2008年シーズンを振り返って(2)
【1月1日 AFP】日産自動車(Nissan Motor)は、経済危機への対策として経費削減が求められるなか、Jリーグの横浜F・マリノス(Yokohama F Marinos)への出資比率の引き下げを検討している。
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(c)AFP
厳しい寒さが続いておりますが、ストーブリーグと称されるシーズンオフの話題くらいは、ホットであって欲しいと願っています。
さて、昨年暮れに「2008年シーズンを振り返って」と題し、リーグ戦で1位から7位までのチームの総評を掲載させていただきましたが、今回はその続編として、強豪ながらまさかの8位、9位という不本意な成績に終わった昨季のガンバ大阪と、横浜マリノスの戦いぶりと今後について、私見を述べさせて頂きたいと存じます。
昨季の開幕前に、あのガンバ大阪が、リーグ戦で8位に沈むと予想した専門家は(私も含め)存在しなかったと思いますが、今となってみればその低迷の最大要因がバレーの移籍であったことは誰の目にも明らかです。
ガンバ大阪は、バレーが中東に電撃移籍するまで優勝を狙える位置をキープしていましたが、その後は過密日程の影響をもろに被ったことも相まって、ズルズルと順位を落としていきました。
バレーという選手は、大宮時代こそ本当に荒削りでしたが、甲府に移籍したころから急速に成長し、同クラブの社長に「うちがJ1でやれたのは、バレー(がいたから)ですよ」と言わしめるほどの存在感を示す選手となりました。
そしてガンバ大阪に移籍してからも、攻撃の核としての存在感は圧倒的だっただけに、シーズン途中での電撃移籍はチームに深刻なダメージを与えました。バレーが簡単に代えのきく選手ではなかっただけに、この不測の事態は致し方のない面はあったとは言え、怪我による離脱等が付き物なのがリーグ戦です。今後は、一人の選手に頼り過ぎないバランスのとれたチーム作りと選手補強が課題でしょう。
しかし、今オフの移籍動向を見る限り、しっかりとその対策はなされているようで、後は、遠藤選手、山口選手、明神選手、橋本選手といったベテランの主力選手達が引退した暁の世代交代をいかにスムーズに行えるかが、このチームの今後の最大のテーマであることは間違いありません。
西野監督が、世界の名将と謳われるファーガソン監督やべンゲル監督のような長期政権を確立できるJリーグ初の監督になれるかどうかは、その点にかかっていると思います。
それにしても、終わってみればアジア王者のタイトルを含む2冠獲得ですから、西野采配には脱帽と申し上げておきましょう。
さて、下剋上の2008年シーズンのサプライズはまだまだあり、それはリーグ2位の高収入を誇る横浜マリノスが降格争いに加わり、最後は持ち直したとは言え、9位という不甲斐無い成績を収めたことです。
直接的要因は、外国籍選手獲得の失敗に尽きますが、それにしても一時はチーム史上ワーストの6連敗を喫し、6節にもわたって16位に沈むという時期があったのは、途中解任された桑原監督とその彼を選んだフロントの責任と言われても仕方がありません。
しかし、木村監督就任以降は、選手間の競争意識をモチベーションに、戦術面ではハードワークと攻守の狙い目を徹底して、見事にリカバリーしました。
そういった意味で木村監督は、指導者としてはなかなかの人材かもしれませんし今後に期待したいのですが、シーズン終了後、チームに激震が走りました。
そう、ご存じのように世界的金融恐慌の影響が世界の自動車産業界を直撃し、ほぼマリノスの単独株主と言ってよかった日産自動車が、大量保有株式を地元企業と横浜市を対象に売りに出したい意向を発表したのです。
これは、いかにJリーグの掲げる地元密着という理念がお題目に過ぎず、まだまだ企業スポーツの域を出ていなかったかの典型的事例であり、J2に降格したヴェルディ東京もその同類であります。そして今後、YAMAHAが親会社のジュビロ磐田や、TOYOTAが母体の名古屋グランパス、HITACHI が大株主の柏レイソルといったチームがそれに続かないという保証はどこにもないのです。不況の中、勝ち組かと目されるPANASONICが大株主のガンバ大阪とて、その例外とは言い切れません。
但し、救いは、昨季の総収入(約22億円)が浦和レッズの強化管理費(約28億円)よりはるかに少ない大分トリニータという清貧クラブが、ナビスコ杯優勝とリーグ戦4位の成績を収めたことにより、大金に頼らずとも、良い監督とトップ、そしてGM以下のスタッフに恵まれれば、タイトルが取れることを満天下に示してくれたことです。
何故ならば、横浜マリノスでも現行収入(約50億円)の半分以下で、今季よりはるかに良い成績を収められる、そしてタイトルも取れる可能性があることを大分トリニータが証明したからです。
また、浦和レッズが親会社ともいえる三菱自動車の営業成績に左右されない確固たる(ぶっちぎりの)経営基盤を既に築いていることも、非常に意義深く価値のあることと言えます。
何故なら、三菱自動車が全ての株式を売却するとアナウンスしても、浦和レッズという魅力溢れる優良企業を手に入れたいと考える投資家や企業が見つかるからです。これは、レッズの犬飼元社長と強化管理以外のスタッフの大きな功績でしょう。
そうなのです。このような不況下にあり、足もとが揺らぐクラブが出てきても、「大分トリニータを見よ!」「浦和レッズを見よ!」と言えることは、実に頼もしい、ありがたいことだと私は思います。
同じような環境や条件下に置かれているように見える企業でも、トップやスタッフの出来や働き具合によって、大きな開きが出るのは商売の常ですが、Jリーグというマーケットにあって、正に消費者であるサポーターの皆様が、コストパフォーマンスといった概念や、安くても良い商品を提供しているかどうかという意識を、もう少し抱いて我がクラブを見つめていただければ幸いに存じます。もちろん、高級品であっても品質を維持し、ブランド力さえ高めれば、顧客が付いてくるという事実も忘れてはなりませんが・・・。 (つづく)
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登録日:2009年 01月 13日 17:17:50
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:一昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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