準決勝を振り返って

<06サッカーW杯>ドイツvsアルゼンチン - ドイツ

【ベルリン/ドイツ 30日 AFP】06サッカーW杯・準々決勝、ドイツvsアルゼンチン。試合は1-1のまま延長戦でも決着が付かず決着はPK戦までもつれ、アルゼンチンが2-4で敗れて準々決勝敗退に終わった。(c)AFP/OLIVER LANG

AFPBB News


いや~、やっと本当にやっとと言う感じでベスト4が出揃いました!何しろ、イタリア対ウクライナ戦を除いてはいずれも実力伯仲の大接戦!!手に汗握る中身の濃い試合を30時間以内に3試合も見させられたのですから、くたびれました。従ってやっとという言葉が冒頭、口をついて出てきてしまったのです。

それでは、早速、各試合を準を負って振り返ってみることに致しましょう。

 
■ドイツ対アルゼンチン

120分の死闘の末、地元開催国のドイツがPK戦を制してベスト4一番乗りを果たした試合。

いろいろと分析は出来ますが、ドイツにはあのカーンを抑えてレギュラーを勝ち取ったレーマンと言う千両役者がいて、アルゼンチンには彼を超える存在となる役者がいなかった・・・、ただそれだけの差が勝敗を分けたような気がします。

ご存知のように、クリスマン監督就任以降、ドイツ代表は正GKの座をカーンとレーマンが争うという時期が続きました。厳密に言うと、クリスマンがドイツの顔でもあり、不動のGKであったカーンをその座から降ろして、レーマンに代えるタイミングを探していたわけですが、ドイツ国内を二分して喧々諤々と、メディアで、また国民の間で、繰り広げられました。

そして、クリスマン監督は白熱の論争が代表チームに悪影響を及ぼすことを嫌い、比較的早い時にレーマンを正GKにすると発表。ドイツ国内は、蜂の巣をつついたような騒ぎとなりました。しかし、大方の予想に反して、カーンが自分の控えのGKとしてドイツ代表のために貢献したいと発言し、自体がやっと終息したのです。

そんな伏線がある中でのPK戦。静かに出番を待つレーマンに、カーンが歩みより、笑顔で励ましの言葉をかけて最後にがっちり握手。なんとも映画のワンシーンのような光景でしたが、この時点で勝負あり!という感じでした。

そして案の定、そのレーマンが見事に2本のPKを止めて、ドイツに勝利をもたらしたのです。

細かい分析をすれば、アルゼンチンがあまりに早く守備的シフトに入り過ぎて、メッシやアイマールといった攻撃的選手を投入する機会を逸してしまったことやドイツの信じられないような同点弾は、同じブレーメンで息の合った二人(ボロウスキーとクローゼ)の合作によるものであり、クリスマンの選手交代が冴えていたこと、そしてなんといってもドイツの圧倒的なホームゲームであったことなどなど幾つかの要因が挙げられます。

しかし、私がドイツの一流紙のキャップであったなら「だから、レーマン!!」とか「正しかったユルゲンの選択!」あるいは、「カーンの後押しを受け、レーマン百人力!!」といった大見出しを絶対に書くでしょう。

決して、華麗さはないのですが強い精神力と団結力で勝ち進んでいくドイツ。同じ敗戦国同士のナショナルチームでも、この差がどうしてできてしまったのか、検証に値するテーマかもしれません。

後は、クローゼが第2のゲルト・ミュラーに化けつつあり、準決勝、あるいは決勝の彼のプレーは要注目です。

なお、残念なこととしては、試合終了後両国の選手間で乱闘寸前の騒ぎがありました。真相は、ドイツの選手が相手の失敗を喜び過ぎたり、過度のパフォーマンスをしたことに対して、アルゼンチンの選手が激昂したということのようです。見応えのある一戦を台無しにしかねない失態であり、相手方に反省を求めたいと思います。

■イタリア対ウクライナ

ウクライナの勝利を信じる人が何人いたかは知る由もありませんが、準々決勝の中では唯一、落ち着いてみていられる試合でした。

私には、ウクライナ・サッカー協会事務局長のヴァシリ・バビチュク氏を始め、ウクライナ人の親友かが何人かいて、ウクライナを応援していましたが、今大会のイタリアが標榜するアタッキング・フットボールをかなぐり捨てて、カテナチオのスタイルを取った時点で勝負ありでした。

