日本人鍼灸師、欧州フットボール界を刺す!?(11)
【10月25日 AFP】サッカー欧州チャンピオンズリーグ2007-08(UEFA Champions League 2007-08)・グループリーグC・第3節、ヴェルダー・ブレーメン(Werder Bremen)vsラツィオ(Lazio)。試合はブレーメンが2-1でラツィオを破った。(c)AFP
《二人のトーマス》
ヴェルダー・ブレーメンのトーマス・シャーフ監督とリザーブ・チームのトーマス・ヴォルター監督とは、かれこれ知り合ってから20年以上になります。当時、シャーフ監督はまだ25歳、ヴォルター監督に至ってはまだ22歳の青年で、両者ともブレーメンの選手として1986年のジャパンカップに出場するため来日していました。
その年、彼等のチームメイトであった奥寺康彦氏は、ちょうどブレーメンを退団して古河電工に移籍することが決まっており、日本に凱旋帰国するような格好で大会に参加。その決勝戦でブレーメンはブラジルのパルメイラスを破って見事優勝し、有終の美を飾ったのです。
当時の決勝戦終了後のアルバムを見ると、若かりし日のシャーフ監督とヴォルター監督がトロフィーを掲げる奥寺選手を満面の笑みで抱え上げているスリーショットの写真があります。その行為は青年時代のシャーフ氏とヴォルター氏が、先輩格の奥寺選手に敬意を払っていたと同時に、当時はあまり多くなかった外国籍選手とも分け隔てなく接していたという証と言えるでしょう。
その時の私はというと、総勢30人以上のチームメイトのケアをしきれない奥寺氏から何人かの選手達のショッピングや観光のお手伝いを頼まれていたのですが、その中にシャーフ氏とヴォルター氏がいたのです。
シャーフ氏とヴォルター氏の二人は選手としても活躍していましたが、特に人間性が素晴らしく、自分のような者にも親しく接してくれ、帰国時には住所と電話番号を交換する仲になった次第です。
以来、私が欧州に出掛けるたびにブレーメンに立ち寄るようになり、双子のお子さんが生まれるまで滞在期間中は、いつもヴォルター氏の自宅に泊めていただいていました。
そして1992年にブレーメンがカップ・ウィナーズ・カップ決勝に進出した際には、ポルトガルのリスボンにまで出掛け、ベンゲル監督率いるASモナコを破って初の欧州タイトルを獲得する瞬間を見届けました。
試合後には選手の家族と一緒にチームバスに同乗させていただき、祝勝会に出席。なみなみとシャンパンの注がれたカップ・ウィナーズ・カップで美酒を味わう栄誉にも預かったのですが、勿論その傍らにはシャーフとヴォルターの二人のトーマスがいて、それが彼等の粋な計らいであったことは言うまでもありません。
また、シャーフ氏のブレーメンAユース監督時代には、遠い親戚で当時プロ選手になることを切望していた15歳の矢野マイケルと共に渡独し、入団テストを受けさせたこともあります。
テストの結果、シャーフ監督はマイケルがAユースの年齢に達するまでの間、自分のチームで預かることを提案し、なんと自宅にホームステイさせて無償で全ての面倒を見てくれたのです。
その後マイケルは、Jリーガーになる道を選択。念願かなってヴィッセル神戸とプロ契約を結び、水戸ホーリーホック、サガン鳥栖とチームを渡り歩きましたが、彼にとってシャーフ監督はフットボールのみならず、人生の恩師ということにもなります。
シャーフ氏はAユース監督の後、1995年にはリザーブチームの監督に昇格し、1999年には満を持してトップチームの監督に就任。その後の活躍はご存知の通りですが、正直に申し上げて当時は、彼が現在のような名監督になるとは思っていませんでした。
しかし、選手としてはブンデスリーガ優勝2回、ドイツカップ優勝2回、ドイツ・スーパーカップ優勝2回、そしてカップウィナーズカップ優勝1回と申し分のないキャリアを積み、その上に抜群の人間性の持ち主ですから、名将になる可能性を感じていたことも事実です。
以来、シャーフ監督がブレーメンを率いて今季で10シーズン目!1978年にユース選手として同クラブに入団してから実に29年間、ブレーメン一筋に生きてきたわけです。これはレベルの高い欧州のフットボール界では驚異的なことであり、契約の切れる2010年には32年目に突入しますから、ユース時代からの生え抜き人生というカテゴリーでギネスブックに載ってもおかしくはない記録ではないでしょうか。
さて、もう一人のトーマスこと、トーマス・ヴォルター氏ですが、彼もまたシャーフ氏と似たようなフットボールピープルとしての人生を歩んでいます。シャーフ氏の背中を追っているといえば嘘になりますが、大いに影響を受け、触発されて人生を歩んでいることは間違いありません。
選手時代をシャーフ氏と殆ど一緒に過ごしていますから、獲得したタイトル数も1994年のドイツ・スーパーカップが加わるだけで後はシャーフ氏と全く同じです。また、シャーフ氏はドイツのU-21代表として2試合に出場していますが、ヴォルター氏は僅か1試合ではありますが、ドイツのフル代表選手として親善試合に出場しています。
また、選手時代の晩年にはシャーフ氏同様、S級ライセンスを取得するためにケルン体育大学に足を運び、いわゆる二足の草鞋を履いていました。現役のプロ選手と学生生活を平行して行うようなものですから、なかなか大変なのですが、見事に両立を果たしたことは言うまでもありません。とにかく真面目なのです!
