日本にスポーツが文化として根付かないわけ

<サッカー世界クラブ選手権>シドニーFC、大会を5位で終える

【東京/日本 16日 AFP】サッカー世界クラブ選手権・5位決定戦、シドニーFC(Sydney FC)vsアル・アハリ(Al Ahly)。試合はシドニーFCが2-1で勝利を収め、今大会を5位で終えた。(c)AFP TOSHIFUMI KITAMURA

AFPBB News


 先週、日本のマスコミを大いに賑わわせたフットボール絡みのニュースがあります。それは言うまでもなく、カズの参議院議員選挙出馬要請辞退と、一攫千金を求めてTOTOBIGに殺到した人々に関する話題です。

 この二つのニュースに共通しているのは、どちらも政治絡みの話題であるということです。しかも、どちらも政治家や官僚の間抜けさ加減が良く分かる話題です。誰も書きませんが、いかに政治家や官僚がスポーツを理解しようとせず、軽視しているかを伝えるには絶好の出来事なので、このブログで取り上げさせていただきたいと存じます。

 まず、カズこと三浦知良選手に自民党から参院選への出馬要請があったことについて・・・。

 カズが「自分は政治のことは分からないし、現役の選手として出来ることを精一杯するのが僕の仕事。」といって辞退したことは、さすがです! 言動に迷いやブレがありません。前々節の対サンフレッチェ広島戦で豪快なボレーシュートを決め、生涯現役の想いをいっそう強くしたことが彼の気持ちを後押ししているのではないでしょうか。

 「還暦までフットボールをやれればと思っています。」という発言に対しても、あながち冗談とは言い切れなくなってきています。還暦はともかく、スタンレー・マシューズの記録は更新して欲しいと個人的には願っている次第です。

 カズのことはさておき、私が申し上げたいことは彼に参院選への出馬を要請した自民党のことであります。

 自民党の安部政権が、夏の参院選で何とか過半数以上を獲得して、長期政権への布石を打ちたいと必死なのは理解できます。また、参院選の比例区ではビッグネームが多くの票を獲得するので、有名人を候補に立てたくなるのも分かります。しかし、だからといって現役のJリーガーに出馬を要請するのは本人にも失礼な話ですし、フットボールを馬鹿にしていますし、何よりも国民を馬鹿にしています。

 24時間をフットボールのために費やしている現役Jリーガーに、全国的に有名で人気があるからといって、選挙のために、或いは政治家として国民のために、一体どれだけのことが出来るというのでしょうか!?

 具体的に自民党の選対の誰がカズに出馬を要請したかは知る由もありませんが、唯々ひたすらに票が欲しいあまり、常軌を逸してしまったとしか言いようがありません。本末転倒です。そして政治家がフットボールに対して、或いはプロスポーツに対してこの程度の認識と理解しか持っていないのかと思うと、暗澹たる気持ちになってくるのです。

 ご存知のように政治の世界に於いて、スポーツのことを司るのは文部省です。そして人間として最も大事な文化の一つであるスポーツの将来の鍵を握る文部大臣は安部総理によって指名されているのです。その政権が今回のようなお粗末な行動に出たことを、マスコミや国民はもっと憂うべきだと私は考えます。

 ところで、もう一方のTOTOBIG狂想曲。こちらは5億だ、6億だのと当選金ばかりに目が行ってしまっていますが、TOTO自体は不人気で廃止寸前のところまで追い詰められていました。

 TOTOは勿論文部省の管轄ですが、文部省職員の天下り先の機関として設立されたと揶揄されるくらいお粗末な運営の歴史を刻んでまいりました。とにかく、読みと仕切りが悪く、TOTOが全く売れなかったのです。

 TOTOBIGにしても告知が不充分な為その意図が国民に伝わらず、発売以来、ずっと売れませんでした。売れなかったことが当選者を生まず、繰越金が溜まって今回の大ブレークに繋がったのですから、何とも皮肉な話です。

 今回の騒ぎは、TOTOの売り上げを施設の充実をはじめとしたスポーツ文化発展のために有効利用するという本来の目的を無にしないために、スポーツの神様が仕組んだ救済処置だったと私は理解していますが、死にかけていたTOTOがこれで息を吹き返すことだけは確かでしょう。

 5億7千万円余りを当てた強運な方が7人も誕生したことは、明るい話題と言えますが、棚から牡丹餅的に復活したTOTOのことを手放しでは喜べません。TOTOBIGばかりに人気が集中して、オリジナルが廃れてTOTO本来の醍醐味が失われてしまわないか心配です。

 冒頭でも述べましたが、カズの参院選出馬要請も、TOTOを売れなくしたのも、政治に携わる人達のなさったことです。政治に携わる人達のレベルがこの程度ですから、この国にスポーツが文化として根付く日など、遠い未来のことのように思えるのです。また、日本にスポーツが文化として根付かないわけが、お分かりいただけるかと存じます。

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登録日:2007年 05月 28日 20:36:47

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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