釜本さんが泣いている・・・(2)
中田英寿氏が開催のエキシビションマッチ 2-2のドローに終わる
【6月7日 AFP】サッカー元日本代表の中田英寿(Hidetoshi Nakata)氏が呼びかけたエキシビションマッチ「プラス・ワン・フットボール・マッチ(+1 FOOTBALL MATCH)」が7日、開催された。試合は2-2の引き分けに終わった。(c)AFP
私がティーンエイジャーだった頃、日本を代表するフットボール選手は何と言っても釜本邦茂さんでした。今をときめく中村俊輔のような中盤のテクニシャンでもなく、Jリーグ開幕前後に日本のフットボール界を牽引したキング・カズ(三浦知良選手)のようなシャドウ・ストライカーでもない、堂々たる体躯の典型的なストライカーでした。
当時のポジションでは、センターフォワードといって、ポスト・プレイヤー(ターゲットマン)、ドリブラー、そして点取り屋の3つをこなす攻撃の柱であり、一昔前のフットボールとはいえ、それはそれは頼もしい存在だったのです。
日本代表でも、所属クラブのヤンマー・ディーゼル(セレッソ大阪の前身)でも、彼にボールが渡ると、ピッチのみならずスタジアムの空気が一瞬にして変わるのが分かるほど存在感のある選手でした。
「何かをやってくれそう!」という期待を抱かせるだけではなく、実際に期待に沿う活躍をしてくれる、つまり欲しい時にきっちりと点を取ってくれる存在であったわけです。
日本リーグでは常に得点王争いを演じて7度も得点王を獲得。リーグ通算251試合で202ゴール、日本代表でも国際Aマッチ76試合に出場して75ゴールを記録するなど、今では考えられないような数字を残しており、実際に抜群の得点能力を誇っていました。
皆さんにとっては、Jリーグの草創期にガンバ大阪を率いた偉そうなおっさん、或いは極最近では中田英寿さんが主催したFOOTBALL PLUS ONEで、JAPAN STARSの監督を務めながらも、試合終盤にピッチに立ってしまった目立ちたがり屋のおじさんといった印象しかないかも知れませんが、日本が生んだ不世出のストライカーであることは疑いようのない事実であります。
世が世なら、バルセロナや、バイエルン・ミュンヘン、或いはレアル・マドリッドでチームの得点王に成り得た選手だったかも知れません。
さて、その釜本さんが、先頃行われた川渕キャプテンの退任に伴う協会人事の刷新で、事実上お役御免の名誉副会長職に退かれました。いや、退かされましたと言うのが正解でしょう。
その原因は、一昨年の野村副会長(当時)の二階級降格人事ついて、川渕キャプテンに質問をしたからと言われていますが、事実関係はどうあれ、一時は次期会長候補とも言われていただけに、ご本人としては残念至極といった心境に違いありません。。
いつも丁寧なメールを寄せてくださっているボンさんが、今回の新会長就任を巡る裏舞台を克明にレポートした六川氏のコラムを是非読むようにと薦めて下さいましたが、今更ながらに川淵氏の晩年は、老醜とも呼べる言動が目立ち過ぎたように思います。自分の方針に意見するものは排除するといった独裁性もさることながら、日本フットボール界の象徴ともいうべき代表チームの強化を、自信の思いつきや保身のために妨げてしまった罪はあまりに大きいと考える次第です。
しかし、どんな理由があったにせよ、今回の新会長誕生の人事に関しては、現在ある選択肢の中では最良ではなかったかと私は考えています。結果オーライということであります。
その理由は、以下の通りです。
(1)浦和レッズ社長時代に於ける経営手腕が秀逸であったこと。
(2)選手として日本の最高峰リーグでの出場経験があり、ビジネスマンとしても大企業に於いて海外で実績を残してきたバランスの取れた人材であること。
(3)メキシコ五輪銅メダル組に代表される従来の守旧派とは一線を画す存在であること。
(4)サラリーマン時代に欧州での勤務が長く、本場のフットボールを熟知していること。
反対に懸念されることも列記しておきましょう。
(1)川淵氏の推薦が決定的要因と言われている中、傀儡政権に陥る可能性が否定できない。
(2)Jリーグ専務理事時代に、川崎フロンターレがAFC出場等による過密日程からくる主力選手の体力消耗を懸念して取ったメンバー変更に対して、激怒するなどの近視眼的言動があった。
(3)IOC, FIFAとのパイプが細い。(※しかし、これは欧州三菱自動車取締役社長時代に培った国際ビジネス感覚を持ってすればハンディにはならないと考えられる。)
以上ですが、泣いても笑っても既に犬飼新会長は誕生してしまっているのですから、私としては期待を持って見守りたいと存じます。
