セビージャとスペイン代表の若きホープ、プエルタ選手の訃報に接して
【8月30日 AFP】25日に行われた07-08スペイン・リーガエスパニョーラ1部・第1節のヘタフェ(Getafe CF)戦の試合中に心臓発作で倒れ、搬送先の病院で28日に亡くなったセビージャ(Sevilla)のDFアントニオ・プエルタ(Antonio Puerta)の遺体がセビージャの本拠地サンチェス・ピスファン・スタジアム(Sanchez Pizjuan stadium)に運ばれ、駆けつけた多くのサポーターが追悼を捧げた。
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(c)AFP
先月25日に行われたリーガ・エスパニョーラ1部の開幕戦セビージャ対ヘタフェ戦で悲劇が起きてしまいました。
皆様もうご存知のように、セビージャの生え抜きで、スペイン代表としてもその将来を嘱望されていたアントニオ・プエルタ選手が心臓発作で倒れ、搬送先の病院で帰らぬ人となってしまったのです。
温厚かつ気さくな性格で多くのサポーターから愛されていたプエルタ選手の死は、現地で大々的に報道され、セビージャに限らずスペイン中が悲しみに暮れました。
22歳という若さで命を落とさねばならなかったことに加え、10月には父親になる予定だったという悲しい運命を知って、本当に胸が締めつけられます。
フットボール観戦を始めて40年になりますが、昔はプロ選手がピッチ上で心臓発作により死亡するなどということはありませんでした。1970年代に活躍したスコットランド代表のエイサ・ハートフォード選手が、メディカル・チェックの際に心臓に穴が開いていることが分かり、移籍話が破談になったというニュースは覚えていますが、ピッチ上で倒れるという話は本当に聞いたことがありませんでした。
しかし近年、2003年のコンフェデレーションズ杯の準決勝のピッチ上でカメルーンのフォエ選手が心臓発作起こして死亡して以来、翌年の1月にはベンフィカ・リスボン所属のハンガリー代表選手、ミクロシュ・フェヘールが試合中に心臓発作で倒れて死亡。そして同年10月にはブラジルのサンカタエノ所属のDFセルジーニョ選手がやはり心臓発作で倒れてそのまま死亡と、悲惨な事故が相次ぐようになりました。
そして、今回のプエルタ選手の事故です。実はその事故の翌日には、イスラエルリーグ2部ベールシェバ所属の元ザンビア代表選手であるエンソファが練習中に倒れて死亡しています。
ここまで来ると何か末期的な様相を呈してきておりますが、21世紀に入ってからこのような悲劇が起こるようになったことだけは間違いありません。
フットボールがビッグビジネスとなったことにより引き起こされた過密日程と、因果関係があるのでしょうか?
スペインのEL PAIS紙はセビージャが、開幕を前後して9日間で4試合を行うハードスケジュールを強いられていた点を指摘し、プロスポーツに求められるものがこのままで良いのか疑問を投げかけています。
また、欧州フットボール連盟(UEFA)会長のミシェル・プラティニ氏はズバリ、「過密日程が今後もこうした問題をピッチの上で引き起こすことになるだろう」と語り、プエルタ選手の急死は欧州フットボール界全体を覆う過密日程にあるという見解をしました。さらに、「2ヶ月間あった選手達の休暇を1ヶ月取り上げて、1年の残りの42週間で80試合をこなしたりしている。また、クラブによってはさらにアジアツアーを敢行したりしている」と商業主義を批判しました。
一流選手出身の会長らしい示唆に富んだ勇気ある指摘だと私は思います。
思えば昔はチャンピオンズ・リーグやインター・トト杯、そしてコンフェデレーションズ杯やワールドクラブ選手権もなく、オリンピックもプロ選手は参加していませんでした。そして何よりもフットボールの戦術自体が牧歌的でしたから、選手への負担は今よりは随分と軽いものでした。
プエルタ選手と今世紀に入ってピッチ上で倒れた全ての選手の死を無駄にしないためにも、欧州フットボール界は行過ぎた商業主義の見直しと、選手の健康管理の徹底を急がねばならないでしょう。
翻ってわが国でも、Jリーガーの健康管理、特に心臓検査の徹底を行い、わが国からプエルタ選手やフォエ選手のような悲劇のヒーローを出さないよう充分に対策を練るべきです。交通事故等も含め、Jリーガーの死亡事故など決して耳にしたくはありません。
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登録日:2007年 09月 05日 13:03:44
コメント
小谷さん、こんにちは
僕もこのニュースを見たとき、まさかと思い、唇を噛み締めてしまいました。
まさか22歳の選手が試合中に倒れ、帰らぬ人となるなんて誰が想像できたでしょうか
これは小谷さんの言うとおり、過密日程が深く関係していることは間違いないかもしれません。
ところで小谷さんは最近ケガをする選手が多いと思いませんか?
