サポーター問題を考える(1)

死亡事件の影響を受けスタディオ・オリンピコ周辺で暴動

【11月12日 AFP】(一部更新)現地11日にサポーター同士の衝突に介入した警察の誤射によりラツィオ(Lazio)サポーターの1人が死亡した影響を受け、ローマのスタディオ・オリンピコ(Olympic stadium)周辺ではサポーターと警察による衝突が起きた。
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(c)AFP/Gregorie Lemarchand

AFPBB News


いやはや、またしても長らくご無沙汰してしまい、誠に申し訳ございません。

今月の9日より20日まで、2009台北デフリンピック(ろう者のオリンピック)の予選大会取材等のためにタイのバンコクに出掛けていたので、ブログを更新することができなかった次第です。

炎天下のバンコクで、ろう者のフットボール日本代表チームがデフリンピック出場をかけて熱戦を繰り広げたのですが、苦しみながらも見事に出場権を獲得。その模様は近日発売のサッカーダイジェストの46ページと47ページに掲載されますので、ご一読いただければ幸いです。合わせて当ブログのアーカイブ、本年2月掲載の「がんばれ!ろう者の日本代表」シリーズをお読みいただければ、更にろう者日本代表のことをご理解いただけるかと存じます。

さて、世界的にはEURO2008の話題で持ちきりなのですが、日本ではW杯アジア3次予選の最終戦が残されていて、バーレーンのゲームプラン通りに進んでいた試合をプライドを賭けて最後まで諦めなかった日本が勝利を手繰り寄せ、1位通過を果たしました。

しかし、最終予選では、どこもバーレーンよりは実力の上回った国々ばかりが相手ですから、今の戦術で大丈夫なのかと一抹の不安を覚えます。よしんば2010年W杯の切符を手にしたところで、本大会でのグループリーグ突破は夢のまた夢と言わざるを得ないのが、現状だと思います。

岡田ジャパンのことは、いずれまたじっくりと述べさせて頂くとして、今日は予てからの懸案であったサポーター問題について触れてみたいと思います。

そうなのです。5月17日に埼玉スタジアムでガンバ大阪と浦和レッズのサポーターが小競り合いを起こし、負傷者を出した上に、結果的にガンバのサポーターが3時間半ほど場外に出られなくなる事態等が発生した件について、まだ自論を展開しておりませんでした。

また、グラサポさんや、いつもコメントをお寄せいただいているボンさんからも、私の意見を聞かせて欲しいというコメントを頂きっ放しでしたので、お応えしたいと存じます。

まず、多くの皆様と同じように私もあの事件を知ったときには暗く悲しい気持ちになりました。
起こってはいけない事件だと思いますし、Jリーグをはじめ、各Jクラブ運営者は二度と同様の事件が起きないように、心して予防対応策を練って実践していただかねばなりません。

なお、その対応策としては今月20日になって、Jリーグは主催者であった浦和レッズに2千万円、そしてガンバ大阪に対しては1千万円の制裁金を科し、ガンバ大阪は挑発行為をした1グループ60人に対して、横断幕の掲出や拡声器使用の禁止を含む応援活動を停止する旨の通告を出しました。

そして、翌21日にガンバ大阪は、レッズのサポーター席に水風船を投げ込んだ2人を特定し、永久入場禁止処分を科したと発表。更に、クラブ側は処分を受けた2人が所属するサポーターグループと話し合い、該当グループの解散を決定しました。また、別の1グループが、不祥事の責任の一端を担ったとして自主解散することになりました。

また、今後ガンバ大阪は「登録サポーター制度」を見直し、グループ全員の名簿提出の義務化などを導入することになるようです。

これらの対応や処遇に関しては概ね正しいと思われるのですが、如何せん制裁金や事件を引き起こした人物の処遇についての決定が遅すぎます。本場の欧州で起きた事件ならば、1週間以内で全てが決定するはずで、いくら国内で前代未聞の事件とは言え、今回の対応はあまりに遅いと言わざるを得ません。

ともあれ、このような事件が何故起きてしまったのかと言えば、ひとえに危機管理意識の欠如ということになるのではないでしょうか。主催者側からすると、ここまでの騒ぎになるとは思ってみなかったようですが、平和ボケの日本だから仕方がないでは済まされないことであり、日本のフットボール会場周辺から絶対に死者を出さないためにも、各J関連組織は襟を正していただきたいものです。

