日本人鍼灸師、欧州フットボール界を刺す!?(13) レアル編 ②
【1月14日 AFP】サッカー、07-08スペイン・リーガエスパニョーラ1部・第19節、レバンテ(Levante)vsレアル・マドリード(Real Madrid)。試合はレアル・マドリードが2-0でレバンテを降し、6連勝を飾った。(c)AFP
レアル・マドリーのチーフ・ドクター、デルコラールさんは、刑事コジャックを彷彿とさせる容貌の持ち主ですが、強面と思いきや、飛び切りの笑顔で我々を医務室へと招き入れてくださいました。
そして徐に「実は私自身、胃の具合が芳しくなくて、是非とも私に針治療を施していただきたいのです。」と切り出されたのです。
大切なメディカル・システム構築の責任者にとっては、自らが実験台となって治療法の効果を確かめることが一番手っ取り早いようで、ブレーメンのアロフスGMもご自身の右膝を診て欲しいとやってきたものです。
また、我が子を実験台にして種痘という天然痘の予防法を開発したジェンナーではありませんが、ブレーメンのチーフ・ドクターであるディマンスキーさんも、自分の秘書と娘さんに治療を施してくれと依頼してきたことを思い出しました。
そして、当のデルコラール医師はというと、胃と十二指腸との結合部分の働きが悪く、食事後暫くするとなんとも言えない不快感に襲われるとかで、そんな症状にも効果があるのかと尋ねてきました。
元来針治療は、人体のツボを針で刺激することで免疫能力や治癒力を高めるのが真髄ですから、Kさん夫妻は「勿論です!」と即答。すかさず内科治療が専門のK夫人が「胃腸等内臓の場合、打撲や捻挫といった怪我の時のような速攻性は望めませんが、必ず症状は改善されますよ。」と、治療台に上半身裸で仰向けになったデルコラールさんに針を刺して行きます。
一方、手持ち無沙汰のKさんが、傍らにいた同席の医師とトレイナーに「皆さんは、どこか悪いところはございませんか?あれば是非ともおっしゃってください!」と語りかけところ、医師のフェルナンデスさんが以前に痛めた膝が時々疼くのですがと、遠慮がちに申し出てくれたではありませんか。
Kさんはチャンス到来とばかりに、もうひとつの治療台を使ってフェルナンデスさんの膝に針を打ち始めました。常日頃、「百聞は一見に如かず!針治療は速攻性があるから、やって見せるのが一番早いんですよ。」とおっしゃっていたKさんの面目躍如といったところですが、夫婦の見事な連携プレーも見させていただいた次第です。
案の定、膝に針を打たれたフェルナンデスさんが治療後に、「あれ!?屈伸をしても膝が痛くないぞ!?」と驚嘆の声を上げ、その瞬間に治療室の空気が一変しました。
そして、同じく治療を終えたものの、今ひとつその効果を実感できなかったデルコラールさんとそのアシスタントやトレイナー達が突然何やら相談事を始めたと思いきや、今度は我々に「実は今、膝を悪くして戦線離脱をしている主力選手がいるのですが、是非その選手を見ていただけませんか。」と伝えてきたのであります!
「おい、それなら最初から、連れて来いよ!」と言いたいところですが、ここは交渉事。しかも、天下のレアル・マドリーが相手ですから、初対面で主力選手への治療を依頼されたことは万々歳と考えねばなりません。われわれも平静を装い、「勿論、結構ですよ!」と笑顔で返答を致しました。
するとトレイーが部屋を出て行き、暫くすると戻ってきて、「治療をするに際して、写真撮影はご法度であること。怪我の詳細等についてマスコミに情報を流さないことを厳守してください。」と仰々しく伝えてきました。
「承知いたしました。」と答えると、再びそのトレイナーが部屋を出て行き、今度は問題の主力選手と共にやってきたのですが、何とその人物こそはドイツ代表の名ディフェンダー、クリストフ・メッツェエルダーだったのです。
(つづく)
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登録日:2008年 01月 15日 19:33:04
コメント
小谷さん、随分ご無沙汰しています!
時々はチェックしていたのですが、レッズの件ではブログが盛り上がっていましたね。
ご丁寧にコメントへの個別対応するあたり、本当に尊敬します。
これからも理にかなった評論を楽しみにしています!
ところで、この鍼シリーズ、
なんだかすごくスケールの大きな事になっていますね。
ブレーメンでも驚いたのに、レアルまでたどりつけるなんて・・・。
個人的には鍼の知識はなかったのですが、漠然とですがその威力に驚いています。
先の高校選手権でも優勝監督がメンタルトレーニングを取り入れた事と、その重要性を
説いていました。
サッカーに限ったことではないのでしょうが、
強いチームというのは選手の技術以外にもさまざまな要素が結集しないと
成り立たないという事ですよね。
そういう意味でも浦和レッズには期待したいです!
クライフターン @ 2008年 01月 16日 16:42:31
クライフターンさん
お久しぶりです!!長い間、コメントを頂けていなかったので心配していたのですが、お元気そうで何よりです!
おっしゃる通り、チームを強くするのは総合力であり、用は人材なのです。文化としてのフットボールを愛し、理解し、それを職業と定め、その発展のために人生を捧げる覚悟を決めた人達をどれだけ集められるかが勝負です。
医師やトレーナーもその大事な人材群なのであります。
後1,2回で針シリーズは完結しますが、今後の展開に期待してください。
小谷泰介 @ 2008年 01月 16日 17:48:40
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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