今は国際Aマッチデーが近いこともあり、各国もリーグ戦を中断をして代表戦の準備に入っています。しかしケガで代表から離脱する選手が後を断ちません。今回に限らずシーズンが始まる前後からケガ人が続出しているように感じるのです。今知っている選手で言えばエトー、プジョル、ランパード、バラック、ジェラード、ベッカム、キャンベル、トニ、ルーニー、ネヴィル、マテラッツィ、ハーグリーブス、バロシュ、ウェボ、クレスポ、ロドリゲス、そして日本の高原(高原はトレーニング中に負傷しましたが、一応付け加えておきます)などがケガをしています。
もしかしたら僕がここに上げた選手以外にもたくさんの負傷を抱える選手達がいるかもしれません。
しかしなぜこれほどのたくさんの選手が怪我をするようになったのか?これはやはり過密日程が関係しているのではないでしょうか?
欧州の各国はリーグ戦、カップ戦、チャンピオンズ・リーグ、代表戦がありこれらを一年間で、こなさなければならない尋常ではないほどの重労働です。
特にイングランドにはカーリング杯とFA杯がありますが、カップ戦が2つあることの意味は何なのだ?と疑問がわいて来ます。リーグ戦もお正月休みがイングランドにはありませんから、本当にかなり大変です。
そして日本の選手達も実はかなりの過密日程です。J1で34試合、ナビスコカップに暮れは天皇杯、チームによってはここにアジアでの戦いが加わり、更に加えて代表でのスケジュールがある。プエルタ選手を見ていると日本でもいずれそう言う選手がと演技でもない事を考えてしまいます。
とにかく今回のプエルタ選手の訃報は、決して日本にとっても他人事ではありません。
日本サッカー協会やJリーグもこの事件を真剣に受け止め、過密日程の改善や医療機関の万全などを見直す必要があると思います。
最後になりますが、今回のプエルタ選手の事故も、過密日程の問題もサッカーというスポーツが、商業優先という一つの巨大なビジネスの趣向に大きく傾いてしまった事が、招いた事故だと思います。
UEFA会長であるプラティ二もこんなことを言っています。
「サッカーは“商品”である前に“ゲーム”である。売り物である前にスポーツであり、ビジネスである前にショーなのだ。みなさんの手に、欧州サッカーの未来がある。私がサッカー界の政治とビジョンを具現化していく。私は穏やかで、自由な人間なのだ」
ぜひ小谷さんの意見をよろしくお願いします。
ボン @ 2007年 09月 06日 23:09:38
長文のご丁寧なコメントをありがとうございます。
貴殿が指摘なさっている通り、著名な選手即ち過密日程を強いられる選手(強国の代表選手)の怪我に関するニュースが後を絶ちません。
プラティニは正しいと思います。
わが友、ブレーメンのシャーフ監督も、ドイツ代表のフリンクス、ボロウスキー等主力選手の負傷に頭を痛めており、特にチャンピオンズリーグの日程が、選手に心的外的負担を強いているように思います。
チャンピオンズリーグは昔、チャンピオンズカップといって、各国のリーグチャンピオンが1カ国1チームずつ出場して、全てトーナメント方式でやっていましたから、今よりは随分負担の少ない大会だったわけです。
それが、今では3ヶ月間でプレッシャーの最もきつい試合が6つも増えるのですから、大変な負担です。
何しろチャンピオンズリーグに出場できるレベルのクラブは、その殆どが代表選手で固めていますから、益々選手の負担が重くなると言う悪循環です。
不健全な話で恐縮ですが、それらのスター選手は週休1000万円を超える報酬をもらっているので、仕方ないと言われればそれまでのことになってしまいかねません。
このたび契約を3年間延長したアーセナルのベンゲル監督の年俸が400万ポンド(9億円以上)というのにも驚いてしまいますが、監督も含め、彼等は間違いなく命を削っています。
極論を言えば、命を削っても週休1~2000万円なら良いのかということになってしまいますが、人の命はお金で買えないのですから、これだけ払えばよいだろうと言う発想は許されるものではありません。
欧州フットボール界は拝金主義にまみれてしまっているのが現状だと断言できます。
プラティニのような人物が、商業主義に毒されたフットボール界を浄化し、あるべき方向へと導いてくれるよう祈るばかりです。
ボンさん @ 2007年 09月 07日 18:14:21
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:一昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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