史上最大の買春作戦(下)-集団買春とリフォーム詐欺のカンケイ-

売春宿に警察の強制捜査が入る - 中国

【西安/中国 6日 AFP】中国北部の陝西省(Shaanxi)西安(Xian)で5日、売春宿が強制捜査を受けた。中国では1949年の共産革命以降、売春はほとんど根絶されたが、25年間の資本主義経済改革によって再び見られるようになった。写真はソファーの上で身を寄せ合う若い売春婦たち。(c)AFP

AFPBB News


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本ブログを熱心に読んでくれている香港の読者から、「鶏(売春婦)のリーダーは、『鶏頭』ではなく、『亀婆』というのだ」というご指摘をいただいた。
「うーん、『亀婆』かぁ」。たしかに、「やり手ババア」という雰囲気を出すには、「亀婆」のほうがいいかもしれない。だが、上の写真をご覧いただきたい。連載「史上最大の買春作戦」(上)(中)の写真で検挙された少女たちのリーダーは、こんなに若く、美しい女性だった。
白いお洒落なジャケット、シルクのブラウス。裾の開いたジーンズ。赤く染めた髪の毛もどことなく今風。顔は手で覆っているが、彼女が若く美しいことは、誰しもが認めるだろう。
珠海集団買春事件が発覚すると、広東省の捜査当局は、売春婦(三陪小姐)を集めた「鶏頭」(ガイタウ)たちの検挙に躍起になった。彼女らはいったんは故郷の農村に逃亡して身を潜めたが、やがて検挙され、ふたたび引き戻された。事件発覚後の新聞には、しばらくの間、「湖北省で鶏頭検挙!」などの見出しが次々と踊っていた。
中国人が言うのだから、売春婦の頭目は、「亀婆」とも言うのかもしれない。だが、ここではやはり、中国、香港媒体の記載にしたがい、「鶏頭」のままで通させていただきたい。おそらく、写真の彼女も、もともとは「鶏」(ガイ)だったのだろう。やがて故郷出身の後輩たち、少女たちを集め、若くして、「鶏頭」に出世したのだ。
さて、連載最終回となる今回は、集団買春事件発覚後のできごと。とりわけ、「幸輝」のその後を追った。2005年5月に発覚した一連の悪徳リフォーム詐欺と、集団買春事件がどう関係するのか、読者にじっくり考えていただきたいからだ。

