日本人鍼灸師、欧州フットボール界を刺す!?(7)

ブレーメン ラツィオを降しグループリーグ初勝利

【10月25日 AFP】サッカー欧州チャンピオンズリーグ2007-08(UEFA Champions League 2007-08)・グループリーグC・第3節、ヴェルダー・ブレーメン(Werder Bremen)vsラツィオ(SS Lazio)。試合はブレーメンが2-1でラツィオを破った。(c)AFP

AFPBB News


《ザノゴ(サノゴ)》

ウェルダー・ブレーメンは昨季終了後、チームの得点源であったクローゼをバイエルン・ミュンヘンに放出せざるを得なかったため、今季のプレシーズンまでに同選手に代わるストライカーを探すことが急務でした。

そこでブレーメンが白羽の矢を立てたのが、コートジボワール代表のザノゴ(母国では恐らくサノゴと発音するのでしょうが、チーム内では誰もがドイツ語風にザノゴと読んでいるので、このブログではザノゴとします。)選手で、同じドイツ北部地方のライバルであるハンブルガーSVから獲得しました。

正直、私は獲得当時「ザノゴ? 誰それ!?」と心の中で叫んだくらいで、全くと言って良いほど知らない選手でした。昨季はハンブルガーSVで30試合以上出場していますが、数ゴールしか決めておらず、点取り屋としてはフランクフルトの高原選手と比較しても見劣りする物足りない数字です。

彼にクローゼの代役が勤まるとはとても思えませんでしたが、さすがはブレーメンのスカウティング陣! 今季の開幕戦からゴールを量産し、今日までリーグ戦10試合で6ゴール、チャンピオンズリーグ3試合で2ゴールと、クローゼ顔負けの活躍ぶりを披露しています。

前回ご紹介したカルロス・アルベルト選手に関しては、今のところ高くついた買い物ということになってしまいますが、ザノゴ選手はその失敗を補って余りある活躍を見せており、
ブレーメンスカウト陣の面目躍如といったところでしょうか。

ところで、そのザノゴ選手の人となりですが、これまた他のどの選手にも引けを取らない位にナイスガイ!ブレーメンのスカウティング哲学は、技術や体力もさることながら、人格重視であることは間違いないと、今は声を大にして言えます。

我々の治療室には、確か一人でやって来たと思うのですが、外反母趾のように足の骨が出てしまっている部分の表面が痛いのだと訴えてきました。

ザノゴ選手の場合は、筋肉が殆どなく骨と皮が近い部分の炎症ですから、腱や靭帯同様に鎮痛剤を服用しなければ痛みを取り除くことは出来ません。よほど痛みがひどくない限りは我慢をして試合に臨んでいるんだとザノゴ選手が言うと、Kさんは「大丈夫、必ず良くなりますよ。」と優しく答え、患部に慎重に針を刺していきました。

骨と皮がひっついている部分なので、針を入れにくく、入れば入ったでかなりの痛みが走るのですが、顔を歪めながらも必死に痛みをこらえるザノゴ選手。やはり、症状が改善されるのなら、多少の痛みは我慢しなければということなのでしょう。良いパフォーマンスをして結果を出すためにはプロ選手も必死です。

案の定、治療後は痛みがかなり和らいだようで、ザノゴ選手は満面の笑みを湛えてお礼を述べ、以降、試合の前には必ず治療を受けに来るようになりました。

ザノゴ選手はおっとりした感じの温厚な青年ですが、決して無口というわけではなく、治療中には色々な会話を交わすことが出来ました。私は、過去にアフリカ出身の選手とあまり接点がなかったので貴重な経験となりましたが、同選手のキャリア自体、なかなかユニークなものでした。

同選手はジュニア・ユースの世代にこそ母国コートジボワールのシロコFCでプレーをしていましたが、16歳の時にはチュニジアのエスペランスへ移籍しています。アフリカでは欧州を中心としたクラブの青田買いが盛んであると聞いていますが、彼もその例外ではなかったようです。

エスペランスでゴールを量産したザノゴ選手は、UAEのアルアインFCの目に留まり、移籍を果たしますが、同クラブでは54試合に出場して43ゴールを決めるという快挙を達成しています。また、2003年にはAFC主催のアジアクラブ選手権優勝にも貢献。そして2005年にはいよいよ本場欧州へと活躍の場を移します。

そしてカイザースラウテルン、ハンブルガーSV,そしてヴェルダー・ブレーメンと1年ごとにブンデスリーガのより強いクラブへと移籍を繰り返し、今日に至っているのです。

淡々と自分のキャリアを語るザノゴ選手ですが、17歳で母国を離れ、8年後にはチャンピオンズリーグでレアル・マドリード相手にゴールを決めるところまで登りつめたのですから、立派の一言! 驕ったところなど微塵もなく、淡々とトーレーニングに精を出す姿はプロの鏡と言えるでしょう。

当たり前のことかもしれませんが、移籍先の国々の言葉を覚える努力も怠らなかったザノゴ選手は、母国の公用語であるフランス語、部族語、アラビア語、ドイツ語、そして英語を操ります。そして、それぞれの国のそれぞれのチームメートや監督としっかりコミュニケーションを取ってきたからこそ、今日があるのです。一方で西澤選手、平山選手、大久保選手、小笠原選手、梅崎選手等のように実力がありながらも海外で成功できなかった多くの日本人選手達に、少しでもザノゴ選手の覚悟とメンタリティーがあれば、もう少し違う結果が得られたのではないでしょうか。

