イタリア対オーストラリア戦観戦記
【カイザースラウテルン/ドイツ 26日 AFP】06サッカーW杯・決勝トーナメント1回戦、イタリアvsオーストラリア。試合は後半終了直前に得たPKをフランチェスコ・トッティ(Francesco Totti)がキッチリと決めたイタリアが1-0で勝利を収め、2大会振りの準々決勝進出を決めた。(c)AFP
いやー奥の深い試合を堪能しました!昨日の戦争のようなポルトガル対オランダ戦とはまた違った死闘を、イタリアとオーストラリアの両チームは繰り広げ、感動を与えてくれました。
それにつけても、ワールドカップはつくづく伝統の重みと申しましょうか、優勝経験の有無の差が、いかに大切かを思い知らされた一戦でした。
前半は中盤を相手に支配させながらも、いざ攻撃となると幾度となくゴール前で決定機会を作ったイタリアのペース。
後半は、開始5分でマテラッツィがまさかの一発退場となり、10人となったイタリアがカテナチオの本領を発揮する反面、数と運動量に勝るオーストラリアが一方的に試合を支配する展開となりました。
ここで注目すべきは、名将ヒディングの采配でした。
圧倒的に優位な展開になっても、イタリアと言う国を熟知し、伝統の力を尊重するヒディングは強気の姿勢を貫くことをしなかったのです。
そう、失うものは何もないはずのオーストラリア、ブラジルやクロアチアといった強国に対しても攻撃的姿勢を崩さなかったオーストラリアが、明らかに無理をしない戦術をとったのです。
それは、後半に入っても交代要員をなかなか投入しなかったことや、サイド攻撃に徹して強引な中央突破がほとんどなかったことを鑑みれば否定し難いことです。
あの名将ヒディングが、明らかに延長戦を意識する戦術を取ったのです。イタリアの守備は固いから、数的不利と暑さから来る疲労がイタリア代表を襲う延長戦の30分間に勝負を賭けようと思ったに違いありません。残り2枚のカードは延長戦で切って、1点を取りに行くぞと!
しかし、これは今大会のオーストラリアが標榜するフットボールではありませんでした。例え相手がイタリアだろうが、ドイツだろうが数的優位ともなれば、カウンターを恐れずにがんがん攻めるのが、オーストラリアのスタイルであるはずです。そう、オーストラリア代表にふさわしい言葉は、”BRAVE”(勇敢)であるにもかかわらず、ヒディングは慎重策を選択してしまったのです。
フットボールの神様は、そこを見逃してくれませんでした。なんとロスタイム終了直前に左サイドを果敢に駆け上がったグロッソが一人を交わして、なおもペナルティエリア内に突進!そこで二ールと交錯し、なんと判定はPK!!
あの主審の判定に異を唱える人は多いと思いますし、私も疑問がないわけではありません。
しかし、フットボールの神様が、主審に笛を吹かせ、交代出場の悩める王子トッティにその劇的なドラマに終止符を打つ役割を与えたとしか思えませんでした。
確かにオーストラリア代表とサポーターには気の毒でしたし、延長戦でヒディングがどうイタリアを料理するのかをこの目で見たい気もしました。でも、ああ、これでいいんだと瞬時に思えた次第です。
それにしても、なんと言うイタリアのしたたかさよ!おお、カテナチオの威力よ!そして、伝統の力よ!!
イタリアにしか許されない勝ち方です。イタリアにしかできない芸当です!
そしてヒディングに勝るとも劣らない、マルチェロ・リッピも名将であることを再認識させられた試合でもありました。
ダンディズムを追求するかのような風貌もさることながら、劇的な幕切れに際しても、さして興奮せずに淡々と選手を労うリッピ監督の姿にしびれてしまいました。イヤー、マイッタ、マイッタ。
そして、ブルーはサムライのためではなく、まさにアズーリことイタリア代表のためにあることをいまさらながら思い知らされたのでした。
6月27日
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登録日:2006年 06月 27日 23:59:49
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- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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