プロ野球とJリーグの観客動員数に想う

 8月の欧州は新シーズン開幕の季節であり、これから約10ヶ月にわたって欧州全土で熱戦、激戦が繰り広げられることを想像すると胸がワクワク致します。

 アジア杯による中断後、J1も本格的に再開されましたが、昨夜、フジテレビのスポーツ番組「スポルト」で、プロ野球とJリーグの観客動員数を比較する企画が組まれていたのですが、プロスポーツ観戦歴40年を越えるオヤジにとって、その中身はなかなか興味深いものでした。

 まず、プロ野球の観客動員ですが、パリーグとセリーグに逆転現象が起こっていることに驚きを覚えました。セリーグ3試合の合計が63、029人なのに対して、パリーグは80、292人と約2万人近くも開きがあるのですが、幼少時代と青春時代に「人気のセ、実力のパ」というお題目を散々聞かされて育った自分としては、耳を疑いたくなる数字です。

 阪神と巨人が本拠地で戦っていないとは言え、かつてはパリーグの殆どのスタジアムで閑古鳥が鳴いていたのですから、隔世の感を禁じ得ません。

 しかし、この逆転現象は多分にJリーグの影響を受けた上での結果であると私は分析しています。

 読売新聞の広告塔としてジャイアンツが常勝スター軍団でいられた時代には、セリーグの他の5球団は付録、パリーグに至っては蚊帳の外であり、当時強かった阪急ブレーブスの本拠地である西宮球場に、ペナントレースで10,000人を越える観客が詰め掛けることなど無かったのではないでしょうか。

 そもそもプロ野球は、つい何年か前まで正式な観客動員数を発表する習慣など無く、番記者達が試合終了時に「はい、今日は6、500ね!」などと叫んで数字の申し合わせをしていたのです。今でこそ、きちっと実数を発表するようになりましたが、これとてJリーグの影響なのであります。

 そして何よりも、北海道日本ハムファイターズや東北楽天ゴールデンイーグルスが、プロ野球不毛の地であった北海道、東北地方にしっかりと根を下ろし、地元住民の心をしっかり掴んで観客動員数を伸ばしている現状は、Jリーグの理念に学び、それを実践したことによる成果以外の何ものでもありません。

 イチローの抜けたオリックスがかつての輝きを取り戻し、西武ライオンズが一連の不祥事の後始末をしっかりとして心機一転を図れば、パリーグは磐石の時代を迎えるのではないでしょうか。逆にセリーグは、ジャイアンツのご威光がすっかり失せてしまった今、抜本的な改革を行わないと下降はせずとも浮上することはないような気が致します。

 私の理想は、コンサドーレ札幌がファイターズ、そしてベガルタ仙台がゴールデンイーグルスと名称変更し、同じチームカラーを共有して、多くの市民が夏は野球、冬はフットボールとそれぞれのスタジアムに足を運んで観戦するという図式なのですが、いかがなものでしょうか。

 実は、アビスパ福岡が福岡ホークスと改名して新オーナーの下、再出発をするという噂を耳にしたのですが、それが事実であるとするならば私は大歓迎です。孫さんならばオーナーとして浦和レッズを追い抜き、追い越せるクラブ作りが出来る力量をお持ちのはずだからです。プロスポーツのリーグで1強(実力ではなくあくまで規模の話ですが)という構図は健全ではなく、群雄割拠といわずともビッグクラブが3つか4つは欲しいところです。

 さて、話しを「スポルト」の分析に戻しましょう。

 同番組では、プロ野球6試合とJリーグ9試合の合計15試合のランキングを発表したのですが、なんと堂々1位の輝いたのが、ビッグスワンで行われたアルビレックス新潟対名古屋グランパス戦でした。

 もともJリーグでもNo.1の観客動員数を誇るアルビレックス新潟ではありますが、プロスポーツ界全体でも堂々の1位に輝くあたりはさすがです。唯一の40,000人台であり、ウィークデイの試合であったことを考えると、りっぱの一言!クラブと地域とサポーターが三位一体となって血の滲むような努力をなさった結果、勝ち得た栄誉であり、他チームは大いに見習わなければなりません。

 なお、スタジアムの占有率でもJリーグが1位、2位を占めており、なんだかんだ言われているけれども、同リーグがしっかりと地域に根ざしていることを確認した次第です。勿論、1試合平均ではプロ野球が23,881人と、Jの18、763人を凌駕していますが、Jリーグ全体ではプロ野球全体を25,000人ほど上回っています。

 僅か、15年でプロ野球に追いつき、追い抜こうとしているJリーグの実像を数字で確認できたのは良かったのですが、フットボールという世界一のスポーツが持つポテンシャルを考えれば当然のことであります。

 下を見れば、J1にもかかわらず、5,000人、6,000人しか集めることの出来ない横浜FCや大宮アルディージャは、企業努力が足りないと言われても仕方がありません。

 一方、上を見れば本場プレミアリーグでは、全チームが放映権料だけで浦和レッズの総収入をはるかに凌ぐ金額を受け取れる時代に突入しており、どこもスタジアムは大盛況です。

 月並みな締めの言葉ではありますが、日本のプロ野球とJリーグの各チームはしっかりと上を見据えて明確なヴィジョンを持ち、なおかつ地に足をつけた経営で、日々前進していただきたいと思います。

コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2007年 08月 16日 20:10:43

コメント

いつも拝見しております。

プロ野球の動員発表に関してですが、今も透明人間をカウントしてますね。
昔のように、キャパを超える発表(58000人とか)はなくなりましたが。
基本的に「年間シート」を含んだ数字を発表してるとの事です。

で、件のすぽるとの特集ですが、どうも納得できませんでした。
実数のJリーグとそうではないプロ野球を比べる意味が・・・
ただ、小谷さんがおっしゃるとおり、パリーグは昔に比べると圧倒的な動員力ですね。
外野席で流しそうめんしてたり、麻雀してる学生の絵を思い出します(笑)
今じゃ考えられない事です。

山口 @ 2007年 08月 16日 21:11:20

山口様

コメントをありがとうございます。

貴殿の年齢は分かりませんが、パリーグの昔をご存知のようですから30歳は越えていらっしゃるのでしょうか。

パリーグの観客動員のためのファンサービスについて具体例を紹介してくださいましたが、遅ればせながら日本でもどうやったらお客様が球場に足を運んでくださるのか真剣に考える時代になってきたのだと思います。

エンターテインメントの本場米国では、既に30年ほど前からNFLのチームがチアリーダーの編成や、ハーフタイムショーの演出、マスコットの演出、キックオフ前のファンサービス等について専門のディレクターを雇って取り組んでいました。

チャラチャラしたことが嫌いなジョンブルの国、イングランドでもその並が押し寄せ、今やスタジアムではマスコットがスタンド周辺を徘徊しています。

この傾向はグローバル化しているのでしょう。良いことだとは思いますが、米国に右に倣えでは味気がありません。画一化は真っ平ごめんです!

その点、そうめん流しなんて日本らしくていいですね!

小谷泰介 @ 2007年 08月 17日 10:44:03

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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