◆埼玉富士見老姉妹リフォーム詐欺事件と「幸輝」

2005年春、埼玉県富士見市の消費生活相談室に、近所の人に付き添われた老婆がやってきた。老婆は姉と二人暮らし。家をたびたびリフォームしており、貯えも底をついていた。そして、知らない間に家を競売にかけられていたのを不審がった近所の人が、見るに見かねて、老婆を連れて相談に訪れたのだ。
「お金がなくて、家をとられそうです。『幸輝』の人がお金を取りに来るんです」。
要領を得ない説明。困り果てた老婆を前に、消費生活相談員は言葉を失った。老婆は78歳、同居の姉は80歳。見た目には普通のお婆さん。近所の人には、家が競売にかけられるまでは、別段変わった様子には見えなかった。
実際、数年前までは、犬を散歩させながら近所の商店主を激励してまわる、明るいお婆さんだったという。ところが、最近になって元気がなくなった。
たしかに、見た目には元気だが、齢を重ねるとともに、ふたりとも物忘れが激しくなった。いわゆる「認知症」の症状が出て来たのだ。
そんな老姉妹の家庭にリフォーム会社の営業マンが入れ代わり立ち代わり訪れるようになったのはおよそ3年前から。さびしい二人暮らしの家庭で、いつでも話し相手になってくれる営業マンに、老姉妹はつい心を開いた。屋根、床下、シロアリ対策など。言われるままに、次々と工事を発注した。
「幸輝」埼玉支店のSとKが老姉妹の家を訪れたのは、2003年10月30日のこと。たび重なるリフォームで、すでに老姉妹の貯えは底をついていたが、いまどき珍しい青年の丁寧な言葉づかい、孫のように尽くす親切な態度に、老姉妹の気持ちはすっかりほぐされていた。翌日にはさっそく屋根裏の補強工事63万円を注文。その後も老姉妹の家には次々と「幸輝」社員が現れた。11月3日、4日の両日にも「幸輝」のUとNが日参。屋根裏断熱工事、小屋裏工事、台所のフローリング張り替え、和室の畳入れ替えなど、言われるままに合計315万円のリフォーム工事が決まった。さらに11月8日にもUは工事部のNを連れて3たび現れ、台所流し台入替工事、洗面台入替工事、壁クロスなど合計210万円の工事を発注。11月16日に完了した。もちろん、貯金が底をついている老姉妹にこんなお金があるわけもなく、「幸輝」は11月17日、大手ローン会社O社(本社:東京都千代田区)のクレジット申込書を示した。それによると、老姉妹の債務は合計640万円余り。支払方法は毎月15万円余りの42回払い。老姉妹の「おつとめ先」には、「年金」の二文字。
ちなみに、老姉妹の年金はあわせて15万円。ほかに蓄えはない。年金をすべて取られたら、どのように暮らしていけばいいのだろう?
それでもO社は信用を付与した。つまり、埼玉県富士見の老姉妹リフォーム詐欺事件に関係した19社のうち、彼女らの家を競売にかけたのは、「幸輝」の仕業だったのだ。
老姉妹の自宅を調査した富士見市の消費生活相談員は、「台所のシンクも、高級なものではなく、どこにでもあるありふれたもの。けれども、価格は法外に高かった」。「屋根裏などの工事も、一級建築士によって、『意味のない不要な工事ばかり』と診断されました」と、憤懣やるかたない。
大方の読者は見逃していると思われるが、珠海集団買春事件を扱った『FRIDAY』の、「ボクらはみんなで買春した」( 2003年10月31日号)という記事に、おりしも当時、「幸輝」が営業成績を競いあうコンクールの真っ只中だったことを示すポスターが掲載されている。
ハードルを跳ぶ陸上選手たちの躍動的な姿。「Who is No.1? on the race」の大きな文字。ポスターのトップには、英語で、「キング・オブ・リフォーム」の文字も見える。そして、その隣には、「グループ、第5回秋期大会」。
「えー、5回目だとー」。
「幸輝」が過去に少なくとも4回は買春旅行を繰り返してきた!?
ポスターの下部には、コンクール期間が、「10月1日(水)~10月31日(金)」であることを示す表示。そして、入賞者表彰旅行の行き先は北海道。11月15日の最終集計で「成績優秀社員」を決め、表彰旅行は11月21日~23日に実施されるという。
実際、『FRIDAY』の記事本文にも、「幸輝」が、「今年11月にも営業成績優秀者のための『慰安旅行』として、北海道の札幌・ススキノに行くことが決定している」という、現役社員の告白が掲載されていた。(前掲『FRIDAY 』)
「先週も、『女もタダになるから、北海道に行けるよう頑張れよ』と、上司に言われましたよ」(前掲『FRIDAY』)というから、開いた口が塞がらない。
実際、買春旅行は日程を1日早め、行き先を福岡に変えて実行された。この年の「11月20日から(の)表彰旅行」に、「参加者は本部長のほか、幹部と営業成績優秀者の18人」。「後日、参加者に聞くと、『夜は貸し切りバスに乗って、中州(引用者注:福岡最大の歓楽街)で女と遊んできたよ」(『FRIDAY』2004年1月9・16日合併号)。
『FRIDAY』に買春旅行の計画が証拠入りで掲載されてしまったため、、「幸輝」は目的地を北海道から福岡に変えた。それでも買春旅行は実施された。そして、その実態が、のちのち漏れ伝わって来るのだから、この会社も末期症状だ。