ウクライナは、見事なくらいそのカテナチオの罠にはまって桜のように美しく散っていったと言う感じです。

しかし、ウクライナの健闘は賞賛に値するもので、初戦でスペインに0対4で大敗したにもかかわらず、そのショックを引きずることなく格下から同等と見られていたサウジアラビア戦、チュニジア戦をがっちりとしたものにして予選ラウンド突破!そして、決勝ラウンド1回戦で、フランスを押さえて1位通過したスイスをPK戦ながらも破ったのは見事と言う他ありません。

やはり、ディナモ・キエフという伝統ある世界基準のクラブを抱えている国だけのことはあります。

また、シェバンとシェフチェンコが万全のコンディションだったらと思いますが、例えそうであったとしても、イタリアの壁は破れなかったでしょう。

有史以来、人種的に生粋のイタリア人だけで独自のスタイルを確立し、そのカテナチオという戦術を芸術の域まで高めたアズーリ。見事と言う他ありません!国内で発生している大問題がイレブンの結束を高めていると言う見方もできますが、そのユニフォームの色である地中海ブルーが紺碧の海原のごとく美しい輝きを放ち始めました。

■イングランド対ポルトガル

後半17分に貴重なストライカーであるルーニーを退場で失いながらも、約60分にわたって猛攻撃をプランどおりに凌いだイングランド代表には酷な言い方かもしれませんが、PKが下手過ぎです!

これでイングランドはここ一番のPK戦には勝てないという風評が確固たるものになってしまっただけでなく、今後のスリーライオンズに大きな足かせがはめられた日でもありました。

あのランパードも、ジェラードも、ける前から心の動揺が顔に出ていました。ポルトガルの最後のキッカーとなったクリスチャーノ・ロナウドの自信に満ちた顔と比較してみてください。PK戦は最終的にはいかに精神面が大事かがよーくわかるというものです。

技術的には、もっとキーパーを見切ってから蹴れよとイングランド勢に言いたいですが、後の祭りです。これから一体何年の間、同代表チームがPK戦には勝てないと言う呪縛に苦しまなければならないのかと思うと、イングランド贔屓としては憂鬱になってしまいます。

かつて、同代表にはフィル・ニールというPKスペシャリストがいたわけですから、次期監督は彼の指導の元に一度真剣なPK合宿をはり、主要な大会の直前合宿でも最後は必ずPK練習で終える位のことをしないと立ち直れないでしょう。そのコーチに、フィル・ニールがだめなら、ヴァンフォーレ甲府の林健太郎選手でもいいと思います。

とまあ、ジャーナリスティックとは程遠いイングランド・ファンの嘆き節となってしまいましたが、お許しください。

ところでこの一戦、最後のPK戦を除けばイングランドの強固なディフェンスは称賛に値します。

全員が良く動いて、テクニシャン揃いのポルトガルに攻めさせながら、ほとんど決定的チャンスを作らせませんでした。

ジョン・テリーとリオ・ファーディナンドという2枚のセンターバックの存在がその礎となっており、彼らは正に思い通りに試合を無失点で乗り切ったのです。だからこそ、敗戦後にテリーは涙を浮かべ、ファーディナンドにいたっては人目も憚らずに号泣したのです。また、それは彼が、いつもサインに書き添える大好きな言葉である"Nice One!"が一転して"WORST ONE!"になってしまった瞬間でもありました。リオとは一度切りとはいえ、カラオケを一緒に熱唱した仲だけに、胸が痛んだ次第です。

しかし、ディフェンス面は確かにすばらしいイングランドですが、優勝にふさわしいチームかと言えば、攻撃陣のコンディションが悪すぎました。

マラドーナ張りのふてぶてしさと突破力を持つルーニーが骨折から復帰したばかり。そしてエースのオーウェンも万全の状態からは程遠かったとなれば、準々決勝敗退も致し方ないかなといったところです。

また、エリクソン監督の采配にも疑問が残ります。これはギャンブルだと言って苦しい台所事情の中、あえて17歳のウォルコットを選んでおきながら、全く使わなかったのは解せません。

そして、最後に1998年大会の決勝ラウンド1回戦で若きベッカムが退場を喰らっているにも関わらず、8年後の準々決勝でまた退場者を出し、同じようにPK戦で敗れ去ってしまうあたり、頭を使えよと言わざるを得ません。まあ、結局イングランドに関しては嘆き節でしかないということです。

一方のポルトガル代表ですが、今回のような状況下でデコが出場していたらPK戦まで縺れ込まなかったかもしれません。デコという中盤の要を欠きながらも、イングランドを退けた同代表を私は過小評価していました。

そして、クリスチャーノ・ロナウドが抜群です。負傷直後の試合ですが、120分のみならず、PK戦終了まで輝くオーラを放っていました。ドイツのクローゼ並みの存在感でした。まだ、21歳ですから、フィーゴ勇退後のポルトガル代表は彼が背負って立つのでしょう。