なお、人柄については今更述べるまでもなく、チームメイトの紹介とは言え、会って間もない東洋人のジャーナリストの卵を自宅に泊めてくれるのですから、かなり心の広い人間であることは間違いありません。
しかし、結局、二人のトーマスがここまで私に良くしてくれたのは、何と言っても紹介してくださったのが奥寺氏であったからで、改めてオクこと奥寺康彦氏には感謝です。今となっては私の掛替えのない財産となった二人のトーマスとの関係は、類は友を呼ぶではありませんが、奥寺氏という素晴らしい人間性の持ち主から始まった連鎖の輪と言えるでしょう。否、自分は素晴らしい人間性の持ち主ではないので、そのご相伴に預かっていると言った方が正確かも知れません。
また、我々の関係はあくまでも利害関係のない友人としてスタートし、今もそのスタンスは殆ど変わっていませんから、20年余を経て益々深まっているのだと思います。
さて、今回の「鍼灸プロジェクトK in Bremen」は、そんな二人のトーマスに相談することから始まりましたが、これはKさんにとってもヴェルダー・ブレーメンにとっても有益で価値的なビジネスであり、だからこそ我々を2週間も手厚く受け入れてくれたのだと信じて止みません。
おかげさまで、私個人としては、華やかな花形フットボール選手の苦悩や裏の顔に接することが出来たばかりでなく、クラブ運営の難しさ、奥深さを知ることが出来ました。
そして極めて近い将来にこのプロジェクトが成就し、新たな繋がりが加わって、二人のトーマスとのより強固な絆が築かれることを祈って止みません。
(次回からは、「日本人鍼灸師、欧州を指す!? レアル・マドリッド編」がスタートします。乞うご期待!)
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登録日:2007年 11月 22日 11:08:23
コメント
ここに書き込むのは失礼とわかりつつ
「レッズはまだ本当に良い監督とGMに巡り合っていない」
確かに、浦和は行き当たりばったりだ。
行き当たりばったりで、ACL制覇とリーグ2連覇を達成しようとしている、
この事実。
これこそが、君の憎むもの、
既成事実となる。
さらに多くの人々を魅了するには、
スペクタクルはあったほうがいい。
浦和が、本当の勝者になるためには、
更なる冒険が必要だ。
CWCの結果を待つまでもなく、
見つめ続け、声を出しつづけているものにとっては、
わかりきったことだ。
しかし、小谷君
当事者であることと、
傍観者であることの違い、
これを取り違えてはならない。
総括的な論を強く望む。
浦和 @ 2007年 11月 23日 00:59:54
浦和さん
コメントを有難うございます。
えー、まず、オシム監督緊急入院後の一連の報道に対して、私が思ったことを先週の火曜日に幾つか書き記したのですが、その中でオシム氏の後任はオジェック氏という日刊スポーツの誤報(?)に関する記述が何人かの浦和レッズサポーターを刺激する結果となりました。しかし、私の意図するところはオジェック批判でもなく、レッズ批判でもありません。そもそもが飛ばし記事である上に、オジェック氏がオシム氏と同じ路線を継承するにふさわしい指導者であるといったようないい加減な報道に対する強い憤りのコメントでした。
しかし、憤りが強く、冷静さを欠いていたため、一部の表現方法がレッズサポーターの皆さまに対しては刺激的過ぎたことは事実であり、何度か申し上げたように私の不徳の致すところです。この点に関しましては、反省至極であります。
実際、コメントを頂いた何人かの方にとっては、私がレッズ嫌いで、結果を出し続けることが憎たらしい人間だと思われているわけですから・・・。
いやあ、決してそうではないんですよ、本当に!確かに浦和レッズの今やっているフットボールのスタイルは好きではありません。(歴代の監督がやってきたフットボールが好きではないと言ったほうが良いかもしれません。)しかし、浦和レッズは本当に嫌いではありません。
ただ、私は浦和レッズほどの資金力とサポーターの力があれば、今頃5連覇を達成し、もっと早くAFCチャンピオンズリーグを制覇していなければいけないと思っているだけです。
今のレッズの戦力ならば、余程ひどい監督でない限り、リーグ制覇はできるものと確信しています。優秀な監督であれば、最終節までもつれ込ませず、とっくにリーグ優勝を決めていなければならないチームであると私は認識しています。
なぜなら、エメルソン選手に始まり、三都洲選手、ポンテ選手、ワシントン選手、闘莉王選手、阿部選手に代表されるような他のクラブでは獲得できない高額の選プレイヤーを毎年補強し、甲府の5倍、ガンバの1.5倍という強化費と豊富な資金力があるのですから・・・。
