日本人鍼灸師、欧州フットボール界を刺す!?(3)

<サッカー 欧州選手権2008・予選>ヨアヒム・レーブ監督 アイルランド戦でフリンクスが主将を務めることを明言

【10月12日 AFP】サッカー、欧州選手権2008(Euro 2008)・グループD。
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(c)AFP

AFPBB News


 ボロウスキ選手の診療が終わると次にやってきたのはアーロン・フント選手です。
彼は、グロウインペイン(恥骨結合炎、或いは鼠径周辺部痛症候群)の手術を受けたばかりで、術後も痛みが取れないと浮かない顔で語り掛けて来ました。

 フント選手に限らず、グロウインペインの症状を訴える選手は多く、ニーメイヤー選手、フリッツ選手、ボロウスキ選手等とトップチームだけでも数名はいて、Kさんは日本人選手と比較して多すぎると驚きを隠しませんでした。

 その後Kさんがブレーメンに約2週間滞在した結果、グロウインペインはストレッチング不足と腹筋を鍛えていないことと関連があるに違いないとの見解を示したのですが、信じられないことにドイツではストレッチングの効果の有無についての大論争が巻き起こっているそうです。少なくともブレーメンの選手は練習後もストレッチングを殆どやらず、我々にとっては大きな驚きでした。

 さて、問題のフント選手はというと手術後に縫合された部位周辺を指して、つらそうに痛みを訴えます。針治療は、スポーツ外傷の場合、捻挫にせよ、筋肉の張りにせよ、或いは腱や膝の痛みにせよ、患部(痛い部分)とそこに関連する箇所に針を打つのですが、Kさんは日本のトップチームで16年間にわたって治療を続けた経験を生かし、巧みに指先で針を打つ箇所を探し出すのです。
そして、フント選手については症状自体も芳しくないけれど、手術を施した部位が癒着を起こしている可能性があることを指摘しました。勿論、Kさんは外科医ではないので、あくまでも個人的見解であり、誰かを非難する類のものではないことを前置きした上での発言です。

 いずれにしても、スポーツ外科医に求められることは適切な診断と素早い応急処置、そして手術が必要な場合はその腕前(技術)であることは間違いありません。フットボール選手は、自分で体を鍛え、技術を磨いてコンディションを整える努力は出来ても、怪我をした場合は担当医の診断と治療に身を委ねる他に道はありませんから、医者の存在は非常に大切であり、切実な問題なのです。

 今回、ヴェルダー・ブレーメンという欧州のトップチームの舞台裏のひとつである選手の治療現場に立ち会って、良いクラブを築くには良質かつ正しい医療システムの構築も大切な要素であることを痛感した次第です。

 話しを元に戻しますと、結局フント選手は、グロウインペインという厄介な症状を改善すべく手術をしたばかりですから、我々が滞在している約2週間、フィジオセラピーとともに針治療を受け続けた選手のひとりでした。

 フント選手の戦線離脱中には、ハーニック選手という彼同様のスピードタイプの若手が台頭し、心中穏やかではないのでしょうが、いつもはにかみながらも黙々と治療を受ける姿に、Kさんも何とかしてあげたいと懸命に治療を施したのであります。

 さて、我々のブレーメン滞在中に集中的に針治療を施したリハビリ組の大物といえば、ドイツ代表のダイナモ、トルステン・フリングスです。

 彼は、シーズン開幕直後の試合で右足内側靭帯を痛めてしまったのですが、Kさんの診断によれば、かなり靭帯が緩んでしまっているとのこと。彼ほどの選手ともなれば、本国で行われた2006年のワールドカップを前後して、リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグ、そしてドイツ代表としての国際試合と、ほぼ週2回のペースで試合をこなす過密日程を強いられており、靭帯の緩みはその代償なのかもしれません。