◆極刑に処せられた珠海の「鶏頭」たち

いっぽう、中国広東省では、集団買春を斡旋したホテル管理部門の葉翔副支配人や、劉雪晶マネージャー、それにホステスたちの頭数をそろえたナイトクラブのママさんたち(鶏頭)が次々と捕らえられ、厳しい取り調べが行われていた。
2003年12月12日、晴れ。 珠海中級法院(地裁相当)の前には、朝から大勢の記者たちが詰めかけていた。地元広東省の記者もいれば、「ズーズー弁」の東北なまりの記者もいた。香港やマカオの記者も、朝日新聞の香港特派員の姿もあった。記者たちの数は、およそ50人。彼らは11月の「まもなく裁判がはじまる」という観測報道があってから、裁判所隣の中苑ホテルや、裁判所向かいのホテルにチェックイン。いまかいまかと、裁判が始まるのを待ち構えていたのだ。
龍眼を乗せた車が裁判所前に乗りつけたのは、ちょうど被告らや裁判関係者を乗せた車輛が裁判所に次々と吸い込まれていく緊迫した場面。
裁判所の門前では、鉄兜と迷彩服をまとい、銃をささげ、隊列をつくり、大きく手を前後に振り入構する武装警官の姿も。大きな「武警」の文字。そう、ここは中国なのだ。
まもなく裁判所の中から一枚の紙を持った吏員が姿を見せた。裁判所前の掲示板に、「非公開裁判」の決定を掲示する。報道陣のカメラのシャッターが次々と切られた。
記者たちは、裁判所の向かいのレストランで、飲茶をはじめた。龍眼も広東語圏の記者たちのテーブルに入れてもらった。広西テレビ局の若い記者が、「お前、なに食べる?」といろいろ気を遣ってくれ、刀削麺をご馳走してくれた。朝6時前に起きてから、何も食べていなかった。腹にしみわたる。ありがたい。
法廷内はおろか、私たちは裁判所の構内に入ることは許されなかった。まもなくして、香港ATV(亞州電視)の現地クルーが、三脚を据えて中継を始めた。野次馬がこれを遠巻きに囲む。中国のテレビ局の記者も、手当たり次第に通行人を止めて、SONY(索尼)のハンディカムを向け、インタビューを始めた。陽が高くなり、野次馬の数だけが、だんだん膨れ上がってきた。
お昼になり、法廷があわただしくなった。休憩に入ったのだ。隊列をつくり、銃をささげた武装警官たちが整然と退出してくる。私たちのいる場所からは、被告たちの姿はまったく見えない。中国の記者たちは、弁護士などを通じて、法廷内の様子を間接的に知る手だてを持っている様子だった。だが、このような手だてがない以上、いつまでもここにいてもしようがない。
結局、判決が下されたのは12月17日。現地報道をもとに、その大要をのべよう。
最も重い極刑に処せられたのが、「幸輝」の注文を受け入れ、売春側を組織、指揮した「国会ホテル」の葉翔副支配人と、金色年華夜総会の明紅傳ママ(本名:明珠)。二人には中国刑法の「組織売淫罪」が適用され、財産没収、無期懲役が宣告された。
これに次ぐ重刑が、葉翔副支配人の部下で、「幸輝」との直接の窓口だった劉雪晶マネージャー。まだ20代の彼女だが、判決は3万5千元(約52万5千円)の罰金と懲役15年。さらに張英軍ママも、3万元(約45万円)の罰金と、懲役12年が言い渡された。彼女らの刑罰が重かったのは、「組織売淫罪」が適用されたため。たしかに、彼女らが「組織売淫」の実務の中心にいたことは否定できない。
彼ら、彼女らの要請に応じてホステス(三陪小姐)を集めた夜総会のママさんたちにも、その果たした役割に応じて、重い判決が下された。
阿里山クラブの周艷ママには、3万元(約45万円)の罰金と、懲役10年。同じナイトクラブの胡靜ママと葉雪敏ママにも、2万5千元(約37万5千円)の罰金と懲役8年。
維也納ナイトクラブの曾令莉ママには、2万元(約30万円)の罰金と、懲役7年。そして 中国城カラオケクラブの閻群ママには、1万5千元(約22万5千円)の罰金と、懲役6年。さらに中天ホテルの星際ナイトクラブの曹暁嵐ママには、1万5千元(約22万5千円)の罰金と、懲役6年が宣告された。
ここまでが、「組織淫売罪」が適用された面々。他の4人の被告には、「組織淫売幇助罪」が適用され、刑罰はいくぶん軽くなる。
すなわち、中天ホテルの星際ナイトクラブの黄顛ママには、1万5千元(約22万5千円)の罰金と、懲役6年。同じナイトクラブの趙英梅ママには、1万元(約15万円)の罰金と懲役3年。銀都ホテルの豐韻ダンスホールの李海英ママには、1万元(15万円)の罰金と懲役4年。さらに中国城カラオケクラブの房銀環ママには、罰金5千元(7万5千円)と懲役2年。。
このうち、最も量刑の軽かった房銀環ママだけは判決を受けいれた。残りの13人の被告はあまりもの量刑の重さと、買春側の日本人が裁かれていないことに不満をのべ、つぎつぎと「不公平裁判!」を連呼。泣きながら控訴した。
判決が下された時、法廷には彼女らの慟哭がこだましたという。とくに、まだ20代の若さの劉雪晶マネージャーの取り乱しようは激しく、「あんたのせいだ。私の人生をどうしてくれる」と、隣の葉翔副支配人に悪態をつき、激しくどついたため、あわてて両脇の武装警官に引き離される一幕もあったという。

