Road to ARTFOOTBALL 2007 (I)

さて、“ARTFOOTBALL 2007”への参加を決意したものの、移動も含めて6月の23日から7月の5日まで、約2週間もの長期にわたってボランティアでスケジュールを割いてくださるアーティストが果たしていらっしゃるのか、それが大問題でありました。
以前にもご紹介致しましたが、フットボール好きのアーティストは日本にも大勢いらっしゃいます。しかし、皆さん所属事務所があってTVやラジオ番組の収録、或いはコンサートや芝居といった公演のため、2週間の休みを取ることなど実質不可能であることは明白でした。
開催国のロシアのSTARKOなどは、純粋なミュージシャンのチームとして長年活動しているし、ベラルーシ、ポーランド、スロバキアやルーマニア、エストニアなど主に東欧諸国のチームには同じようにミュージシャンのみで編成され、積極的に活動しているチームが多く存在します。
しかし、日本はまだまだフットボールが文化として定着していない上に、アーティストよりも所属事務所の力が強く、なかなか自発的な文化活動が出来ない土壌があるのです。
また、場所もあまり日本人が訪れることのないソチという遠方の上、航空券もエコノミークラスしか用意されていなかったため、今回は長年私が望月三起也先生と活動している「THE ミイラ」としてチームを編成するのを諦め、チャリティー・コンサート部隊とフットボール競技部隊の2編成でSHOWBIZ NIPPONという急造チームを構築する方針を固めました。
まず、この手のチャリティー・コンサートに意義を感じてボランティアで参加してくださるミュージシャンがいらっしゃらないか、あれこれと思いを廻らせていると突然、川村カオリさんの顔が浮かびました。
「そうだ、彼女のお母様はロシア人だから、ロシアへの思いいれも強いはずだ!」と閃いたのです。
実は、1991年のことだったと思うのですが、彼女がオールナイトニッポンのパーソナリティーをなさっていた頃、番組で日米ソ三国対抗フットボール大会を主催した際に、そのお手伝いをさせていただいたことがありました。
同企画は、長い間冷戦の主役となってきた米国とソ連邦(当時)の子供達に日本の子供達が加わってフットボールを通じた交流をし、なおかつ平和についても語ろうというもので、大変に意義深いイベントとして今も私の脳裏に焼きついています。
まだ20才そこそこのピチピチとしたカオリさんが、ACミランのユニホームを着てピッチを走り回っていた姿も忘れがたいですが、カオリさんがいわゆるアイドル歌手とは一線を画すアーティストであることは当時既に感じ取ることが出来ました。
しかし、それから10数年の月日が流れ、それ以来一度もお会いしていないカオリさんにどうやってアプローチをするのか。
こういうときに便利なネットで彼女のホームページを見つけ、4月19日に意を決して次のようなメールをお送りしました。
川村カオリ様、関係者の皆様
私はフットボール・コメンテーターの小谷泰介と申しますが、突然にメールを差し上げるご無礼をお許しください。
川村さんとは十数年前に、ニッポン放送のオールナイトニッポン特番「日米ソ三国対抗フットボール」という番組でご一緒させていただいたことがあります。
実はこの度、ロシアのソチという都市でエンターテイナーによるフットボールのワールドカップとチャリティー・コンサートが開催されることになり、川村さんとSORROWの皆様にご参加いただけないかと思い、連絡を取らせていただきました。
添付の資料をご覧頂いた上で、参加の是非をご連絡いただければ幸いに存じます。なお、参加につきましては全期間ではなく、部分参加でも結構でございます。
以上、何卒宜しくご検討の程宜しくお願い申し上げます。
SHOWBIZ NIPPON代表
小谷泰介
すると、翌日には事務所の担当者から早速連絡があり、1日だけ返答を待ってほしい旨伝えてきてくださったのです。経験上、良い返事は早いという確信があるので期待に胸が膨らみましたが、祈るような気持ちで一日を過ごしたことを鮮明に覚えています。
そして翌日、運命のメールが届きました。
はじめまして。
川村カオリのマネージャーをしております田所と申します。
チャリティー・コンサートのお誘いありがとうございます。
子供達へのチャリティーという企画や、川村の母国ということもあり、企画に賛同させていただき、コンサートに参加をさせていただければと思います。
今年の2月にSORROWは活動を休止し、現在は「川村カオリ」として活動しておりますが、SORROWとしての参加でも川村カオリとしての参加でも、どちらでも対応できます。
ご検討ください。
なお、川村の父が露日協会の役員をしており、そちらの面でも何か出来ることがあればご相談ください。
何卒宜しくお願い致します。
この返事を受け取った私はというと、心の中で思わずガッツポーズでした。難しい条件の中で、この申し出を受けてくださるのはこの人しかいないと思っていた人から、願っていた通りの返事がいただける!
これは、ハットトリックを決めた時のような、或いは難しいフリーキックを決めた時のような喜びに匹敵する、否、それ以上の歓喜でありました。
私は川村カオリ万歳!と心で叫びながら、もう一組の大物グループへの出演依頼を心に期していたのです。
(明日へつづく)
写真は、ARTFOOTBALLの主旨に賛同し、快く大会への出演を表明してくださった川村カオリさん。私にとってはジャンヌ・ダルクのような存在でした。
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登録日:2007年 07月 10日 17:12:05
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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