美女の中華人類学-外伝(1)中国征婚事情-

18歳の女性、プラカードを手に結婚相手募集 - 中国

【西安/中国 13日 AFP】陝西(Shaanxi)省西安(Xian)で12日、結婚相手を探す18歳の女性が、街頭で「求人プラカード」を手に伴侶を募集した。伴侶探しをしているのはRong Zhijuanさん(18)。これまでインターネット上のデートサイトなどでお見合いを試みたが、適当な男性に巡り会えなかったため、この大胆な方法に訴えた。写真は12日、伴侶を募集するRongさん。(c)AFP

AFPBB News


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 プラカードを持って結婚相手を募集している栄朱娟さんは、身長こそ恵まれていないが、とても優しそうな顔だち。服装はこざっぱりしているし、さりげなく髪を栗色に髪めるお洒落も…。さっそく、物見高い男性たちにとり囲まれてしまった。

 中国語では結婚相手募集を「征婚」という。

戦時史料の蒐集のため、マカオの『華僑報』に通いつめていた時期、戦乱や飢餓に苦しんでいだ時代の紙面にも、頻繁に「征婚」や「結婚啓事」の三行広告を見つけた。現在上海で発行されている『新民晩報』にも、紙面中央部の折りしろ部分に格安に掲載できる広告欄があり、小さな三行広告がたくさんある。ここでも、「征婚」広告は健在だ。

人生の重要な節目となる結婚。新聞紙面に「征婚」広告を出して相手を募集したり、「啓事」として結婚宣言することは、中国では古くから行われてきたらしい。

 写真の栄朱娟さんの場合は、インターネット上のデート・サイトでも相手を探したことがある。いろいろ努力してみたが、芳しい結果が得られなかった。そこで、AFPの写真のように、大胆なパフォーマンスに出た。はたして希望の男性にめぐり合えただろうか?
必死に相手を捜す彼女の幸せを願ってやまない。

 ところで、中国女性の「征婚」は、ときに境界や国境を超え、台湾人男性や日本人男性との間でも行われている。日本人男性の場合、若いころに相手に恵まれなかったり、妻と死別して独身になった場合など、事情をかかえる男性との間で「お見合いツァー」が盛んに行われている。専門の相談所や斡旋業者もすくなくない。なかには、結婚よりも、その結果として得られる居住権や、財産目当ての「政略結婚」の場合も少なくないから、事情はさらに複雑だ。

 龍眼の写真は、関西発信の在日華人向け新聞、『関西華文時報』の副刊(折り込み第二部)の人気広告紙面「わたしの結婚相手募集宣言」。この記事の場合、見出しこそ日本語だが、本文はすべて中国語。連載開始以来、日本国内在住の中国人女性はもとより、在日華僑などを通じて、遠く中国大陸からも、「私も載せて」と応募が殺到しているとか。とくに写真紙面左の女性の場合、男性からの反響が殺到したという。

 本ブログ内連載「美女の中華人類学」では、史上空前のブームを見せる中国におけるミスコンブームを追跡してきた。その番外編として、今回は中国女性の結婚、交際事情を見てみたい。 
  

◆当たった「私の結婚相手募集宣言」

大阪で発行されている『関西華文時報』という中国語新聞がある。関西圏、中京圏で暮らしている新華僑、老華僑のニーズに対応した生活情報紙だが、その中刷り部分(副刊)に「私の結婚相手募集宣言」(写真下)というコーナーがある。

  そもそも中国語媒体では、「征婚」(結婚相手募集)の三行広告は珍しいことではない。だが、女性の写真を何枚も掲載し、その詳しい自己紹介と、相手への注文がびっしりと書き込まれた記事はおのずと人々の耳目を集めた。

 「小さな広告では見えてこないものが紹介できたらと思って始めました。思いがけず大反響で、掲載してほしいという希望が、日本国内はおろか、中国本土からもわれもわれもと殺到するようになりました」とは、発行人の黒瀬道子社長。

 日本国内で暮らす「新華僑」はもとより、南京街などに住む「老華僑」も、中国の故郷から親戚の娘の写真を取り寄せて、「うちの娘も載せて」と応募してくるんだとか…。

 もともとは広告だった。とは言っても、いただいている掲載料は紙面の大きさには相応しくない薄謝程度。いわば企画広告だが、連載記事とも見紛う人気コーナーに成長した。

 「日本国籍取得や、永住権を狙った不純な輩(やから)も出てくるのでは?」という懸念もある。このため、『関西新華僑報』じしんが仲をとりもつことはない。
「連絡は本人同志でやっていただいています」。

 そもそも『関西華文時報』は関西圏在住の在日中国人対象の媒体。「我こそは」と、彼女らの相手に応募してくるのもほとんどが中国人男性。いまや、日本国内で暮らす中国人は50万人以上ともいわれ、在日コリアン社会に匹敵する規模を持つ。在日コリアンと違うのは、その多くが、比較的年齢の若い青年男女で占められていることだ。彼ら、彼女らは、留学先や職場とアパートとの往復で、なかなかいい相手にめぐり合えないという。

 「中国人同志だからいいというものではない。できれば、(同じ方言の通じる)同郷の人がいいのです」。ところが、実際にそのような相手がどこにいるのか、皆目わからない。

◆ダンスは中国女性の素養

  当然のことだが、首都圏にはさらに多くの中国語媒体が存在する。『中文導報』、『東方時報』、『日本新華僑報』、『聯合週報』、『日中新聞』、『唐人報』、『中和資訊』、『留学生新聞』、『台湾報』、『知音』…、龍眼の記憶にのぼるものだけでも、両手の指では数えきれない。