◆次々と露顕した悪徳リフォーム

さて、2005年5月に発覚した埼玉県富士見市の認知症老姉妹リフォーム詐欺事件で名前が出た「幸輝」。老姉妹との間に入っていた富士見市に、5月26日、弁護士を通じて返金を申し出ている。その後、6月27日からは返金も確認され始めた。関係した19社のなかでもすばやい対応だ。
じつは、「幸輝」が6月27日に返金を始めたのには、理由があった。
翌6月28日、京都市内に住む統合障害を持つ60代男性(以下、おっちゃん)から、「小屋裏、浴室に不要なリフォームを強要された」として、契約の無効と、原状回復を求める京都幸輝訴訟(民事)が提訴されたのだ。事前に男性側の弁護士から送られてきた『通知書』を前に、「幸輝」としては、富士見老姉妹事件の解決を急ぐ必要があった。
京都地裁に提訴された京都幸輝訴訟(民事)の被害の概要をのべよう。
2005年3月8日、おっちゃんの家に突然、「幸輝」のMが訪ねてきた。
「おっちゃん、おっちゃんとこの屋根、落ちかけてます。ちょうど近所で工事しとって、材料が余ってるんや。どうせほかすもんやさかい、ただで直してあげる」。と持ちかけてきた。
Mの親切な態度に、おっちゃんが自宅に招き入れると、Mは小屋裏にのぼり、なにやら点検らしきことを始めた。そして、しばらくして出てきたMは、深刻な顔をして告げた。
「あかん。このままやと、地震おきたら、ひとたまりもないわ。家が崩れてしまうで」。
「困ったな、家が崩れてしもたら…」と、おっちゃんが困惑していると、Mはたたみかけるように言った。「屋根は直したほうがええわ。勉強するさかい…」と、しきりに修理を勧める。
それでもおっちゃんが躊躇していたところ、Mは携帯電話を取り出し、どこかに連絡をとりはじめた。そしておっちゃんに、「いま社長が電話口にでてる。替わってほしい言うてる」と、おっちゃんに携帯電話を手渡した。
おっちゃんが携帯電話に出ると、いきなり、「ありがとうございました」という声がした。携帯電話はその後すぐにMに取り上げられてしまった。
おっちゃんは、「あぁ、もう契約してしもたことになっとるんや」と思い込み、後戻り出来ないと思い込んでしまった。
翌3月9日、こんどは「幸輝」のOがもう一人の社員を連れて現れた。Oは提携先大手クレジット会社A社(本社:大阪市)の申込書を示し、おっちゃんに住所、氏名、銀行口座番号の記入と、捺印を迫った。おっちゃんが記入しおえた申込書に、Oは工事金額47万2500円などの細目を記入しはじめた。高いと思ったが、おっちゃんは「あとにはひけない」と観念してしまっていた。
ところがこのクレジット申込書(契約書)には、いくつかの誤り、不備があった。
おっちゃんの家は、姉から借りているものだが、「自己所有」に丸印。また、おっちゃんは無職だったが、「お仕事」欄は「自由業」に丸印。そして、Oは(法律で義務づけられている)クーリング・オフの説明をまったくしていない。
3月13日に小屋裏工事が終わると、数日後に「幸輝」のIが、作業服姿の男を連れて訪ねてきて、「こんどは床下を見てあげましょう」と言う。さっそく、作業服姿の男が畳をめくって床下に潜った。しばらくのち、作業服姿の男が戻り、Iは床下で撮ってきたという写真数枚を示しつつ、根太(ねだ)が赤っぽくなっとるやろ。これは、風呂の水が漏れて配管から錆が出てるからや。それを換えなあかん」などと言って、浴室工事を勧めた。
Iが「180万円ぐらいかかる」と言うので、おっちゃんが「えらい高いわ。考えさせてんか」と言うと、Iは、「せっかく小屋根の工事をしたのに、床下の工事をせな、家全体が崩れてしまうわ。早よせんと、屋根の工事が無駄になってしまう。工事しましょ」と、たたみかけるように勧誘を続けた。
Iはその後もおっちゃんの家をたびたび訪れた。ある日、Iは別の男を連れてきて、見積もり書を持参してきた。おっちゃんは、「いまさら後に引き返せない」と思ったことと、早くこのしつこい男たちから逃れたい一心で、、「分割にしてくれへんか」と言ったところ、Iらは、「いいですよ」と話して、ようやく引き上げていった。
3月17日、Iは今までに来た男とは別の若い男を連れ、おっちゃんの家に現れた。そして、「分割払いは、月8万4千円の2年間割賦にしてほしい」と提案し、「幸輝」の提携先、大手クレジット会社A社(本社:大阪市)の申込書を示した。
そして、おっちゃんに住所、氏名、口座番号を記入させると、前回と同じように、「お住まい」の欄では「自己所有」に丸印。「勤務先」欄には「厚生年金」という記載をした。富士見の老姉妹のときと、同じ手口だ。そしてIは、クーリングオフの説明をせず、「工事には準備がかかるので、土壇場でキャンセルしないで下さいね」という捨て台詞を残して帰っていったのである。。
3月22日に始まった工事だが、たまたまおっちゃん宅を訪ねた姉が異変に気がつき、「幸輝」に工事中止を申し入れた。翌28日には内容証明郵便で全ての請負契約を取り消す意思表示を行い、A社に対しても『支払抗弁書』を送付した。
