XEROX SUPER SOCCER観戦記
【1月1日 AFP】(一部訂正)サッカー第87回天皇杯(The 87th Emperor's Cup)決勝、サンフレッチェ広島(Sanfrecce Hiroshima)vs鹿島アントラーズ(Kashima Antlers)。
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(c)AFP
先週末、Jリーグ開幕を告げるXEROX SUPER CUPが開催され、今季J2での戦いを余儀なくされているサンフレッチェ広島が、まさかの優勝を果たしました。
後半5分に野沢がクリーンシュートを突き刺し、鹿島アントラーズが2対0でリードした時点で、誰がサンフレッチェ広島の優勝を予想できたでしょうか。そういった意味では、その直後に投入された広島の久保選手の存在が、試合の流れを大きく変えた要因ではなかったかと私は考えています。
同選手は、怪我さえなければ恐ろしいほどのポテンシャルを秘めた選手だけに、J2でプレーするのはちょっともったいない感じが致します。
ところで、この試合はレッドカード3枚に、イエローカード11枚が乱れ飛ぶ荒れた内容となり、審判のジャッジが問題となった試合でもありました。
家本主審が下したジャッジのひとつひとつは、決して間違っていなかったと思います。
しかし、TVの画面越しに見ていた限りでは、家本政明主審が「私は、ちゃんと見ていましたよ!」「このケースは、絶対にやり直しなのです!」「いや、今のは絶対に(足を)引っ掛けました。私は見ていました!」と言った具合に、厳格に笛を吹くことに気を取られすぎて、試合をコントロールかつ演出していくという審判本来の使命を、おざなりにしてしまったと言わざるを得ません。
悪く言えば、重箱の隅をつつくように、どんなファウルも見逃すまいというゲシュタポかKGBまがいの特権意識、或いは権威主義に支配されていたとでも申しましょうか、選手との間に自ら溝を掘っていたように見えました。
日本人審判の悪しき傾向性が如実に出てしまったジャッジングとも言えますが、Jリーグの審判委員会は早急にこの試合での問題点を洗い出し、まもなく開幕するJリーグで荒れた試合がなくなるような処置を講じて欲しいと存じます。
しかし、この試合に於ける本当の由々しき問題は、審判のジャッジングではありません。
糾弾されるべきは、自分達に不利なジャッジに対して、いちいち審判に文句を並べて詰め寄る鹿島アントラーズの何人かの選手と、試合終了後にピッチにラ乱入した鹿島アントラーズのサポーター達であります。
私は、アントラーズを今ひとつ好きになれないのは、選手達がとにかく審判に文句を言うという一点があるからに他なりません。
チームメイトが激しいタックルを受けては、「今のはイエローでしょう!」と審判に詰め寄り、自らの反則を指摘されれば、大袈裟な仕草で「今のがファウル!?」とアピールする・・・。
思い起こしてみてもください。先の東アジア選手権の日本対中国戦では、同じ土俵では論じられない醜いジャッジの数々が、北朝鮮の主審によって下されました。
それでも、日本代表選手達が必要最低限のクレームしかつけず、自制心をもって終始試合に臨んだからこそ、勝利をもぎ取ることが出来たのです。それは忍耐の勝利と言っても良いでしょう。
XEROX SUPER CUPでの鹿島アントラーズの多くの選手達は、その間逆な対応で自らを窮地に追い込み、敗れ去ったのです。自業自得であります。
人のせいにするのは簡単。しかし、人のせいにすれば、どうしても気の緩みが生じて隙が出来るのが人情というもの。
鹿島アントラーズの多くの手達は、「今のは、ミスジャッジだから」とか、「俺は何もしていないのに・・・」とか、或いは「審判がヘボだから」といった言い訳を並べ、責任転嫁にエネルギーを注ぎ過ぎです。
それは悪しき慣習であり、私はジーコ氏の影響で広まったのではないかと考えています。
ジーコ氏が偉大な選手であったことは疑いの余地がありませんし、アントラーズを強くした最大の功労者がジーコ氏であったことも否定しません。そればかりではなく、人柄も真面目かつ誠実で、申し分ございません。
ただ、極端な負けず嫌いな性格のためか、ピッチではよく審判に食って掛かっていました。その際たる例は、’93年Jリーグチャンピオンシップでの唾吐き事件です。
あの試合で、審判が上出来であったとは言いません。しかし、だからと言って決して露骨な笛を吹いていたわけではない状況下で、ジーコ氏は自制心を失い、自滅してしました。
チーム結成間もない頃に、ジーコ氏自らがしばしばそのような行為を示してしまうと、チームでは絶大な影響力を誇っていただけに、他の選手達に伝染しても決しておかしくはありません。ジーコ氏がやっているのだから、俺達もやっていいんだと。
そのおかげで鹿島アントラーズの選手の中に、やたらに審判にクレームをつけるという悪しき慣習が広まったと私は分析しています。ジーコ氏が同クラブに残した唯一の負の遺産とも言えるでしょう。
今回のXEROX SUPER CUPでの敗戦をきっかけに、鹿島アントラーズの選手の皆さんには、どうかこの負の遺産を清算していただければと願います。
ところで、スタンドに乱入してきたサポーターの皆様。
私が言うまでもなく、あれは許される行為ではありません。サポートするどころか、仲間の足を大きく引っ張る醜態です。
