日本対オーストラリア戦、その結果理由

<06サッカーW杯>日本vsオーストラリア - ドイツ

【カイザースラウテルン/ドイツ 12日 AFP BB】06サッカーW杯・グループリーグF・初戦、日本vsオーストラリア。試合は前半26分に中村俊輔(Shunsuke Nakamura)のゴールで日本が先制するも、試合終盤にオーストラリアに3得点を奪われて逆転を許し、1-3で初戦を落とした。写真はドリブルするオーストラリアFWジョン・アロイジ(John Aloisi)。(c)AFP/SHINYA HAGA

AFPBB News


案の定、日本は予選ラウンドの初戦でオーストラリアに大逆転負け!この4年間やるべきことをやっていれば勝てる相手に、完敗を喫してしまいました。現地まで、はるばるやってきた多勢のサポーターの落胆する姿を目の当たりにして、気の毒としか言いようがありませんでした。日本のフットボール界が、協会が、メディアが、もっと成熟していたら、“落胆”が“歓喜”へと変わっていたはずです。

 
それはさて置き、何故私が日本はオーストラリアに勝てないと断言出来たのか。(私は、ジーコ監督の就任が発表された段階で、2006年ワールドカップの予選リーグ突破は200%無いと公言していました。そして最近では、オーストラリア、クロアチアは日本より強い、勝てないぞ!と)。それは、私が日本の戦力と他のライバル国の実力を比較する際に、正しい物差しを持っていたからに過ぎません。では、その物差しとなる代表チーム同士の対戦を分析する際の私流の4つの基軸をご紹介致しましょう。

1番目は、それぞれ代表する国々のフットボールの歴史と伝統、そして国民性です。例えばフットボールの母国イングランドは、日本国で新撰組が池田屋を襲撃していた頃、すでに協会が設立され、人々はフットボールという競技に慣れ親しんでいました。こういった国はポイントが高い。サッカー王国という名を欲しいままにするブラジルも同様です。さらに勤勉実直、勇猛果敢といった国民性や、農耕、狩猟、山岳、騎馬、遊牧といった民族的な歴史を踏まえた特性を知ることも必要となります。

2番目は、現指導者の実力です。これはワールドカップが23人という数の選手で構成される団体スポーツであり、とりわけコーチングの質がチームの勝敗を大きく左右するからです。ワールドカップの優勝国の歴史は、名将の武勇伝とも言えるのです。

3番目は、選手の実力とコンディションも含めた現有戦力です。いくら前評判が高くても、負傷者が多かったり、アフリカ勢のように協会内にトラブルを抱えていれば選手のモチベーションが低下し、実力そのものも低下せざるを得ません。

4番目は、それぞれの対戦国の相性です。ジャンケンのグー、チョキ、パーではありませんが、例えば、イングランドはスウェーデンに何十年間も勝てなかったり、テクニックを誇るフランスは、何故かフィジカルと組織力を重視するドイツに勝てなかったりします。あのブラジルも、近年はノルウェーを大の苦手としているのです。そして日本代表も高さとフィジカルとを強調する国々を苦手とする傾向があります。もっとも、相性に関してはあまり気にし過ぎる必要はありませんが、頭の片隅には置いておく必要があると言ったところでしょうか。

そして、これらの基軸を元に冷静沈着に分析をし、もしそのライバルとホーム&アウェーで5回ずつ対戦したら何勝何敗何分けになるかを、はじき出すのです。5勝以上出来る相手なら楽観できますし、2勝以下なら負けを覚悟せねばなりません。私は過去にこの方法で、結果とぶれない予想を立てることによって、フットボールジャーナリストとしての地位を築いてきました。では、この方法でいかに対オーストラリア戦を分析したか(今となってはむなしい作業ですが・・・)今一度、振り返ってみたいと思います。

まず、オーストラリアはフットボール大国ではありませんが、歴史上、その実力において常に日本をリードしてきた国とみるべきです。民族的にオーストラリア人は2000万人しかいないにもかかわらず、スポーツの世界では秀でた存在であり、ラグビーとクリケットでは常に世界のトップクラス。水泳や陸上でも過去に傑出した選手を何人も輩出しています。

サッカーは4番手、5番手のスポーツですが、代表のレギュラークラスは、常に世界の最高峰のリーグでレギュラーを張っています。昨日の対日本戦でもビドゥカはプレミアリーグ上位クラブ、そして今季UEFA杯の決勝まで駒を進めたミドルスブラのバリバリのエースです。大事な試合で何点もゴールを決めてきた世界有数のストライカーなのです。高原は、日本人としては最高のストライカーですが、ブンデスリーガでレギュラーの地位を築けていませんから、ビドゥカと比較すれば間違いなく格下です。

その他にもブレッシアーノ、シュワルツアー、エマートン、ケーヒル、ニール、ムーアといった選手達は世界最高峰のリーグでバリバリのレギュラーです。日本代表で、それに該当する選手はセルティックの中村選手のみ…(松井選手は選にもれてしまいましたから)。