幸輝京都訴訟(民事)で、7月29日の第1回公判では「幸輝」は契約の瑕疵を認めず、全面的に争う姿勢を見せたが、ながねん京都府、京都市で住宅診断にあたってきた一級建築士が、「意味のない工事」とする『意見書』を提出したこともあり、裁判の長期化を嫌った「幸輝」側が9月21日の口頭弁論で和解の希望を示唆。裁判長も和解あっせんに動いた。
10月19日、「幸輝」が全ての債権を放棄するということで、両者の間に和解が成立した。おっちゃんの事実上の勝利だった。
じつは、「幸輝」は、集団買春事件以後も破竹の快進撃を続けている。2004年には前年比200パーセントの売上高を誇り、3月には首都圏3番目の拠点となる千葉支店(千葉県市川市)、翌05年1月には中京圏進出の第一歩となる名古屋支店(名古屋市桜区)を開設。同年3月には大阪市西区にある旧日本興亜損保土佐堀ビル(地上18階、地下2階建)を、UFJ信託銀行から28臆8千万円で取得。4月にはここに登記上の本社を移した。ガテン系の就職情報誌には毎週のように求人広告を掲載。あわせて、「アスリート就職ナビ」、「中日ジョブ・インフォメーション」、「アクセス就職ナビ」、「いんぐる就職Web」などの就職サイトにも求人を出していた。2005年の新卒も大量に入社。全盛期の「幸輝」には、560人もの社員がいた。
多くの若者が、「リフォーム詐欺師」として、人生の道を誤るところだった。
その快進撃が、富士見の老姉妹リフォーム詐欺事件で止まった。さらに、京都幸輝訴訟(民事)が追い打ちをかけた。昨年5~7月にかけて、「幸輝」は支店を次々と閉鎖。希望退職者を募るなど、大幅なリストラを実施。いま残っているのは、幹部社員を中心に、およそ40人という情報もある。
昨年11月7日、埼玉県警と京都府警は合同で、大阪府吹田市の「幸輝」本社と、東京都大田区の同社東京支店を捜索。埼玉県警は「幸輝」の『トーク・マニュアル』を押収。上尾市内の71歳男性を騙し、不要な屋根裏工事で42万円を詐取した容疑で、元社員の白石友一(37歳、東京都日野市日野本町)と上条陽介(27歳、埼玉県さいたま市桜区神田)を逮捕した。白石と上条は、富士見市の老姉妹事件に登場したSとUのことだ。
だが、県警は容疑を固めきれなかった。二人は11月27日に釈放。今年3月17日に不起訴も決まり、埼玉での追及は頓挫した。
もっとも、京都府警は「幸輝」本社からコンピューターに入力された数万件におよぶ顧客名簿(その大部分は被害者)を押収しており、その後も地道な捜査を進めてきた。
今年4月11日、京都府警は05年5月に、大阪市内の70代老夫婦宅で地震の不安を煽って天井裏に役に立たない耐震補強工事を行い、80万円をだまし取った容疑で、曽我哲也「幸輝」大阪支店長(31歳、京都市右京区西京極佃田町)、元社員の穐田俊男(55歳、大阪府豊中市新千里東町3)、青木俊彦(51歳、大阪市淀川区西宮原2)、梅本誠(29歳、兵庫県宝塚市安倉南3)の4人を逮捕。
5月1日には、05年3月、京都市下京区の78歳の老婆宅で、「金具をつければ地震が来ても大丈夫」などと語り、役にたたない耐震補強工事をしたとして、元社員の上田東(32歳、京都市南区久世殿城町)、貴田智裕(32歳、大阪府豊中市利倉南)を。また、同年2月吹田市千里丘の62歳会社社長宅で、不要な屋根裏工事を行って110万円を詐取したとして、元社員の山本貴志(33歳、大阪府吹田市豊津町)の3人を逮捕。
さらに6月14日には、これまで発覚した事件を指揮したとして、「幸輝」唯一の一級建築士で、同社取締役兼施工管理部長だった南亘(61歳、大阪府堺市南区御池台)と、同じく営業部次長だった森本稔(46歳、大阪市淀川区西中島)、施工管理部支部長だった橘大志(27歳、大阪府吹田市江坂町)の元管理職3人を逮捕。逮捕者はつごう10人となった。
6月28日からは、刑事裁判も始まった。公判では、「(営業社員の部屋には)盗聴器が仕掛けられていた」(梅本被告)、「成績が悪い従業員は、上司から…竹刀や素手で殴られていた」(穐田被告)(7月12日『毎日新聞』)、「部下が辞めるのを森本次長に取り次いだら、『なぜ認めた』と殴られた。これまでに何度も殴られており、前歯が欠けたこともある」(曽我容疑者)(7月19日本人訊問)と、「幸輝」の暴力的な管理体制が明らかにされつつある。
注目すべきは、これまでに発覚、立件されたリフォーム詐欺事件がことごとく集団買春事件以後に起こっていることだ。集団買春事件が発覚した時、政府がこの会社の業態をきちんと把握していれば、これらの「二次災害」は防げたはずだった。
「幸輝」京都訴訟(刑事)は、8月15日(水曜日)午前に最初のヤマ場を迎える。京都地裁第215法廷で穐田被告と梅本被告に判決が言い渡されるのだ。また、曽我被告には論告求刑が行われる見込みだ。
リフォーム詐欺も、集団買春も、「幸輝」の人々は、「マニュアル」がなければなんにも出来ない人々だった。裁判所には、彼らの人生の「リフォーム」の指針となる「マニュアル」づくりをお願いしたい。