アントラーズを想う気持ちは分からないではありませんが、彼らが繰り広げているのは戦争でも喧嘩でもなく、フットボールというスポーツです。そう、たかがスポーツなのです。されど、世界中の人を魅了して止まない素晴らしい文化であります。
その文化こそは、平和で安定した土壌の下でしか育まれないと言うことを、今一度御確認いただき、二度と過ちを犯されないことを強く望む次第です。
最後に今回の騒ぎに対して、良いお手本となるお話を皆様にご紹介させていただきたいと存じます。
それは、ついこの間、ドイツのブンデスリーガで起こったエピソードです。
今季のブンデスリーガ第18節で、トップと同勝点で2位に着けていたウェルダー・ブレーメンは、小野伸二選手が移籍したばかりのボーフムと対戦しました。
格下のボーフム相手に先制したものの、圧倒的に攻め込みながら追加点の奪えないブレーメンが、後半23分にまさかの失点を喫してしまいます。
しかし、そのボーフムの同点ゴールは、途中出場を果たした小野選手の折り返しをアウアー選手が押し込んで生まれたのですが、その直前の小野選手へのパスが明らかにオフサイドだったのです。
それで動転したわけではないのでしょうか、直後にブレーメンDFのナウドが悪質なファウルを見舞って一発退場となり、形勢は逆転。後半39分にはコーナーキックからボーフムのヤイア選手が頭で決めて、そのまま逃げ切りました。
ブレーメンは、ポゼッションで言えば68%対32%、枠を捉えたシュート数で20対8、そしてクロスの数で40本対15本と、圧倒的に試合を支配しながらも敗れ去ったわけですが、誤審に対して選手達が審判に食って掛かる姿は皆無でしたし、勿論、サポーターが乱入することもありませんでした。
そして試合後には、主審のミハエル・ヴェイナー氏が「通常、細かいミスジャッジに対して釈明はしないが、あの場面は(明らかにオフサイドだったので)、私がブレーメンに対し謝罪をせねばならない。」とのコメントを発表し、一件落着。
選手も、監督も、GMも、そしてサポーターも何事もなかったかのように気持ちを切り替えて、時節のアウェーのバイエルン・ミュンヘン戦に臨んだのでした。
何と申し上げればよいのでしょうか、全ての対応が大人なのですね。成熟していると言っても良いかと存じますが、まずフットボールを文化として受け入れていて、その後に愛するチーム、ブレーメンの存在があるのです!
日本には、フットボールを文化として受け入れる機会の無いまま突然Jリーグが誕生し、アントラーズやレッズ、或いはガンバ大阪等にいきなり出会ってファンになってしまい、一にも二にも我がチームという盲目的なサポーターが少なくないような気がして仕方ありません。
そういった方々は、愛するチームに対する批判は一切受け入れられず、ジャッジに対してまでも嫌悪感や過剰反応を示し、今回のような愚行に走ってしまうというのは言い過ぎでしょうか。
しかし、幕末の時代、新撰組が池田屋を襲撃していた頃、既に庶民がリーグ戦を鑑賞していた本場欧州とのフットボールという文化に対する理解度の開きは、如何ともしがたいものがあります。
先日のXEROX SUPER SOCCERを振り返った時、日本がまだまだフットボールの発展途上国であることを思い知らされる次第です。
コメント[6], トラックバック[0]
登録日:2008年 03月 06日 12:31:07
コメント
こんにちは。この試合はTVで観ました。
鹿島については、とても残念な試合だと思いました。(その後の対応含め)
2-0になった時点で、不必要な選手交代をし始め、私からは練習試合モードになっていたように見えました。
一方の広島は、(調整が万全ではないところですが)久保選手を投入し、
最後まで「勝つための試合」をしていたと思います。
1試合で結果が決まるゲームでは、試合終了まで諦めずに勝つことを考えるのがいかに大事であるか?を改めて見せられたゲームだったと感じました。
ですので、鹿島ファンの皆さんは、ジャッジにケチをつけている暇があれば、
試合の途中から「勝つこと」という焦点がブレてしまったという
「戦い方」に対してこそ糾弾が必要なのではないかと考えるところです。
KAZ-NOMURA @ 2008年 03月 07日 10:22:41
KAZ-NOMURAさん
お久しぶりです。そしてコメントを有難うございました。
いよいよ明日からJリーグが開幕致しますが、各チームがサンフレッチェ広島イレブンのような諦めない闘志を胸に、ひたむきなプレーを繰り広げてくださることを、祈って止みません。
レフェリーを取り囲んで抗議する姿よりも、プレミアシップのように多少理不尽な判定でも直ぐに切り替えて、次のプレーに入っていく選手の姿をJリーグでも見たいものです。
小谷泰介 @ 2008年 03月 07日 12:43:50
鹿島のしがない一ファンとして、偏見の目で見られているのだと、つくづく思います。
客観的なデータを調べてみました。
2007年Jリーグ
異議によるイエローカード数
鹿島 3
浦和 8
大宮 8
千葉 10
柏 7
FC東京 2
川崎 10
横浜FM 0
横浜FC 5
甲府 10
新潟 2
清水 5
磐田 6
名古屋 2
G大阪 2
神戸 4
広島 3
大分 10
鹿島だけ過去に遡ると
2006年 7
2005年 4
2004年 5
2003年 5
鹿島だけが、突出してますか?
