シャーフ監督はスピード狂!?

ブレーメン カールスルーエと引き分ける

【4月27日 AFP】07-08ドイツ・ブンデスリーガ1部・第30節、カールスルーエSC(Karlsruher SC)vsヴェルダー・ブレーメン(Werder Bremen)。試合は3-3の引き分けに終わった。(c)AFP

AFPBB News


前回、友人であるシャーフ監督の話題に触れましたので、もうひとつ、同監督のエピソードをお伝えすることに致しましょう。

今回の中東及び欧州旅行では、モンテネグロ共和国の首都であるポドゴリツァからブレーメンに向かったのですが、直行便が飛んでいない為、ウィーン経由でハンブルグを目指すことになりました。

ブレーメンとHSVの対戦がNORTH DERBYと謳われる位ですから、ハンブルグとブレーメンの両都市間は車でも列車でも1時間とちょっとと、そんなに離れてはいません。

いつもなら、列車に揺られてブレーメン駅まで行くのですが、シャーフ氏(私は、トーマスと呼んでいるので、以下トーマスとさせていただきます)が、是非ハンブルグ空港まで迎えに行ってやると言い張るので、お言葉に甘えることにしました。

最近は、すっかり大監督の仲間入りをしてしまったトーマスなので、私ごときの迎えにわざわざ車を1時間も飛ばさせるのは気が引けるのですが、古い付き合いを特に大事にするトーマスは、昔のままの感覚で接してくれるのです。

有名になったり、大金を手にしたりすると、豹変する輩が多いのが世の常ですが、トーマスはその対極にいて、我が友ながら尊敬に値する人物であります。

しかし、そんな素晴らしい人格と、監督としての名声を持ち合わせているトーマスにも、う~んと首を傾げたくなることが、ひとつだけあります。そうなんです!何を隠そう、彼はとんでもないスピード狂なのです!!

彼と初めてドライブをしたのが、確か1990年の冬だったと記憶しているのですが、雪道を運転しながら、「僕はスピードを出すのが大好きなんだけど、子供の姿を見たら、すぐさま減速するんだ」と、当たり前すぎるほど当たり前のことを真顔で語りかけてくるのでした。

「僕なら、子供に限らず、人を見たら減速するけどね」と私が答えたかどうかは覚えていませんが、市街地を飛ばす必要など全くないし、変なことを言うものだとその時は思った次第です。

しかし、その謎が解けたのは、数年後の春のことでした。

選手兼トップチーム・コーチ兼ユースチーム監督を掛け持ちするという多忙な日々を送っていたトーマスに誘われて、彼が指揮をするユースチームのアウェーゲームを見に行った日のことです。

さほど遠い所ではなく、アウトバーンで50分ちょっとのドライブだったのですが、その道すがら「今からちょっと飛ばすよ!」と、いきなりアクセルを踏み込み、瞬く間に時速は200キロを超え、240キロに到達しました。

それまでの人生で、180キロくらいのスピードしか経験のなかった私は、もう顔面蒼白です。

200キロを超えると、前方の視野が急に狭くなり、回りの景色が見えなくなるということは聞いていたのですが、まさにその通り!映画のSTAR WARSに登場する宇宙船のワープさながらといった感じで、私の体は硬直し、無意識のうちに足を踏ん張っていました。

ニヤニヤと笑うトーマスの顔が悪魔に見えたとは言いませんが、「何なんだよ、この人は!?」と、我が目を疑った次第です。

まず、幾らアウトバーンが速度無制限だからといって、何故そんなにスピードを出す必要があるのか。また、何故危険度の増すことを好んでしなければならないのか、私にはさっぱり理解できませんでした。

しかし、世の中にはトーマスのようにスピードを出すことによって、快感を得たり、或いはストレスを発散させる人種がいることに気付くには、そう時間は掛かりませんでした。

「そうか、トーマスはスピード狂なんだ!」と。

ストレスを解消するには、人それぞれ色々な方法があるわけですが、監督という過酷な職業に就いているトーマスにとっては、友人と食事をしたり、ドライブでスピードを出すことが、その解消法ということなのです。

別に制限速度のない道路をかっ飛ばすわけですから、法律違反を犯しているわけではありませんし、何をとやかく言われる筋合いはないのですが、その時は「俺を巻き添えにしないでよ!」とだけ言いたい気分でした。

そして、話はハンブルグ空港に戻りますが、我々をわざわざ出迎えてくれた大監督は、ブレーメンに向かう道すがら、「この間、新車で320キロを出したよ」と自慢げに語りかけてくるではありませんか!