フィーゴ、デコ、マニシェ、そしてそのロナウドらを軸に悲願の優勝成るのか?!1998年のフランスについで、8番目の優勝国の栄誉を勝ち取れるのか大いに注目したいと思います。

ちなみにこの試合に関しては、私がダイヤモンドサッカーの影響などで、イングランド贔屓なため、分析も片寄っていることをお許しいただきたいと存じます。

■ブラジル対フランス
やはり、ブラジルは躓いてしまいました。ブラジルは1966年大会といい、1982年大会といい、下馬評が高いと往々にして優勝できないのです。

それにしても、イングランドがPK下手すぎなら、ブラジルは走らなさ過ぎです。テクニシャンや能力の高い選手が多く、1対1の局面でほとんど負けないために「あいつが何とかしてくれる」という慢心が起きてこのチームの運動量を少ないものにしてしまいました。

私は、予選ラウンドを見て、わざとセーブしているのかと思っていたのですが、ちょっと見当違いだったと言わざるを得ません。

今大会のブラジル代表の対戦相手を運動量を軸にして分析すると、初戦のクロアチアは走らなくても何とか勝てた相手、オーストラリアは走らなくても勝てた相手、日本は走らなくても大勝できた相手、決勝ラウンドに入ってガーナは走らなかったけどシュートが下手なので勝てた相手、そしてフランスは走らなかったから負けた相手ということになります。

やはり奢りは禁物なのですね。このチームにドイツ代表のように「お前らベスト4へ行けたら奇跡だ」みたいな批判があれば、結果は違っていたかもしれません。危機感が無さ過ぎました。試合前や、試合中に笑うなとは決して言いませんが、笑顔が多すぎました。

そして、その象徴がロナウジーニョでしょうか。私は以前から開催年のチャンピオンズ・リーグ優勝チームのエースはワールドカップで輝けないと言う傾向性を指摘していたのですが、これで1998年のミヤトビッチ、2002年のジダンに続き、今大会はロナウジーニョとチャンピオンズ・リーグで栄冠を手にしたチームのエースが絶不調のまま敗退を余儀なくされたのです。

チャンピオンズ・リーグの熱気やその価値を考えれば、優勝後にモチベーションが急激に落ちるのは当たり前とも言えるわけで、今回はロナウジーニョがその餌食になってしまったというのが正しい分析だと思います。

まぁ、録画で確認していただきたいのですが、フランス代表に比べてとにかく動いていませんでした。ロナウジーニョ、そしてブラジル代表は!

近代フットボールではいくらスーパースターの集団でも走らないと勝てないのです。レアル・マドリードもそうでした。オシムの言うように水を運ぶ選手は大切ということなのです。

さあ、一方で大方の予想を覆して、見事な勝利を収めたフランス代表。これはアッパレと言う他ありません。1986年、1998年大会とブラジルを撃破したという相性の良さも少しは手伝ったのかもしれませんが、完璧なまで試合運びでした。そしてジダンの神々しいまでの存在感。1998年のときは"ZIDAE! PRESIDENT!"と地元で評されましたが、今回はどんな表現が使われるのでしょうか。彼は、本当にこのまま引退させてしまって良いのでしょうか?!いや、彼にはその覚悟があるから輝けるのです!そして、2002年大会で受けた屈辱も彼をここまで突き動かすモチベーションとなっているに違いありません。

「フットボールの神様はそんなジダンを大会の途中で我々から取り上げるはずがない!」とすら思えてしまうジダン渾身のパフォーマンスでした。

そして、すごいと言えば、アンリの一撃もすごかった!!蜂の一刺しという表現が陳腐に思えるほどの美しいゴール!クローゼとはまた違い数少ない作品に生命を賭ける孤高の芸術家と言ったところでしょうか。彼もまたチャンピオンズ・リーグ決勝まで上り詰め、体力的には相当に消耗したシーズンを送ったはずですが、タイトルを奪取できなかった悔しさが疲れの抜けきらない体を支えていたのかも知れません。

ビエリもこの日はすばらしく、マケレレも実にきいていました。リベリーの運動量に値し、テュラムを中心とした最終ラインの結束もお見事と言うほかありません。また、指揮官のドメネク監督は一見頼りなさそうな風貌ですが、どうしてどうしてコンディション作りや、選手の起用法、モチベーションの高め方など打つべき手を打ってきているのではありませんか。ベンゲル、ジャケ・エメ、ウリエ、ミシェル、トルシエらに続き、フランスにまた名称が誕生した瞬間でした!ドメネクの存在を知らなかったのかとフランス通フットボールアナリストの田村さんに怒られてしまいそうですが、今までは本当にその実力を図りかねていたのですから仕方ありません。