ただ、何故犬飼氏でなければならなかったのか、また、犬飼氏自身がこれからどこへ舵を取ろうとしているのかが、就任会見の席上ではぼやけていたのはいただけません。もっとも、川渕氏の突然ともいえる推薦を受けての就任ですから、犬飼氏も目立った行動は取りたくなかったのかもしれません。
しかし、トップに立たれたからには遠慮なく、しかし私心を捨て、身を粉にして日本フットボール界の改革をどんどんと推し進めていただきたいと存じます。そして、次期会長には、是非若い人材を登用すべく、田嶋専務理事を筆頭にした後継者の育成も行っていただきたいと願う次第です。
話は釜本さんに戻りますが、日本が生んだ不世出のストライカーとしては、このまま名誉職にとどまられて孝行翁に徹せられるのが賢明かと存じます。何故ならば、既に充分過ぎるほど選手として貢献なさっており、引退後に何をなされても霞んでしまい、現役時代のイメージを損ないかねない出来事もこれまでに見受けられたからです。
私の少年時代に於いて、貴殿は正真正銘のスーパーヒーローでした。ストライカーとしての傑出した能力は言うまでもなく、ある日の日韓定期戦でクライフのようなポジションを取られ、正にクライフ張りの活躍をされて韓国を4対1で粉砕された姿も素敵でした。
個人的には、もう20年近く昔になるのでしょうか・・・。西京極競技場で行われた京都招待で、京都選抜OB対THE ミイラの前座試合にTHEミイラの助っ人として参加してくださり、試合前の控え室で「このパンツは小さいなぁ!」とルックスにこだわりを見せられたお姿は忘れられません。結局、PUMAのスタッフに頼んでXXOサイズのパンツに着替えてピッチに立たれたわけですが、スーパースターはナルシストでなければならないのだと悟りました。
その試合で私は、釜本さんにアシストをすることが出来、フットボール競技人生最大の思い出のひとつとなっています。
今回の一連の新会長就任狂想曲では、苦汁を舐められたのかも知れませんが、釜本さんの打ち立てた金字塔は燦然と輝き、その記録と共に後世に語り継がれることは間違いありません。
私も目撃者として、かつてこんなに凄いストライカーが日本にも存在したことを語り抜いてまいります。
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登録日:2008年 07月 18日 17:42:52
コメント
小谷さんブログをアップしていただきありがとうございます(^^)
これから協会がどう変わっていくのか犬飼さんの腕の見せ所ですね。彼にはビジネスマンとしての腕も高いですから川渕さんよりは大いに期待したいと思います。
ただしもう川淵政権のような独裁協会はまっぴらゴメンです!
犬飼さんも独裁政権に溺れないよう祈るばかりです。
ところで話は変わりますがYAHOOの検索で、クロアチア・サッカーニューススポーツナビ+と入力して検索してみてください、すぐに見つける事ができます。
そのサイトはクロアチアの首都ザグレブ在住の長束 恭行(ながつか・やすゆき)さんという方が運営しているサイトなのですが、7月14日の記事にオシムさんのインタビュー記事が掲載されています。
最近日本にはオシムさんのニュースがありませんから、ある意味オシムさんの現状を知ることができる貴重な情報源だと思います。
まぁ僕がここで詳細を述べてもあれなので、小谷さんの目でぜひ直接見てほしいです
よんだらまた感想をお聞かせください。
ボン @ 2008年 07月 19日 03:48:54
ボンさん
コメントへの返礼が遅くなってしまい、申しわけありません。
長束さんのブログは拝見しました。クロアチア及び旧ユーゴ諸国の情報を現地に根を張って取材をしていらっしゃるだけあって、興味深いものでした。
私は、オシムさんには健康を取り戻していただき、少なくともJの舞台に戻ってきていただきたいと願っている人間の一人ですが、世界をアッと言わす夢の続きを2010年以降から、また見させて欲しいものです。
年齢的なものや、健康面の不安はありますが、高齢に関しては、1982年にイタリアを世界一に導いたべアルゾット監督や、オランダ代表のリヌス・ミケルス監督の例もあるので、ご本人が望むなら是非、現場に復帰していただきたいと存じます。
2010年のW杯は、行けたとしても結果が見えてしまって、私個人としては殆ど興味がございません。行けるかどうかという観点では、関心がありますけれど・・・。
小谷 @ 2008年 07月 28日 12:22:48
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)、『来日サポーターPERFECT図鑑』(東邦出版)などがある。
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