日本人針師、欧州フットボール界を刺す!?(12) レアル編 ①

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せっかく鍼灸用の医療機器を担いで欧州にまで足を運ぶのだから、せめて2チームは回りたいというK氏の希望に沿って、20世紀最高のクラブであるレアル・マドリッドとの交渉を始めたのが今年の9月に入ってからのこと。しかしながら、ヴェルダー・ブレーメンのようにクラブの幹部に直接話しができる友人がいないため、交渉は難航しました。

私がレアルとの交渉で頼りにしたのは、1982年のスペインW杯でオビエドの大会委員会事務局長を務めたラモンさんです。

日本贔屓だったラモンさんは、サッカーマガジンの特派員としてスペインの全開催都市を取材中の私を暖かく迎え入れてくれ、自宅にまで招いてくださったのでした。3ヶ月に及ぶ取材旅行の後半は1人旅だったので、そのホスピタリティーが殊更に嬉しかったことを思い出します。

以来、スペインに寄る度にオビエドを訪れて親交を深めてまいりましたが、そのお付き合いはブレーメンのシャーフとヴォルターの二人のトーマスよりもさらに長い四半世紀に及びます。

当時は青年弁護士だったラモンさんも、いまや初老のダンディーなおじさんとなりましたが、彼の息子でミュージシャンのナッチョもナイスガイの良き友人で、まさに家族ぐるみの付き合いを今日まで続けています。

実はこのラモンさん、大のレアル・マドリー好きで、同クラブとのパイプがあることも知っていたため、今回の案件を相談致しました。そして同郷の友人がレアルの広報宣伝担当部長を務めているため、そのルートからレアルのメディカル・スタッフにアプローチすることになったのです。

幸い離日する直前に、レアルのチーフ・ドクターであるデルコラールさんよりクラブ訪問の許可がおりてホッとはしたものの、何しろそのデルコラールさん、お会いしたことのない広報宣伝担当部長から紹介を受けた見知らぬ方ですから、一抹の不安を抱えての渡西となりました。

9月24日にブレーメンからアムステルダム経由でマドリッド入りをしましたが、トランジットを入れると8時間の長旅となってしまいました。

翌朝には早速レアルの練習場がある The city of Real Madridを訪れましたが、この施設は前会長のペレス氏が都心にあった旧練習場を高額で売却して負債を完済した上で、更に空港近くの広大な土地を購入して建設したものです。10数面のピッチにディステファノの名前を冠したスタジアム、メディカルセンター、プレスセンター等を完備した素晴らしい施設で、一般人は許可なく入場することが出来ません。

警備員のいるゲート(入り口)にてデルコラール氏の名前と日本から来た鍼灸トレーナー一行であることを伝えると、暫く無線でやり取りをした警備員が入場を許可してくれました。何しろ初訪問なので話が通っているか心配でしたが、ここはラモンさんに大いに感謝です。

メディカルセンターの受付で名前を告げると隣のプレスセンターに案内され、そこで待機する旨伝えられました。2階のテラスでは記者達がレアルの練習風景を取材していたため、一緒になって見学をすることが出来ました。

ブレーメンでは金網越しにサポーターが気軽に見学出来ますし、練習場に向かう道すがらサインをねだったり一緒に記念写真を撮ったりすることが可能ですが、レアルはトップのみならずリザーブ選手を始めとした全下部組織の選手達が下界から隔離された場所で練習を行っていて、敷居の高さを感じました。

近年、ミラン、マンU、リヴァプール等々のビッグクラブは全てサポーターから隔離された場所で練習を行っていますが、果たしてそれが本当に良いことなのかクラブ関係者は熟考する必要があるように思った次第です。

レアルの練習風景ですが、遠巻きに眺めると鮮やかな金髪のシュスター監督やグティ選手は一目で分かるものの、ラウル選手とセルヒオ・ラモス選手とイグアン選手をなかなか見分けられません。

ビッグクラブはバルサなどもそうなのですが、選手は有名無名に関わらず規律に縛られている感じがして、総じて大人しいというのが私の感想です。今回の練習見学でも、選手達が静かに黙々とトレーニングに励んでいる様子が印象的でした。

さて、そうこうしているうちにスーツ姿の大柄でスキンヘッドの紳士が我々に近づき、「あなた達が日本からいらっしゃった鍼灸師のご一行ですか?」と訪ねてきたのですが、何と刑事コジャックに良く似たその紳士こそが、レアルのチーフ・ドクターのデルコラールさんだったのです。                            (つづく)

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登録日:2007年 12月 27日 15:39:40

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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