【付記】4月30日、京都地裁において特定商取引法違反、詐欺容疑で起訴された法人「幸輝」(米盛昌敏社長)と、谷尻浩前社長、濱田宏一郎前営業本部長、南亘前施工管理部長、森本稔前営業管理部次長を被告とするリフォーム詐欺事件の刑事裁判の論告求刑が行われた。検察側は、谷尻、濱田被告に懲役6年、南、森本被告に懲役5年、「幸輝」に罰金300万円を求刑。「幸輝」側は全員無罪を主張した。判決は8月15日午後1時30分、京都地裁202法廷で言い渡される。なお、傍聴券交付情報は、京都地方裁判所までご照会いただきたい。

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登録日:2006年 07月 21日 23:02:53

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プロフィール
龍眼
(男)
本名和仁廉夫。 ジャーナリスト。高校、予備校の教壇生活を経て現職。1990年代から香港問題に関わり、マカオ、台湾、中国、華僑華人世界の持つ多様な観点を紹介してきた。著書に、『旅行ガイドにないアジアを歩く・香港』(梨の木舎)、『香港返還狂騒曲』、『歴史教科書とアジア』、『東アジア・交錯するナショナリズム』(社会評論社)など。自称の「龍眼」とは、中国南部で広く食されるライチに似た果物。淡い茶褐色で、食味はジューシィ。そもそも「龍」とは、中華世界の幻の神獣。「龍眼」はその「龍の眼」に由来している。
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