岡田JAPAN、タイを下したけど今ひとつの試合内容
【2月7日 AFP】2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)・アジア3次予選・グループ2、日本vsタイ。
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(c)AFP
岡ちゃん率いる日本代表にとって大事な、大事なW杯アジア予選の初戦。
雪の舞う埼玉スタジアムで、前半だけを見れば1対1というお寒い内容でした。
しかし、後半の中頃から、自力に勝る日本がタイを圧倒し始め、ラッキーながらも大久保が動物的嗅覚とも言うべき鋭い反応を見せて勝ち越し点をゲット!その後はセットプレーから、中澤、巻の両長身選手が得意のへディングからねじ込み、4対1と突き放して完勝。
スコア的には申し分ないのですが、4点のうち3点はセットプレーから。そして、もう1点は相手のミス絡みと、流れの中から完全に相手を崩しての得点はありませんでした。
しかも、タイ代表は主力6~7名を諸事情で欠いていたうえに、降雪(タイは常夏の国です)
というハンディの中で戦ったことを考えると、今回の勝利は手放しでは喜べません。
案の定、タイはかなり引いて守備的に戦ってきましたが、練習の甲斐もなく、密集地帯での細かいパスワークが殆ど機能しなかったですし、シュートが相変わらず枠に飛びませんでした。
しかし、私は日本代表がアジア予選を突破して、本大会に駒を進めることを疑っておらず、そこで世界をアッと言わせるフットボールを展開できるかどうかという視点で岡田ジャパンを見守っている次第です。
オシム監督の時は、その比類なき指導力からして世界を驚かせてくれると確信していましたから、チーム構築の過程をじっくりと堪能しようと思っていました。しかし、岡ちゃんの場合はそうはいきません。
まず、岡ちゃん自身がどのようなフットボールを目指そうとしているのかを掴み、約1年半の道程でどのようにチームを導いていくのか、また変化させていくのかを吟味しなくてはならないと考えております。
何故なら、1998年のフランスW杯の時は、いきなりの晴れ舞台ということもあって未熟さをさらけ出しましたし、コンサドーレ札幌時代は選手に恵まれ、横浜Fマリノス時代は攻撃的というよりはリアクションフットボールを展開していたからです。相手の長所を上手く消しつつ、反撃するというか・・・。そしてマリノスの監督時代の3年目から、攻撃的に転じようとして挫折したという印象が私にはあるのです。
岡ちゃんが充電期間に何を想い、何を学んできたかを知る由もありませんが、世界をアッと言わせたいと公言している以上は、彼自身が監督としてどう変わったのかを知る必要がありますし、チームにどのような変化をもたらしたのかも精査せねばなりません。
そこで、話しをタイ戦に戻しましょう。
シーズンオフ明けという悪コンディションで選手を招集し、指揮を取ってからまだ3試合目なので、確信は持てませんが、岡ちゃんにはオシム監督と比較して、決定的に違っている点があるように思えるので、今回はその問題に触れてみたいと存じます。
始めに、私は両監督の練習を具に見ているわけではなく、経験値と予想でものを言っていることをご了承いただきたいと思いますが、一言で伝えると「岡ちゃんは代表の選手達を指導しており、オシム監督は調教している」という違いになるでしょうか。
まず、オシム監督が目指す、人もボールも動くアタッキング&ポリバレント・フットボールを具現するためには、オートマティズムといって、選手個々人がいちいち頭で考えないでも局面、局面で瞬時に反応しつつ、互いに的確なポジションを取りながらパスをもらう(或いはパスを出す)といった動作が出来るようにならなければなりません。
その動作が組み合わさり、組織的にチーム全体として連動した時に人もボールも動くフットボールが生み出されるのです。具体例で言うと、昨年のアジア杯1次リーグの対ベトナム戦で決めた中村俊輔選手のゴールに至るまでの連携プレーになるでしょうか。
得点後にオシム監督自身が身振り手振りを加え、「ああやって人もボールも動けば、点は入るんだよ!」とでも言いたげに喜びを表していたのが印象的でしたが、かなり守備的に戦っていたミヤンマーを相手に、左サイドから幾つかの変化をつけながらも、流れるように人もボールも動いての得点は見事でした。FIFAのGoal of the year に選出されても良いくらいの美しいゴールです!
一方、昨日のタイ戦を振り返ってみると、少なくともあのようなシュート・レンジでの連携プレーは殆ど見られませんでした。
何故か!?