しがない鹿ファン @ 2008年 03月 07日 23:20:35
しがない鹿ファンさん
貴重なデータとコメントを有難うございました。
しかし、頂いたデータは、執拗に抗議した時に出された警告数を表すもので、警告に値しないものは含まれていないことを申し上げねばなりません。
先のXEROX SUPER CUPでも、イエローカードこそ出されなかったものの、抗議する選手達の姿が目につきました。
確かに、鹿島だけが突出しているとは思いませんが、11冠を誇るクラブであるならば、品格も備えていただきたいと願っております。
でも、私はオリヴェイラ監督を高く評価しておりまして、開幕戦でも気持ちを切り替えて見事な横綱相撲を披露してくれました。
まだ、始まったばかりとはいえ、浦和レッズや、川崎フロンターレが不甲斐ない試合をやってしまっただけに、その強さが際立ちました。
個人的には、AFCのタイトル奪取を期待できるのは、鹿島かなと踏んでおります。監督がプチ・ターンオーバー制を上手く導入できさえすれば、最有力候補であることは、間違いありません。
遠く離れたトルコでは、ジーコ率いるフェネルバフチェも健闘していますので、共に頑張って頂きたいと願っております。
また、最後に、強い鹿島アントラーズにマリーシアは不要であることを申し添えておきたいと存じます。
小谷泰介 @ 2008年 03月 10日 10:45:54
はじめまして。本文と関係なくてすみません。
昨日、モバイル浦議を何気なく見ていたら小谷さんのブログの話題がでていたので、初めて拝見させて頂きました。
もうご存知かと思いますが、先日のマリノスとの開幕戦の内容と、試合後の監督のコメントにファンやサポーターは『怒り』と『悲しみ』を感じています。
昨年は就任1年目という事やACLやCWC出場など初めての事も多く、不甲斐ない試合をしても次の試合では何とかしてくれるんじゃないかとか、来シーズンは4バックで攻撃的なサッカーを見せてくれると信じていたのに、今年はいざ蓋を開けてみると・・・。
昨年と同じ守備重視、攻撃は個人任せ、負けているのに交代枠を残す、そして最後は言い訳と、昨年末のオジェック監督分析で小谷さんが心配なさっていた通りになっていますね。
新聞などでは『次の名古屋戦の結果次第では進退問題に発展する』とか、『連敗したくらいで監督交代していたら何人いても足りないと藤口社長が発言した』など次の試合を見てから判断するみたいな空気ですが、
『全治6週間』の発言が出た時点でクビなんじゃないんでしょうか?
一昨年の横浜FCの例もあるように、早めに修正していけばまだ間に合うとおもいます。
オジェックはベッケンバウワ―の推薦らしいいのクビにしにくい事もあるでしょうが、サポーターのためにチームを強くするという事を第一に考えた監督選考をしてほしいです。
感情的になってしまい、まとまりの無い文章になってしまい申し訳ありません。
よこしん @ 2008年 03月 11日 10:17:16
よこしんさん
コメントを有難うございます。
レッズサポーターの皆様の悲痛な叫びを代弁なさっているように感じた次第ですが、本来ならば、昨年の時点で(と言うかそれよりももっと早い段階で)オジェック氏の采配や監督としての能力を、見極めていなければならないはずです。
昨季の終盤で、なすすべもなく鹿島に世紀の大逆転優勝を達成させてしまった時点で、見切りが付けられないのは、危機管理能力が欠如していると私は感じていました。
チームの広報活動や営業戦略は見事なだけに、惜しまれます。最も、以前も申し上げたように、これでレッズに良い監督が就任したら、鬼に金棒、手が付けられない存在になってしまうでしょう。
小谷泰介 @ 2008年 03月 11日 10:52:02
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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