また、「最近はアウトバーンも規制が入る時間帯や区間があるので、気をつけないとね。」と解説を加えてくれます。

「気をつけないといけないのは、スピードを出している時のあなたでしょ」と言いたかったのですが、何年経っても変わらないなあと思わず苦笑してしまいました。

さて、繰り返しになりますが、フットボールクラブの監督、それも強豪チームの監督ともなると、日々相当な重圧と戦わねばならず、間違いなくストレスの溜まる仕事です。

ファーガソン、ベンゲル、シャーフといった監督は、そんなクラブの監督を10年以上務めているのですから、それだけでも尊敬に値します。

しかし、各監督は必ず自分なりのストレスの発散方法を持っていて、シャーフ監督の場合はドライブ、それも猛スピードでぶっ飛ばすことがストレス解消法の一つに違いないと、私は読んでいる次第です。

かつてリヴァプールの黄金時代を築いた故ペイズリー監督は、大の競馬好きで、案の定、試合後にレースの結果が知りたくてアンフィールドの選手用ラウンジでそわそわしている様子を見せていましたし、「伝書鳩を飼っているんだが、鳩はかわいいもんだよ!」と満面の笑みで語ってくれたのを思い出します。

また、友人のバビチ監督は、一人部屋を薄暗くしてクラッシックを聞くと心が落ち着くと離してくれました。

そして、2000年に清水エスパルスを躍進させたゼムノヴィッチ監督は大の温泉好きで、暇を見つけては、友人や家族と温泉めぐりをしていましたっけ・・・。

そのように考えて行くと、ストレス発散法を会得していることも、良い監督の条件になるのかもしれません。

コメント[2], トラックバック[0]
登録日:2008年 05月 30日 19:53:34

コメント

いくら速度無制限でも240キロはきついですね(笑)

しかも320キロなんて、ぶつかりでもしたら間違いなく車はバラバラになってしまいますよ。小谷さんも命がけでシャーフさんの車に乗っていたんですね。

でも小谷さんの記事を見る限りでは、シャーフさんは人間的にも素晴らしい人だと思いますし、もしこの人が日本代表を率いていたらどんなサッカーをするのだろうと勝手な妄想を膨らませています(笑)

しかし話は変わりますが、岡田日本代表は前途多難な状況ですね。高原が不調でメンバーから外れたら、今度は大久保が練習から離脱ですからね、FW陣の手薄は痛すぎますよ。

巻や矢野も相変わらず不調から抜け出せないし、元気なFWが玉田だけしかいないというのも厳しすぎます。

この前のキリン杯を見ていても岡田さんが言う「俺流」の意図が何だかよくわからなかったし、オマーン戦って本当に大丈夫なのでしょうか?

もしオマーン戦でFW陣が奮起できなかったら、最後の手段として闘莉王をFWで使うというウルトラCを発動させた方がいいかもしれません。

ボン @ 2008年 05月 31日 14:33:07

ボンさん

いつも、コメントを有難うございます。

今の日本代表は、選手のポテンシャルどんな監督でも、アジア予選は突破できるでしょう。何度も申し上げますが、肝心なことは本大会でどれだけ世界をあっと言わすことが出来るかです。

昨日のような個人技に頼った攻撃は、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、スペイン、イングランド、ポルトガルといった強豪国相手に通用するとは全く思いません。

私には2010年の結末が見えてしまって、面白くないのです。

小谷泰介 @ 2008年 06月 03日 13:25:01

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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