それは、岡ちゃんが言葉で教え込んでいるからではないでしょうか。
「もっとボールを早く前線に運ぼう!! よしっ!ディフェンスラインから10秒以内にシュートに持っていこう! ピッ(笛の音)!」といった具合に。
また、「(実演しながら)ボールをもっと強く蹴って、速いパスを出そう!こんなふうに回転をかけて!」とか、「距離感を掴もう!」などときっと言っておられるのです。
その点、オシム監督は(少なくとも始めのうちは)能書きは垂れずに、何色ものビブスを用いた複雑な練習のやり方だけを伝えていたのではないでしょうか。そして選手達も言われたことをこなすのが精一杯で、これが何のための練習か充分理解せずに練習したことが多かったはずなのです。
JEF UNITED時代でも、就任時は選手達から「何でこんなに走らされるんだよ!」と悪評紛々だったというではありませんか。選手は何のために走らされなければならないのか、理解していなかったのです。ところが3ヶ月も経つと、今までとは違う自分がピッチにいて、不思議と走れる上に組織プレーも出来るようになっている・・・。
それが、オシム監督の指導の真髄なのです。
競走馬が、何故今日は追い込みをかけなければいけないのかを知っているわけがありませんが、名調教師によってレース当日には馬体が仕上がっていくように、オシム氏は千を悠に超える練習パターンを駆使して知らず知らずのうちに選手達を、人もボールも動ける組織へと変貌させていけるのです。(誤解のないように言っておきますが、オシム氏は選手達に随所、随所でオシム語録を塗しているので、馬の調教師とは明らかに一線を画しています。選手を決して馬扱いしておりません。オシムの言葉は馬耳東風とはならないのです。)
これが、オシム・マジックの種明かしであります。
その点、私が岡田JAPANの3試合を見た限りでは、選手達が岡ちゃんの前述のような言葉(指導)に捕らわれすぎていると感じてしまいす。
考えてみても下さい。いくら密集していようが、離れていようが、ボールを持っている時に「距離感」などという意識を持つことはありません。パスを出す時は、パッと見て瞬時に体が反応するものなのです。
選手には(特に日本の選手は)悲しい習性があって、試合に選出されなければなりませんから、監督の言うことは忠実に実行しようとするのですが、その弊害が今の日本代表には見え隠れ致します。例えば、距離感という言葉を妙に意識するから、肝心の密集地帯でかえってパスが通らなくなるといった感じです。
逆に、岡ちゃんの魂のこもった指導は、セットプレーのように静から動へと移行するような場合には、質の高いキックと相まって、ドンピシャリとはまることが予想され、事実、セットプレーからの得点が多いことがその証明ではないでしょうか。
冒頭でもお伝えしたように、充分な情報を収集しておらず、想像でものを言っているところが多々あるので、戯言と捕えていただいても構いませんが、万が一当たってしまっていると、南アフリカでは世界をアッと言わせることが出来なくなってしまいます。
もっとも、今回のブログが杞憂に終わるか、笑い話で終わってくれば嬉しいのですが・・・。
ところで、昨日もオシム監督が埼玉スタジアムにいらっしゃっていましたが、何を思い、何を考えて戦況を見つめていたのでしょうか・・・。是非、伺ってみたいものです!
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登録日:2008年 02月 07日 15:44:24
コメント
なるほど・・・。
素人目には以前の無駄走りが少なくなっているせいなのか、受け手がみつからずパスコースを探す選手や歩いている選手が多くなっている気がしますし、密集地帯ばかりでプレーしていてピッチを小さく使うようなサッカーという印象がしました。
密集地帯のプレーだと南米系など海外の方がうまいと思うのですが、疑問です。
それにダイナミックさがないというか・・・。
オシム監督だと密集地帯からサイドチェンジなど使い(中村憲剛選手の長短混ぜたサイドチェンジなどため息ものでした)、ピッチを広く使いフィジカルの弱さを克服していたと思いましたし、ボールキープ率の高さもすごいと感じ魅力的に感じましたが・・・。
この時期で選手のコンディションも良くないといのもあるのでしょうが(そんなこと言ってたらオシムさんに怒られるでしょうね!)、何だか代表からチーム全体の躍動感がなくなってしまった気がします。世界を驚かせるようなサッカーに繋がる気がしません。
オシムさんにどう思っているのか、また反町さんや大熊さんにも聞いてみたいです・・・。今までの彼等がオシムさんに付いていた意味がない気がしてなりません!!
(大熊さん静かになってしまいましたね・・・)
長々と素人意見ですみません。
レコバ @ 2008年 02月 07日 19:01:18
はじめまして
>昨年のアジア杯1次リーグの対ミヤンマー戦
ベトナム戦の間違いではないでしょうか?