たらればの話で恐縮ですが、数年前にオシム氏やベンゲル氏がレッズの指揮を取っていればきっとそうなっていたに違いありません。そういった意味でオジェック監督は平凡な指導者だと思っています。日程がきついのは、レッズに限ったことではありません。優秀な監督であれば、選手層の厚いチームという特性をいかしてやりくりすれば良いし、もっと圧倒的な強さで勝って良いはずです。
レッズはそういうクラブでなければならないと確信しています。一歩一歩と皆さんはおっしゃいますが、クラブとは良い監督に巡り合った時に激変します。徐々にという事例は古今東西どこを探しても見当たりません(少なくとも私には)。
私はクラブ運営はビジネスですし、JリーグはMLSと違って自由競争ですから、コストパフォーマンスという概念が絶対的に評価の対象となるべだという考えの持ち主です。
私がコストパフォーマンス論を展開する際に、分かりやすいのでついレッズを引き合いに出してしまいますが、レッズよりコストパフォーマンスの低いクラブが幾つかあります。
例えば、名古屋グランパスです。ここはひどい!偶然獲得できたベンゲル以外は、優秀でない監督のオンパレードですし、使った費用の割りにタイトルが少なすぎます。レッズは遅ればせながらも、ちゃんとタイトルを獲得してきていますから・・・!
総括的な論とは程遠いコメントで恐縮ですが、真摯な意見には、返事をせねばと思い、キーボードを叩きました。
小谷泰介 @ 2007年 11月 26日 14:59:19
小谷様
コメントありがとうございます。
時間もたち、鹿島にも負け、こちらも冷静さを取り戻しつつあります。
当事者であることと、
傍観者であることの違い。
この齟齬こそが、揉め事の原因であったと思います。
売り言葉に買い言葉の不毛な争いは好きではありません。
ややもすれば暴力的な、感情的なコメントの書き込みについても、ご理解ください。
当事者とは、そういうものですから。
どこのクラブにも、、「奇特な方たち」はいます。
しかし、浦和にはそれが、実に大勢いるのです。
サポーターだけではありません。
二部に落ちてもクラブを去ることのなかった選手たち。
自らの意思でクラブを去った選手は、過去にいったい何人いたでしょう。
これは、ピッチ上の戦術とはまるで関係のない話です。
おそらくは、ビジネスともそれほど多くは重ならない話なのではないでしょうか。
結果として、実に多くのビジネスチャンスを生み出していることは間違いありませんが。
浦和は、プロでありながら、よい意味で「アマチュア」なのです。
小谷さんは、クラブの、そしてサポーターの
「アマチュア」的甘さをのみ指摘しているように思われます。
サポーターによる恫喝云々についても、
一般的に、それは誉められた行為ではありません。
しかし、極論に聞こえるかもしれませんが、
それはまるで、ピッチ上でポンテと啓太が言い争いをしているがごとく、
理解している人が多いのではないかとさえ思っています。
ところで、ギド監督就任一年目、駒場での対大分戦の無応援試合はご存知ですか?
これは、サポーター自らが行った「リアリスト宣言」であったと、
自分は理解しています。
サッカー文化は根付きつつあるように思っています。
経済的にも、自立できているように見えますし、
チームの成績もようやく追いついてきました。
これより、浦和の新しい冒険が始まります。
戦術的なアドバイスは、謹んでお受けします。
10年後の浦和を楽しみに、
当面はやはり、リアリストでありつづけるかもしれませんが。
浦和 @ 2007年 11月 28日 01:14:49
現在のレッズという素材をオシムやベンゲルが率いていた場合
今より結果が出ていたという仮定だと、いま一つ結果の出ていない
日本代表は、素材としては『日本代表<レッズ』になってしまうのでは
代表はそれこそ高額プレイヤーだらけですし…オシムが平凡な
監督という逆説も成り立つのでは?
どうもオシムの評価が過大な気がします。代表監督とクラブ監督では
ぜんぜん意味合いが違うと思いますけど、その点を加味されてますか?
仮定に仮定も何ですが @ 2007年 11月 28日 07:44:58
仮定に仮定も何ですがさん
ジーコ時代の日本代表と、まだ1年しか経っていないオシムジャパンの変化、質の違いを私は強く感じています。まさにこれからという時のアクシデントだったと落胆しています。
このブログで昨年の9月後半から連載形式で寄稿した「良い監督の条件」をアーカイブでアクセスしていただき、是非読んでみてください。読後の感想をお聞きしたいと存じます。
宜しくお願い致します!
小谷泰介 @ 2007年 11月 30日 13:03:36
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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