後はどうなさるのですか?」と。

 鹿島アントラーズよりコーチ就任の打診があったにも拘らず、それを受けなかったという情報は入手していたので興味津々だったのですが、同氏の返答は意外なものでした。

「いやあ、皆さん僕が指導者になるんじゃないかと思ってらっしゃるんですが、僕はどちらかというとゼネラル・マネージャー志向なんです。
良い指導者になることも魅力ではありますが、フロントが良い指導者を選ばないとチームは強くなりませんからね。」と、本田泰人氏。

 うーむ、ごもっともな話であります。当たり前過ぎるくらいに当たり前の話なのですが、何故か新鮮に聞こえてしまうのはどうしてでしょうか。それは、Jリーガー出身の監督は増えてきても、Jリーガー出身のゼネラル・マネージャーが殆ど存在しないからなのかも知れません。

 実際、三浦泰年氏がヴィッセル神戸のゼネラル・マネージャーを解任されて以来、Jリーガー出身のゼネラル・マネージャーは誕生していないのではないでしょうか。
また、本場欧州ではクラブで長年功績を積んだ選手が引退後、暫くしてそのクラブのゼネラル・マネージャーに就任するケースが多々あるのに比べ、Jリーグの場合は少な過ぎるといわざるを得ません。

「僕は、単刀直入にコーチではなく、ゼネラル・マネージャーをやらせて欲しいと言ったんですよ。しかも、1年間やって結果が出なければ首を切ってもらっていいので、是非やらせて欲しいといったのですが、だめでしたね。」と本田氏はちょっと寂しそうな顔をしながら続けるのでした。

「どうしてだめなのかを訊ねても、その答えが釈然としないんですよ。君が想像している以上に大変なんだよと言われても、こっちは承知の上ですから・・・。」と、ここまで話を伺って、再びうーむと考え込んでしまいました。確かに本田氏がいぶかしがる気持ちは察して余りあります。

 何しろ鹿島アントラーズといえばリーグ開幕以来、9冠獲得までは順調でしたが、ここ数年はタイトルとは無縁のシーズンが続き、凋落傾向が顕著なクラブです。今年も外国籍選手を中心に大補強を慣行したにもかかわらずスタートダッシュに失敗し、小笠原選手と中田選手に未練たらたらの復帰要請を行うなど、強化方針に一貫性を見出すことが出来ません。入場者数の減少も目立ちます。

 そこに本田泰人氏のゼネラル・マネージャー就任は話題性もあるし、タイムリーな話しです。結果が出ていないのならば、ゼネラル・マネージャーも変わって当然ですし、結果主義で臨む本田泰人氏の同ポジションへの就任を阻む理由は見当たりません。鹿島アントラーズ首脳陣の皆様には、何故本田泰人氏のゼネラル・マネージャー就任を拒むのかを問うてみたいと思います。

 ところで話題が話題だけに、本田氏との会食の席が湿ったものだったかと言うと決してそうではなく、常に回りに気を使い、朗らかに我々と接する姿には感服しました。そして希望のポストへの就任は果たせなかったものの落ち込んでいる気配は全くなく、しっかりと先を見据えて今やるべきことを着々とこなしている様子に感心することしきり。彼の人間性を持ってすれば選手としてだけではなく、フロント入りしてもアントラーズのために力を発揮するに違いないと思うのですが・・・。

 鹿島市に隣接する神栖市にある御寿司屋さんでそんな本田選手の横顔を見つめながら、彼のような人材こそが、どんどんとフロント入りすべきだという想いを強くした次第です。

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登録日:2007年 05月 07日 19:39:49

コメント

小谷さんこんにちは

今回の件、私も本田選手と言えば熱血指導者をイメージしやすかったので、
GM希望は意外です。
確かに選手出身のGMは少ないですね。

ただ、反対にヨーロッパでは多いプレー経験なしor選手時代はパッとせず
出身で優秀な指導者がいないですね。

有力選手の就職先確保という日本的なシステムもわからなくはないですが、
門戸を一般に広げて欲しいものです。

一度、一般からGMや指導者を公募してみたらどうでしょうか?
きっと優秀な人材が山ほど出てくるような気がします。

その際は小谷さんも応募してくださいね(笑)

クライフターン @ 2007年 05月 09日 12:01:18

お久しぶりです!

京都パープルサンガがかつて公募したことがあったと聞いています。あと、プロ野球では、オリックスが社長を一般公募して話題となりましたね。どちらも今はさっぱりなのが残念ですが・・・・。

この世界はOBにすら門戸を開かないのですから、村社会と申しましょうか、閉鎖的と申しましょうか、GMへの道は茨の道と言えるでしょう。

しかし、何故閉鎖的になるのかにつきましては、厳然たる理由があるわけで、いずれゆっくりとその辺のことも書かねばと思っております。

クライフターンさん @ 2007年 05月 09日 15:22:52

早速のご返答ありがとうございます。

サンガがやって失敗しているんですね。
勉強不足でした!

クライフターン @ 2007年 05月 10日 14:13:19

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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