つまり、オーストラリアのトップクラスの選手は殆ど欧州の舞台で活躍する強者であり、同じ欧州に7~8人を送り込んでも殆どがレギュラーの座を掴めないでいる日本人選手とは違うのです。他の多くの解説者の方々が、そんなオーストラリアに対してどうして勝てるなどと言えるのか、私は不思議でなりません。

次に、監督を比較してみましょう。ズバリ、ヒディングが大学教授だとしたら、ジーコは家庭教師のアルバイトをする大学生でしかありません。ジーコは偉大なフットボール選手でしたし、人間的にも尊敬できる人物ですが、監督としてのレベルはその程度だと言うことを日本のメディアは黙殺してきました。この点については、日本代表の予選ラウンド敗退が決まった後にゆっくり解説させていただきたいと思いますが、ヒディングが現在世界の5本の指に入る名将であることは、今さら私が説明するまでもなく、割愛させていただきます。

現有勢力の分析については前述の通りですが、日本代表に関して、今回の編成は間違いなく日本のフットボール史上最高のタレントが揃っていることを強調せねばなりません。

世界のトップレベルで実績を築いてきた中田英寿は別格としても、高原、小野、稲本、中村俊輔らは1999年のワールドユースで準優勝を果たしたチームの主力であり、現代表は、特に中盤は人材の宝庫と呼ぶにふさわしいチームなのです。しかもその世代が最も油に乗った時期を迎えている…。4年間、良い指導者の下でじっくり鍛えれば、世界をアッと言わすことが出来たはずなのですが、ジーコを監督に選んだことで自らその道を閉ざしてしまったのです。「あ~、何ともったいない!!」

今後、日本のサッカー界にこれだけのタレントが揃うのは何年後かを考えると、思わずタメ息が出てしまいます。

最後に、日豪両国の相性ですが、対戦成績をみると近年は日本が圧倒しております。多くの評論家の方が、オーストラリアに勝てる根拠をこのデータに頼っていたのかも知れませんが、それは大きな過ちです。何故なら、オーストラリアは平均して1年に1、2度しかベスト・メンバーを揃えられないからです。

それは、地理的な問題が大きく、シーズン中に欧州から片道30時間近くをかけて本国まで帰ってきて代表の試合に出場し、トンボ返りすることが物理的に不可能だからです。つまり、通常のオーストラリア代表は国内組の2軍であって、キリンカップやコンフェデ杯で日本が勝ってきたオーストラリアは最強チームではなかったのです。従って、オーストラリアだけに関しては相性を計算に入れてはいけません。
 
さて、これらの情報を下に私の最終的な判断は、現在の日本代表はオーストラリア代表と10回対戦して2~3勝しかできず、6回は負けてしまう相手だと言うことです。従って今回はオーストラリアに勝てないと言わざるを得なかったのです。

この方法で皆さまに是非次戦のクロアチア戦を分析していただきたいと思います。私は、残念ながら2勝3分け5敗となり、オーストラリア戦同様、日本はクロアチアに勝てないということになります。誠に残念ではありますが…。

コメント[3], トラックバック[3]
登録日:2006年 06月 14日 16:14:10

コメント

すごい分析力。
それも総ておっしゃる通り。
マスコミのタブーに触れたブログだ!
みんなわかってて言えなかったことばかり、すっきりしたけど時既に遅し。
マスコミも取り上げられないよなあ。
宝島あたりチャレンジする気ないかね?

イエローカードコレクター @ 2006年 06月 15日 22:49:05

どうしてこんなに悲観的になるのでしょうか。
世の中は机上の計算だけでは終わらないことだらけです。
人生、楽しいですか?

まさし @ 2006年 06月 16日 23:05:42

イエローカードコレクターさん
時すでに遅し。その通りなのです!
フリッツ・ワルタースタジアムの多くの日本人サポーターが気の毒でなりませんでした。あと、選手たちも・・・・。
でも、遅くっても気付いたその日から、行動するしか方法はないのです。川渕キャプテン気付いてくださってるかしら。

まさしさん
僭越ですが、30年間日本と世界のフットボールを見てきた人ならば、導き出せる当たり前の分析だと思っています。
もちろん、机上の計算だけでは、導き出せないものはあります!マイアミの奇跡に目撃した時などは、震えがとまりませんでした。でも、結局、日本は予選リーグを突破できませんでしたね。サッカーの神様は公平で、その国の総合力にふさわしい結果しか与えてくれないのです。
ちなみに、私は超楽観主義者です。

小谷泰介 @ 2006年 06月 22日 22:27:54

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誤審!?

これは、誤審でないと信じたい!

date:2006年 06月 15日 19:52:07

誤審!!!

今、日本中で話題になってるけど、これってその決定的瞬間ですよね! Yahooのニュース内でも、話題になってます。 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/sports/group_f/?1150322063

date:2006年 06月 15日 19:51:54

AFPブログが好きになった。

プロ野球ファンになる、サッカーのファンになる理由は、人それぞれだろう。 オフィシャルサイトを頂いている私が言うのもなんですが、今日、少しAFPブログが好きになった。 理由は、

date:2006年 06月 15日 15:26:14

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:一昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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