フットボールという文化が国民に浸透すればするほど色々な人達が、フットボールに関わってくることを意味するわけですから、秋葉原の殺傷事件ではないですが、あのようなケースがスタンドでも起こりうる位の用心は必要だと思います。

いやな話ではありますが、アルゼンチンなどでは、スタジアム周辺での殺傷事件が現在でも後を絶たず、安全になったと言われるプレミアリーグのですら、長期にわたる数々の悲惨な死傷事件を経て、今日の安全確保の制度を確立させたのです。従って、日本でも現実を直視し、ここは悲観主義に徹する位の心構えで有効な予防策を立てるに越したことはありません。

ところで、「いやな臭いは元から絶たなきゃ駄目!」ではありませんが、何故このような信じがたい事件をサポーターが起こしてしまうのかを、ここはじっくり検証してみたいと思います。そこを解明せずしてどんな対策を練ろうと、根本的な問題解決にならないと思うからです。

そう、危機管理意識の欠如が今回の事件を引き起こした2次的要因であるならば、水風船を投げ込んだり、それが子供に当たったからといって柵を破壊してまで報復を行ったりという心理状態こそが、第1次的、否、根本的要因であることは明白なのです。

私は予てより、一部のJサポーターの言動や行動を見ていて、「浦和レッズこそ全て!」或いは「ガンバ大阪命!」といった自分の応援するクラブの前に何も存在しないかのような心理状況は、如何なものかと考えていました。盲目的な愛とでも言ったらよいのでしょうか、「自分の応援するクラブの対戦相手は敵」、「自分の応援するクラブの批判をする人物も敵」といった心理状況のことであります。

フットボールは、人類が創造した紛れもない偉大な文化ですが、Jのクラブチームなどは、たかだか15年の歴史しかない発展途上の存在であって完全であるはずもなく、それ故に今回の危機管理意識の欠如、そして間抜けな監督選びや選手獲得といった過ちを起こすのです。もっと言うと、強化管理費をめぐって汚職や賄賂が横行しているのです。

フットボールの歴史や、フットボールという競技そのものに慣れ親しんでいれば、クラブチームはあくまでもフットボールをより身近に楽しむための対象であって、命を賭けるほどの存在ではなく、負けたからとか、悔しいから、或いは挑発されたからといって逆上し、暴力沙汰を起こす類のものではないことは、理解出来るはずです。

FIFAが20世紀最高のクラブに選出したレアル・マドリッドでさえ、フットボールの前にはちっぽけな存在であり、私に言わせていただければ、湯水のように金を使って選手を獲得し、銀河系軍団などと謳われながら3年もの間、タイトルをひとつも取れなかった情けない歴史を持つクラブです。

いずれにしましても、「フットボールの前にクラブチームなし」、この認識が出来ていない人達の中に、今回のような事件を起こす輩が存在するのではないかと私は思っています。

(つづく)

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登録日:2008年 06月 23日 14:20:29

コメント

小谷さん

お久しぶりです。
バンコクでのろう者の日本代表の取材、ご苦労様でした。

バンコクに行かれたとお聞きしましたので、最終予選を前にした岡田ジャパンのスカウティングチームのスタッフとして召集されたのでは? と勝手に妄想しておりました。^^

6月はサッカーファンにとっては嬉しい悲鳴をあげる月になりましたが、特に文章で御意見を発信をされている方達にとっては、マスカットの灼熱地獄やバンコクの高温多湿地獄にも劣らない過酷な状況であるとお察しします。

同時進行でユーロの選評をするのは勿論無理でしょうが、今大会がもたらしたトレンドや数多の名将達に対する監督観について、お時間が許せばコラムをお願いしますね。

個人的には考察を深めてきたレーブやブリュックナーに対してお伺いできれば嬉しいです。^^

プーアール @ 2008年 06月 25日 11:44:22

プーアールさん

コメントを有難うございました。

EURO2008もいよいよ決勝を残すのみとなりましたが、ドイツとスペインという過去の大きな大会で対戦したことのない強豪国同士の対決は、さぞや見応えのある試合となることでしょう。

私の予想(本命ポルトガル、大穴クロアチア)は見事にはずれ、優勝はドイツとグループリーグの途中から宣言していた息子に鼻で笑われています。

レーブやブリュックナーについては、正直分かりません。ただ、ヒディングさんだけは、間違いなく凄い監督ですね!誰でも分かることですが・・・。

小谷泰介 @ 2008年 06月 27日 21:01:40

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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