だから、オシムで大丈夫!- 私の監督論(1)
フットボールの世界に於いて、強いチームを作る為に、また魅力的なチームを作る為に一番大切なものは何でしょう。
スター選手ですか?!
いやいや、昨季までのレアル・マドリーを見れば、そうではないと言わざるを得ませんね。ジダン、ベッカム、ロナウド、ラウル、ロベルト・カルロス、ロビーニョ、そしてかつてはオーウェン、フィーゴ等、銀河系軍団などともてはやされましたが、3シーズンに渡ってひとつもタイトルを獲得出来ないという醜態をさらしています。昨年の夏にはコンディション不良のまま来日して、当時J1最下位争いをしていたヴェルディ東京に0対3で敗れたりもしました。
スター選手ばかりを集めれば良いというものではない典型的な見本ですね。
では、一番大切なものとは?!
そう、監督です。
代表レベルであろうと、クラブ・レベルであろうと、例え10歳以下のチームであろうと、良いチームを作るのに一番重要なことは、良い監督と巡り会うことなのです。それを否定できる人はいないはずです。
確かにフットボールは野球や、アメリカン・フットボール、バスケット、そしてバレーボールなどと違って、試合が始まってしまえば監督がハーフタイムまでは試合を止めることができません。
そして、試合の流れを変える作業は、3枚しかない交代要員のカードを切ることでしか出来ず、監督は、基本的にピッチに選手を送り出したらあとは彼らを信じるしかないのです。
また、野球やアメリカン・フットボールは、局面、局面での選択肢の数がほぼ決まっていて、監督がその中からチョイスして試合の中で指示を出しますが、フットボールの場合は、リスタートの場合でも無限のパターンがあり、試合中はこれまたほとんどの選手の判断に委ねなければなりません。
そう、フットボールの試合中、監督はある意味、無力でさえあるのです。それは、練習で積み上げてきた戦術や選手に教え込んだ心技体しかピッチ上で表現できないからです。
しかし裏を返せば、それは監督の力量が試合を大きく左右することを意味し、フットボールにおける監督の重要性を説いているに他なりません。フットボールに限らず、あらゆるスポーツにおいて指導者の存在は重要ですが、特にフットボールは指導者の影響が大きいと私は強く確信する次第です。
では、その根拠を出来る限り論理的に述べていくことにいたしましょう。
まず、私自身が次元は低いもののフットボール選手として実際に体験したことから述べさせていただきたいと思います。
私は12歳から中学の部活でフットボールを始め、大学では主に東都リーグ一部で、社会人では東京都一部リーグでプレーした経験があるのですが、常に何かを学び、経験することによって選手として成長してきたつもりです。また、自慢話になってしまうかもしれませんが、30歳を過ぎて、現役を引退してからは芸能人・文化人チームTHE ミイラの主力選手として、日本リーグ監督選抜や、京都選抜OB、広島選抜OBなどを相手にゴールを決めてきました。クライフ、リトバルスキー、エメルソン・レオンと一緒にプレーをした経験もあり、杉山隆一さんのアシストでゴールを決めたことがあるのと、釜本邦茂さんにアシストをしたことがあるのが競技生活での誇りです。(おい、自慢話そのものやんけ!)
そんな私ですが幼い頃は、当時のダイヤモンド・サッカーで見たジョージ・ベストやアラン・ヒントンなどのプレーを真似したり、学校の上級生のプレーを間近にみて、後はそれを個人で反復練習をしたり、といったことで技術的に上達していきました。
しかし、中学3年生の夏合宿のことでした。その辺のただのフットボール少年であった私が現Jリーグ・マッチコミッサリー、そして、中京大学体育学部助教授であり、当時JSL2部の甲府クラブの主力選手であった滝弘之氏を臨時コーチとして迎えることが出来たときに、衝撃に近い経験をしたのです。
当時は、セルジオ越後氏も日本におらず、滝氏のような卓越した個人技と実績と人格の持ち主から指導を受けること自体が極めて貴重でしたから、当然のことかもしれませんが、スポンジが水を吸い込むように教わったことを吸収する自分がいたことをはっきりと思い出せるのです。
また、滝先生には学習院中学との練習試合に同行いただいたのですが、真夏の炎天下での苦しい試合中に、彼の存在と発する指示が大きな支えであり、モチベーションとなっていたことも鮮明に覚えています。このように滝先生との一週間の合宿はそれは充実しており、大きく成長した自分を実感することができました。
つまり、私自身15歳直前の出来事ではありますが、いかに選手にとって指導者が大切であるかと言う原体験を持っているのです。これは、フットボールをある程度のレベルでやってこられた方なら、わかっていただけることではないかと思います。
(つづく)
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登録日:2006年 06月 30日 23:27:03
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- プロフィール
- 小谷泰介
- (著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)
1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。
著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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