いずれにしましても、パリ、リヨン、マルセーユ、モナコに限らず、フランス全土は試合後、お祭り騒ぎが繰り広げられていたことでしょう。反対に、リオ、サンパウロ、マナウスといった都市から、バヘットス、レシフェといった小さな町に至るまで、広大なブラジル全土は悲しみにくれ、静まり返ったに違いないのです。

この日のブラジルの敗戦でまたしても欧州開催のW杯では他の大陸の国が勝てないと言うことと成りましたが、終わりに準決勝2カードの予想を立ててみることにしましょう。

自身がないと述べたとおり、私の予想はイングランドとブラジルを挙げていたので、この時点で的中率5割ということになってしまいました。言い訳をするつもりはないのですが、本場開催のワールドカップに勝ち残るべくベスト8ともなると予想は困難で、フットボールの神様、あるいは類まれな勝利の女神の腹ひとつとしか言いようがない結果が少なくありません。特に延長でも決着がつかない試合は神様や勝利の女神までが思いあぐねてしまったとしか言いようのない内容です。

さて、肝心の予想ですが、準決勝の勝者は希望的観測をこめてドイツとフランスとしておきましょう。

質実剛健のドイツは、芸術的イタリアに対して極めて相性が悪いのですが、ホームの利、開催国の意地でドイツが延長戦で決着をつけると予想します。

一方のフランスという予想は、ジダンのあのパフォーマンスを可能な限りみたいからという理由のみで立てました。それでも、よいではありませんか?!ジダンは将軍プラティニを超えた存在としてフットボール史にその名を刻んだ選手であり、有終の美を飾らせてあげたいのです!ポルトガル人以外は皆そう願っているのではと言いたくなるくらいです。

ブラジルとフランスの準々決勝で試合の前後にいくらレアルでチームメイトだったとは言え、あのロビーニョがジダンに抱きついている姿は言葉を失いました。若きロビーニョにとって、ジダンは憧れ以外の何ものでもないことを知らされた瞬間でしたが、ジダンはそれほどまでに大きな存在であることを今更ながら再認識させられました。

さあ、そして決勝ですが、正に神のみぞ知るのでしょうが、私は初志貫徹で開催国ドイツとします。これから一体どんなドラマが待ち受けているのか、今からわくわくしてしまいます。

コメント[4], トラックバック[1]
登録日:2006年 07月 04日 19:27:21

コメント

クリスチャーノ・ロナウド闘牛を相手に練習しているだけあります!!
しかもイケメン♪
最高です。
優勝はポルトガルに一票

うー @ 2006年 07月 05日 13:53:55

初めまして。
あの・・・誤字がとても多いのが非常に気になりました。
プロである以上、投稿する前に確認するのは当然だと思います。
「栗すまん」は最初ウケ狙いで書いたのかとさえ思いましたが、「不動」が「浮動」に、
「真相」が「深層」、「健闘」が「検討」になっていて、大変読みづらいです。
辛口とおっしゃられるのならば、ご自分にも厳しくなさって下さい。

moku @ 2006年 07月 06日 16:03:23

mokuさん
ご指摘ありがとうございます。
実は、諸事情による関係で、私は紙に原稿を書いて、それを編集部にファックスしている次第です。ご指摘の誤植は、その読みづらい手書き原稿を編集部の担当者が打ち込んだ時に起きたものであることご了承ください。
ともあれ、mokuさんはじめ、多くの皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。通信社のサイトにあるまじき失態と反省し、以後気をつけます。

小谷泰介 @ 2006年 07月 06日 20:56:58

moku様&お読みいただいた皆様
ご指摘いただき、ありがとうございます。
早速、修正させていただきました。
誤字を掲載いたしまして、大変失礼いたしました。
今後とも、Actiblogをよろしくお願いします。

編集部 @ 2006年 07月 06日 22:21:23

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プロフィール
小谷泰介
小谷泰介
(著者近影:昨年7月にチェルシーFCのレジェンドで元イングランド代表のケリー・ディクソン氏とともに)

1955年、タイ王国バンコク生まれ。
フットボール・ジャーナリスト。
四半世紀に及ぶ取材経験をベースにしたジャーナリスティック、かつ辛口の解説はラジオ、テレビで人気を博した。
また、欧州のプロクラブの指導者や選手に知己が多く、クラブ経営にも造詣が深い。
チーム強化に重点を置いたクラブ運営に関する講演も好評。

著書に『拝啓 川淵三郎殿』(モダン出版)などがある。
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