 3億円以上の年俸を獲得するブレーメンの稼ぎ頭ですから、過密日程も致し方ないのかもしれませんが、フリングス選手のようにがっちりした体格の持ち主でも、無傷ではいられないのが、世界最高峰の欧州フットボール界の現状です。

 しかし、泣き言は言っておられず、一刻も早い復帰を目指して、フリングス選手も黙々とリハビリ治療に励み、針治療も積極的に受けに来ました。靭帯の損傷にも針治療は効果が有り、痛みをとることは勿論、免疫抑揚効果が有りますから早く治るのです。

 フリングス選手に限らず、ボロウスキ選手、フリッツ選手、フント選手のリハビリ・カルテットは、Kさんの針治療の効果を体感した選手達であり、特に、チームに4人いるドイツ代表選手のうち、3人までもが2週間みっちりと針治療を受けられたことは、クラブ、選手自身、そして我々にとってもハッピーなことであったと確信する次第です。

 ところで、フリングス選手の身上は疲れを知らないハードワークですが、普段は口数の少ない物静かな人物です。暗いという印象ではないのですが、治療中は携帯からメールを打つか、新聞を読んでいるかで、無駄口を叩きません。

 ボロウスキとフリッツは、針治療や日本の事情についてあれこれと質問をしたり、冗談を言ったりしてくるのですが、フリングスに限ってはそういった行為を一切しないのです。しかし、そんなフリングスでも唯一乗ってくるテーマがあったのですが、次回はその話題と治療を受けたブレーメン全選手の症状とその人となりについて触れてみたいと思います。
(つづく)

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登録日:2007年 10月 12日 18:32:17

コメント

小谷さん、こんにちは。

小谷さんの文を読んでいると、欧州で活躍する選手達の痛々しさが伝わってきますね
しかし驚きなのが、ドイツでは一切ストレッチングを行わないという事です。

日本では運動した後のストレッチングは、もはや欠かせないものになっています。
学生の部活動の後なんかでもストレッチングをする運動部は数多く、逆にしない方が珍しいと言われるくらい日本に浸透していますから、尚更驚きですね。

ところで話は変わりますが、日本代表のエジプト戦のメンバーが発表されましたが、今回のメンバーは大久保、番戸、藤本など過去に召集された選手達が名を列ねました、しかし僕が”?”と思ってしまったのは、田中達也、田中マルクス闘莉王、佐藤寿人の名前が無かったことです。

寿人は最近ゴールから遠ざかっているので、ある程度納得できる部分はありますが、リーグでもACLでも結果を残している達也と闘莉王はなぜ見送られたのでしょう?

オシム監督は今回の浦和勢の召集に関して、ACLの過密日程の関係もあり、召集を見送る可能性もあると示唆していましたが、なぜ阿部、坪井、啓太の三人を呼び、達也、闘莉王の召集を見送ったのでしょうか?

僕は今回の浦和勢の召集に関して”なぜ”という言葉が浮かんできます。
達也と闘莉王の召集を見送り、なぜ阿部、坪井、啓太の三人を呼んだのか?どうしても答えが浮かんできません。

小谷さん、ぜひ小谷さんの考えを教えてください!よろしくお願いします。

ボン @ 2007年 10月 14日 04:12:22

ボンさん

いつもこめんとをありがとうございます。

詳しく取材をしたわけではないので断言は出来ませんが、両選手とも足首を捻挫しており、AFCチャンピオンズリーグへの配慮もあって今回は見送ったのではないでしょうか。 浦和レッズにとって、チャンピオンズリーグ制覇は悲願であり、今季の大命題でもあるので、無理をさせたくなかったオジェック監督の意見を聞き入れた格好なのだと思います。

今回のエジプト戦は個人的には非常に興味がありますが、2010年への道程という観点からすると、さほど重要な位置付けの試合ではないので、そんなに目くじらを立てるようなことではないと思います。ご納得いただけましたでしょうか?

小谷泰介 @ 2007年 10月 15日 10:41:45

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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