サポーターの権利

<サッカー リーガエスパニョーラ>レアル・マドリード ホームでレバンテに敗れシーズン7敗目 - スペイン

【マドリード/スペイン 4日 AFP】サッカー、スペイン・リーガエスパニョーラ1部・第21節、レアル・マドリード(Real Madrid)vsレバンテ(Levante)。試合はレアル・マドリードが0-1で敗れ、早くもシーズン7敗目を喫し4位に順位を落とした。写真は、ホームでの敗戦に肩を落とすレアル・マドリードのラウル・ゴンザレス(Raul Gonzalez)。(c)AFP/BRU GARCIA

AFPBB News


 前回のブログでは、セレッソ大阪の都並敏史監督の解任について触れましたが、「社長出て来い!低迷C大阪フロントにサポーターの怒り爆発」と題して、先週末の対札幌戦後にセレッソ大阪のサポーターが出原社長を取り囲み、一連の出来事に関する釈明を求めたという内容の記事を目にしました。

 その記事によると想像以上にC大阪サポーターの怒りは大きく、その矛先はフロント、特に出原社長に向けられていることがわかりました。

 Jリーグではコアなサポーターのフットボールに対する情熱、理解はフロントのそれを凌駕しているケースが多く、往々にしてサポーターの方がフロントよりも正しい分析ができていたりします。今回もリーグの序盤で突然GMと監督を解任し、クルピ監督を招聘したフロントの方針に対して到底納得できないというセレッソ大阪サポーターの想いは、理解出来ます。

「出原退場」とか「いつまでも変わらないこの体質。改革せなあかんのはフロントやろ!」といった怒りや憤りをバナーに認めてスタンドでアピールするのも良いでしょう。

 しかし、試合後に関係者の出入り口を塞いで帰路に着く社長の行く手を阻み、強引に公開質問会を開かせる権利などは持ち合わせていません。

 以前にも述べさせていただきましたが、サポーターに与えられた基本的権利は、開場から閉門までの時間内に自分の座席で応援なりブーイングが出来ることと、トイレなどスタジアム内で定められた施設を使用出来ることであります。そしてスタジアムは公共施設ですから、周囲への迷惑行為などを行わないよう、マナーを守った観戦が義務付けられているのです。

 クラブを愛し、その将来を憂う気持ちはわかりますが、だからと言って株主でもないのにクラブの社長への直談判は勿論、吊るし上げまがいの行為が許されるはずがありません。株主とて法的には、株主総会に於いてのみ発言の機会が与えられているのです。ましてや社長の帰宅を妨害するなど言語道断。車を取り囲んで進路を塞ぐ行為は、前回のアジアカップの決勝で暴れた中国のサポーターと五十歩百歩と言われても仕方がありません。

 Jリーグのサポーターとフットボール先進国のサポーターを比較して、前者が後者に劣っている点を挙げなさいと言われた時に、真っ先にこの点を指摘しなければならないのは残念至極であります。

 繰り返しますが、抗議をするのは結構。スタンドで行うも良し、ホームページからメッセージとして送り付けるも良し、またクラブに電話をするのも良いでしょう。しかしながら、退出しようとする車を取り囲んで社長に罵声を浴びせる恐喝、恫喝まがいの行為は絶対に厳禁です。社会的にも許されることではありませんし、第一、スマートではありません。

 一番スマートな方法は、サポーターを怒り心頭させるフロントのいるクラブの試合など見に行かないことです。

 フットボールの世界に於いて、サポーターは立派な消費者ですから、不買運動(チケットを買わない)を起こせば良いのです。年間チケットの購入者には気の毒ですが、それでもここは.ぐっと我慢をして足を運ばなければ良いのです。

 何故ならばJリーグは興行ですから、興行に値しない商品は集客が出来ず淘汰されて当然で、ビジネスが成り立たたなければ、それは社長の責任であり、自然に社長の首が飛ぶという按配です。

 ひとつの例を挙げましょう。イングランドにリーズ・ユナイテッドというクラブがあります。60年代後半から70年代に掛けて無敵を誇ったかつての名門チームで、今では当たり前になりましたが、レギュラークラス全員を代表選手で固めた世界初(恐らく)のクラブです。

 ジョーダン、ロリマー、グレイ、ブレムナー、マックイーン、ハーベイ(以上スコットランド代表)、Jチャールトン、クラーク、ジョーンズ、メドレー、クーパー、ハンター、リーニー(以上イングランド代表)、ジャイルズ(アイルランド代表)、スプレイク(ウェールズ代表)といった錚々たるメンバーがリーズの黄金時代を支え、現在のレアル、バルサ、ミラン、マンUに匹敵する存在でした。

 90年代にもカントナや現セルティック監督のストラッカンを擁してリーグ優勝を果たしし、20世紀のイングランドを代表する名門チームのひとつでしたが、21世紀に入って経営陣の放漫経営がたたって凋落が始まります。

 ファーディナンドやキューウェル等主力選手を放出せざるを得なかった2003〜04シーズンにはプレミアからチャンピオンシップに降格し、そして今年はついにディビジョン1(実質3部リーグ)への降格が決定してしまいました。

 だからといってリーズのサポーターは「社長を出せ!」などと野暮なことは言いません。多くのサポーターがスタジアムに足を運ばなくなったのです。

 かつては常に4万人を越えるサポーターで埋め尽くされたホームスタジアムのエランドロードでしたが、今季はその半分の2万人前後しか観客席が埋まりませんでした。空席の目立つエランドロードの映像は衝撃的でしたが、これは明らかに経営陣に対する抗議の意味が込められているのだと私は考えています。何故ならばイングランドのサポーターはそんなに薄情ではないからです。

 リーズの著しい凋落は寂しい限りですが、正しい経営が出来なければクラブが傾くのは必然であり、それがプロの世界、興行の世界というものです。いくらフットボールが崇高な文化であったとしても、経営陣が不正や放漫経営を行えばクラブはその代償を払わなければなりません。そして首脳陣が入れ替わるか、新しいオーナーを迎えて改革がなされない限り、クラブは落ちるところまで落ちるしかないのです。

 私自身もフットボールビジネスで過ちを犯して多くのものを失いましたが、これは自業自得。自分だけなら良いのですが、支援者や家族にまで多大な迷惑を掛けてしまいました。まさに落ちるところまで落ちましたが、迷惑をお掛けした方々への償いをする意味でも現在は自分なりに懸命に改革を断行している最中です。

少し脇道にそれてしまいましたので、話しを元に戻しましょう。

 この問題の中心にいるセレッソ大阪のサポーターの皆さんですが、フロントに対して本当に納得できないのであれば、抗議の意味を込めてスタジアムに足を運ばなければ良いのです。

 しかし、今の段階でそれは時期尚早で、皆さんの抗議を受けて19日にはクラブ側から説明があるのだし、それから判断しても遅くはありません。クルピ監督も来日後の記者会見で「現場とサポーターがひとつになることがJ1昇格に結びつくと思っている。」と述べているように、皆さんにここは今一度我慢をしていただきたいと存じます。

 そして今季クルピ体制で復活の兆しが見えない時こそ、合法かつスマートな手法で究極の抗議をするべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 まとまりのない文章となってしまいましたが、良いサポーターはその権利を正しく有効に行使することが重要であることを申し上げたかった次第です。

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登録日:2007年 05月 15日 21:00:59

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:一昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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