根付かせよう!テスティモニアル!!

1週間程ご無沙汰してしまいましたが、皆様はいかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。早速ではございますが、今回は本田選手の引退試合の話題を受けて、テスティモニアル(testimonial)について述べさせていただきます。
日本には残念ながら定着していないテスティモニアルですが、平成11年に出版した幣著「拝啓川渕三郎殿」(モダン出版刊)に皆様へお伝えしたい主旨が書かれていますので、その中から抜粋した文章(平成11年8月23日に行われたラモス瑠偉氏の引退試合を受けて書かれたもの)をご紹介させていただきます。
《前略》ところで、今回の引退試合ですが、あのラモス瑠偉氏だからこそ実現できたのであって、Jリーグで長くプレーを続けていれば誰もがあのような引退試合で花道を飾れるというものではありません。現に前回の引退試合はというと、私の記憶に間違いがなければ、1995年に行われた三ツ沢球技場で行われた木村和司氏のセレモニーにまで遡らなければならず、一抹の寂しさを感じてしまうのです。その前はというと、15年も昔の釜本邦茂氏の引退試合ですから、釜本、木村やラモス各氏のような日本を代表するスーパースターでないと引退試合を開催してもらえないのかと、大いに不満です。
しかし、決してそんなことはなく、Jリーグ規約の中にも「引退試合は、公式戦および天皇杯全日本選手権において通算500試合以上の出場実績を達成した選手またはJリーグで活躍し、Jリーグの発展に著しく貢献した選手を対象として開催する」と謳われており、前述の各氏のような傑出して華やかな経歴の選手でなくても引退試合を開催することは可能なのです。
例えば、ラモス氏同様に読売クラブとヴェルディ川崎(当時)の黄金時代を築き、20年近くにわたって第一線で活躍した都並敏史氏などは、その資格を充分に有していますし、炎の闘将として知られ、昨季終了後に惜しまれながら引退した柱谷哲二氏なども、是非引退試合を開催すべき選手であります。
その他にも加藤久氏や、勝矢寿延氏、森下申一氏、原博実氏らの引退試合を是非とも観戦したかったと思うのは私だけではないはずです。では何故それらの人達の引退試合が行われなかったかといいますと、恐らくふたつの原因があるのだと推察する次第です。
ひとつはJリーグ規約の73条、引退試合の開催手続きの条文に、「当該選手の現所属クラブまたはもと所属クラブが、事前にJリーグ事務局運営部に所定の申請書を提出し、実行委員会の承認を得なければ開催することができない」とあるのですが、そもそもクラブ自体の引退試合開催に対する意識が極めて薄いという点が指摘できると思います。
確かに引退試合を開催するには手間がかかりますし、総収入から必要経費を控除した純益は対象選手が受領することになっているから儲からないことになり、その気持ちも分からないではないのですが、各クラブには引退試合もファンサービスの一環と認識していただき、クラブとJリーグのために生命を削って懸命にプレーをしてきた選手に感謝の気持ちを抱いていただければと願わずにはいられません。《中略》
次にもうひとつの要因と致しましては、引退試合というと、国立競技場を満員にした華々しく開催しなくてはいけないという風潮がある点を指摘させていただきたいと思います。
選手として最後の花道を飾る大事な試合ですから、大きな器に沢山の人達を集めて行えるに越したことはありませんが、フットボールの母国イングランドでは所属しているクラブのホームグラウンドで行われることになっています。
ちなみにイングランドでは引退試合というニュアンスではなく、テスティモニアル(testimonial match=表彰試合或いは感謝試合)と呼んでおり、レギュラークラスとして最低10年間をプレーした選手を対象として開催されています。同試合は所属クラブとそのクラブに縁のあるクラブが対戦するケース(例えばリバプールFCならば、ローカルダービーの相手であるエバートンFC)が多く、入場料収入の全てが当該選手に贈られます。
リーグ戦等で10年間レギュラーとしてプレーすればよいわけですから、現役選手としてテスティモニアルに出場することも多く、現在(当時)もブラックバーンの選手として活躍するマーク・ヒューズ氏の場合は1994年に長年所属したマンチェスター・ユナイテッドが主催し、スコットランドのセルティックを招いてテスティモニアルが行われました。場所は勿論、オールドトラッフォードで42、079人の観客で沸き返り、ヒューズ氏には約50万ポンド(当時のレートで約9000万円)が贈られています。
北アイルランドのゴールキーパーであったパット・ジェニングス氏の場合は、1985年に当時所属していたアーセナルが主催し、同氏が以前所属していたトットナムを招いてハイブリー・スタジアムに25、000人を集めて行われました。また、かのサー・ボビー・チャールトン氏のテスティモニアルは、オールドトラッフォードに60、538人を集めて開催されましたが、この観客動員数はチャリティーシールドを除くイングランドの親善試合の最高入場者数となっています。
このようにイングランドでは、クラブ側にもサポーター側にも、10年間レギュラーとして活躍した選手には、テスティモニアルを開催してあげるという共通の概念が定着しており、そういった背景の中で何十試合ものテスティモニアルが開催されてきているのです。《後略》
とまあ、このように本場のテスティモニアルの開催例を引き合いに出して日本にもテスティモニアルの定着をと訴えているわけですが、島田佳代子さんも著書「I LOVE
英国フットボール」(東邦出版刊)の「ナイアル・クインのプレゼント」の章でテスティモニアルについて言及されているので参考になさって下さい。
もっとも、フットボール発祥の地イングランドでもリーグ草創期の選手に対する待遇は劣悪で、テスティモニアルは選手達の労働組合組織が誕生し、粘り強い交渉と忍耐の末に勝ち得た権利としてスタートしており、わが国でも本来ならば現行の選手会が中心となって積極的にテスティモニアルが定着するように働きかけるべきだと私は考える次第です。プロ野球の選手会も然りだと思います。
一方で、サポーターの意向も大変に重要であり、いくら選手会がテスティモニアルを主張してもサポーターに指示されなければ成立しません。何しろチケットを買って観戦するのはサポーターなのですから!
そこで、明日は私が長年温めてきたサポーター主導のテスティモニアルのプランを、紹介させていただきたいと存じます。何故ならば、このプランが実行されることを真剣に考えているからです。
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登録日:2007年 08月 09日 13:35:53
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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