オシム監督はどう思っているのでしょうね・・・
自分が築いていた物が違うものになってゆくさまを見るのは
悲しいことなのではないかと想像しています。
でぃんぷる @ 2008年 02月 08日 03:01:41
レコバさん
お久しぶりです。また、コメントを有難うございました。
貴殿と全く同じ印象を今のチームに対して抱いています。細かいパス回しならば、アルゼンチンや、メキシコ、そしてウルグアイの伝統ですし、コロンビア、パラグアイ、チリも負けていません。
ピッチを広く使い、長短織り交ぜたパスと、効果的なサイドチェンジ、そして高いポゼッション・・・・。これが日本の目指すべきフットボールであり、オシム監督が具現しつつあったフットボールでした。
当然のことながら岡ちゃん丸の滑り出しを見る限り、オシム丸と全く同じ航路を進んでいないようですね。
大熊さんの元気がなくなったとありますが、会社の役員人事みたいなものですから、いたし方のないところでしょうか・・・。一貫性のない協会の犠牲者なのかもしれません。
でぃんぷるさん
ご指摘有難うございます。
おっしゃる通りで、ベトナム戦の間違いでしたので訂正させていただきました。
オシム監督は壊されていくと感じているのか、それともいじられていると感じているのかは分かりませんが、色々と感想はあるのでしょうね。
オシム監督がすっかり元気になられたら、その処遇については、岡ちゃんが英断を下して下さることを期待したいです。
小谷泰介 @ 2008年 02月 08日 10:40:37
日本人ではない監督の方が日本人に合ったプレースタイルを具現化しようとし、日本人の監督の方が日本人に合わないプレースタイルを具現化しようとしている・・・矛盾を感じてしまいます。
今もなお日本のフットボールを観ている人達に考えさせ、影響を与えているオシムさんの凄さを更に実感しています。
軌道修正はないのでしょうけれど・・・。
レコバ @ 2008年 02月 09日 12:19:18
いやいやいや、ビックリというか小谷さんと同じくボクもベトナム戦2点目がオシムジャパンのベストゴールであり、日本人が世界と戦うためのゴールだと思っていました。これですよね。
http://www.jfa.or.jp/daihyo/daihyo/games/2007/afc_2007/070716/max_ani/index.html
もう、ことあるごとに貼り付けていますコノURL。2010年までにこういったゴールが自然と出てくるようになる、そう確信していました。楽しみで仕方なかった。昨年の11月までは。
突出した才能という点で各国に劣る日本のチームは、こういった形で何度も何度もチャンスを作ることでしか世界とは戦えないと思っています。
1本の奇跡的なパスや、華麗なドリブル、トリッキーなフェイント、強靭な体躯、高さや、爆発的なスピード、現在の日本はそういったもので世界と戦うことはできない。
良くも悪くも均一的な没個性集団、しかし個々の技術はそれなりのものを皆が持っている、そういう集団は、全員での連携連動プレーで相手を崩すしかない。しかし日本人の監督では難しいと感じました。セットプレーはすばらしかったですが、いかにも日本人監督が得意としそうな作戦だと思います。刻一刻と変わる戦況で個々がそれぞれ最善と思われる動きをできるようにするのがオシムの目指すところでしたが、セットプレーでの作戦は、あらかじめ決められた、用意された筋書きによるものです。流れの中では用意された筋書きはほとんど役に立たず、選手たちが初めて遭遇するシチュエーションが多いでしょう。もちろん決め付けるにはまだ時期尚早なのでしょうが、わかっていても落胆してしまったタイ戦でした。残念です。
Shar @ 2008年 02月 10日 23:11:05
レコバさん
岡ちゃんが、ショートパス戦法を意識しているのは、格下相手のチームが引いて守備的に戦うためのオプションだと思います。
しかし、主として言葉で指導してしまっているために、選手の頭と体が乖離してしまって上手く機能していないと私は判断しています。
オシムさんなら、あのベトナム戦のような動きにどんどん磨きをかけていって、違ったアプローチをしたでしょうね。
Sharさん
「1本の奇跡的なパスや、華麗なドリブル、トリッキーなフェイント、強靭な体躯、高さや爆発的なスピード、現在の日本はそういったもので世界と戦うことは出来ない。」
全くもって同感でございます!!
「良くも悪くも没個性集団。しかし、個々の技術はそれなりのものを皆が持っている。
そういう集団は、全員での連携プレーで相手を崩すしかない。」
これも、私がオシム、バビチ、ゼムノヴィッチ、シャーフ各監督から学んだ日本が世界で戦うための活路だと確信しています。
小野技術委員長以下、協会のお偉方はどのような認識を持っていらっしゃるのでしょう
か。失礼な言い方かも知れませんが、無名のSharさんでさえ、ここまで分析し、理解を深めていらっしゃるのだから、「しっかりして下さい!」と申し上げたいです。
なお、分かりやすいURLまで貼り付けていただいて、有難うございました。感謝申し上げます。
小谷泰介 @ 2008年 02月 12日 10:56:46
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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