先のチャンピオンズリーグのラツィオ戦でもゴールを挙げたザノゴ選手のサクセス・ストーリーは、まだまだ終わりそうにありません。本場の専門誌も、ザノゴ選手が同じアイボリーコースト代表のドログバ選手やトゥーレ選手と肩を並べる日は、そう遠くないかも知れないと報じています。

《アルメイダ》

さて、ザノゴ選手と共にブレーメンの攻撃陣を支えるのはウーゴ・アルメイダ選手です。

今季リーグ戦第6節のシュツットガルト戦で2ゴールを決めると、第8節のビーレフェルト戦でも2ゴールと爆発力のあるところを披露。リーグ戦で5ゴール、そしてチャンピオンズリーグで2ゴールとザノゴ同様、今シーズンはしっかりと結果を出していますが、私は内心、Kさんの針治療がアルメイダ選手の活躍に多少なりとも貢献しているのではないかと考えています。

実は同選手はシュツットガルト戦で2ゴールを決めたものの、相手から激しい反則タックルを受けて腰を強打し、途中退場を余儀なくされたのです。

その状況をつぶさに見ていたKさんは、試合後アルメイダ選手を見つけて症状を聞き出し、翌日に自分の治療室に来ることを勧めました。アルメイダ選手もKさんを見るなり、腰に手を当てて痛みを訴えるそぶりを見せ、是非ともお願いしたと一言。

翌日、Kさんがみっちりと針治療を行ったことは言うまでもありませんが、2回の治療でかなり良くなったと喜んでいました。

同選手は187センチと大柄である上に、マッチョタイプなので一見ワイルドな印象を受けますが、話す口調は穏やかで優しい目をしています。我々にも英語でしっかりと謝辞を述べ、針治療は前にも受けたことがあり、その効用は知っていることを明かしてくれました。

その後のアルメイダ選手はといえば、ポルトガル代表の試合も含めてゴールを量産することになるのですが、Kさんの打った針が起爆剤となったと考えるのは身びいき過ぎるでしょうか。

いずれにしても、アルメイダ選手とザノゴ選手には好調を維持していただき、ブレーメンのタイトル獲得に大きく貢献されんことを祈らずにはいられません。     (つづく)

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登録日:2007年 10月 26日 17:32:23

コメント

小谷さん、こんにちは。

小谷さんの文章を欠かさず読んでいますが、針治療の効果がここまで絶大であることにとても驚きました。

少し気になっていたんですが、針治療には確か針を刺すのと、針を刺してそこに軽い電流を流すといった二通りの方法があると言った話を聞いたことがあるのですが、ザノゴ選手やアルメイダ選手はどちらの方法にあてはまるのでしょうか?

あとスポーツ紙に載っていましたが、フランクフルトの高原選手がフンケル監督と衝突してしまったようです。
どうやら高原選手が「自分は左サイドでプレーできない、中央でやらせてくれ」と言ったらしいですが、フンケル監督は守備重視のプレーを考えていたため考え方の互いが発生し、この前の試合でも高原選手は出場できなかったようです。

僕が思うに高原選手の気持ちもわからなくもないのですが、やはりチームや選手を作るのは監督なわけですからここで高原選手が反発をしてもあまりメリットはないと思います。

それに最近は監督との衝突で出場機会が得られなくなった選手は少なくありません。
だから僕は少し心配です。

小谷さんはドイツにも精通していますし、詳しい事情も知っているのではないかと思います。
ぜひ小谷さんの意見を聞かせてください。

ボン @ 2007年 10月 28日 13:56:57

ボンさん

いつもコメントをありがとうございます。

私自身も、針治療がこれほどフットボールの負傷に効果的であることは、今回Kさんに同行して、初めて認識した次第です。

ブンデスリーガでプレーする一流選手達が私の目の前で異口同音に効くといったのですから、間違いありません。

さて、フランクフルトの高原選手ですが、監督に意見すると大抵の場合は、干されることになるのが常ですね。

意見の仕方にもよりますし、監督が選手に対して門戸を開いているか否かでも状況は違ってきますが、選手としては様々な不満や諸問題をぐっとこらえて、それを練習にぶつける方が賢明であると思います。

中村俊輔選手ほどの実力者だって、右サイドでプレーさせられているし、前回のように大事な試合で干されたりするわけですが、彼は監督に楯突いたりはしませんよね。

今回の高原選手の情報の信憑性がどれほどのものであるかはわかりませんが、もし事実であるとするならば、高原選手はまだ青いと言わざるを得ません。

また、ペイズリー、クライフ、レーハーゲル、カペッロ、シャーフ、シュスター等々、私が過去に身近で見た指揮官達は、絶対であり、逆らえるような雰囲気はありませんでした。

ともあれ、高原選手とフンケル監督の関係が修復され、同選手が一刻も早く戦列に復帰することを祈ります。

小谷泰介 @ 2007年 10月 29日 10:51:47

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:一昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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