日中国交正常化、改革・開放の歴史のなかで、在日中国人社会が数十万人単位に膨れ上がるなかで、国際電話会社や通信会社などがスポンサーにして、多くの中国語媒体が育ってきた。

 これらの媒体は定期購読が理想だが、実際には、スポンサー買い取りの形で、スポンサーの店舗で無料配布される場合もすくなくない。当然のことながら、広告収入が中心となる。紙面に広告が占める役割は大きいが、そのなかでも求人広告と並んで多いのが、「交友」や「舞会」(ダンスパーティー)、「広東語倶楽部」(広東方言による茶話会)などの、中国人同志のコミュニティをよびかける広告だ。

 本ブログのシリーズ、「美女の中華人類学」で中国ミスコンを追跡していて驚かされたのが、才芸(特技)審査で披露される美女たちの踊り、舞踏の演技が玄人はだしなこと。宴会芸や瞬間芸でお茶を濁すこともままある日本のそれとは異なり、文化的背景の違いを認識せざるおえない。

わずか数日間の練習ではとうてい習得できない足の運び、腰の位置、リズム感覚、手のしぐさ、そして目線。彼女たちが幼い頃から、民俗舞踊、武侠、モダンバレエ、社交ダンスなどを、ながく練習し続けてきたと考えざるおえない。
 
 七年間にわたって香港中文大学に留学し、現在はアマチュアダンス連盟の指導員をしている池上香名女(旧姓:大舘)が言う。
 「中国女性にモテたいなら、ダンス教室に来るといいわよ。たくさん来てるから」。
中国の社交界では、ダンスは必須科目のようだ。

◆国境を超える中国の若者たち

私たち日本人の意識が「国際化」に対応したものになっているかどうかはともかく、日本の都市部の国際化が著しい。実際、東京都でうまれる新生児の10人に1人は外国人カップル、ないしは日本人と外国人の間に生まれた子どもたち。

とくに外国人が多いエリアの一つ、新宿区立大久保小学校の場合、子どもたちの3分の1を外国人児童が占める。

横浜中華街、神戸南京街などの既存のチャイナ・タウンとは別に、「新華僑街」ともいうべき、新しいチャイナタウンも出現している。

大学や専門学校、日本語学校が集中している大塚駅周辺、池袋北口、高田馬場、大久保など、山の手線の新宿から北に向かうエリアや、小岩、錦糸町などの下町エリアは、とくに中国人の多いところとして知られる。大久保地区の不動産屋は、いまや外国人抜きに商売は考えられないという。

これが大阪ならば、電気街として有名な日本橋界隈。なかには、書店、CDショップ、チャイナドレス、アクセサリー、中国家具などが総て揃う、ビル全体が中国のテーマパークともいうべき場所まで出現している。

その担い手は、「新華僑」と呼ばれる若者たち。早くから中華街を形成してきた「老華僑」とは異なり、日中国交正常化後、留学、就労などの目的で日本に渡航し、根を下ろしてきた。これだけ大勢の中国人がいるのだから、当然日本社会との軋轢もあるが、同時に、中国人同志、中国人と日本人とのカップルもたくさん生まれてきた。

華人社会の習慣も持ち込まれている。中国・台湾などの女性たちの間では、若くて美しい時期に、華麗なドレスで着飾って写真館でプロカメラマンにポートレートを撮影してもらうのが流行っている。

龍眼は、台湾の高雄でこのような店が軒を連ねているところを見たことがある。香港では、実際の撮影現場にしばしば遭遇した。日本の中国語媒体にも写真館の広告は少なくない。

東京の池袋、大久保界隈には、中国食品を扱う店や、中国書籍・雜誌の専門書店、それに、香港・台湾・中国の人気ドラマをダビングして貸し出す店舗も増えてきた。ビデオの貸し出しは会員制だが、なぜか日本人の入会金は安く、中国人のほうが高い。その理由を質すと、中国人利用者のなかには、なかなか返さない人もいるのだとか…。

中国書店で扱っている書籍も、学術書というよりは、中国の大衆文化そのもの。かなり割高にはなるが、上海の『新民晩報』など、中国の新聞も数日遅れて届く。

舞会、茶会、ポートレート撮影、中国語カラオケ…。日本の大都会で青春を謳歌している中国の若者の生活と意見を、日本の人々はどれだけ知っているだろうか?

次回は中国人女性と台湾人男性の交際、結婚事情をみていきたい。

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登録日:2007年 01月 03日 13:24:15

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プロフィール
龍眼
(男)
本名和仁廉夫。 ジャーナリスト。高校、予備校の教壇生活を経て現職。1990年代から香港問題に関わり、マカオ、台湾、中国、華僑華人世界の持つ多様な観点を紹介してきた。著書に、『旅行ガイドにないアジアを歩く・香港』(梨の木舎)、『香港返還狂騒曲』、『歴史教科書とアジア』、『東アジア・交錯するナショナリズム』(社会評論社)など。自称の「龍眼」とは、中国南部で広く食されるライチに似た果物。淡い茶褐色で、食味はジューシィ。そもそも「龍」とは、中華世界の幻の神獣。「龍眼」はその「龍の眼」に由来している。
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