「永久成長は不可能である」 ~とある経済学者の理念


最近、マンフレッド・マックスニーフ(Manfred Max-Neef)という、チリの経済学者のことを知った。
かなり著名な人物らしく、1983年にライト・ライブリフッド賞を受賞し、また1993年にはチリ大統領選挙にも出馬しているという。
恥ずかしながら私、つい数週間前までマックスニーフ氏の名前すら聞いたことがなかった。

我が家のハードディスクレコーダーには、録画したまま観ていない番組がたんまりと溜まっている。
(どれ位溜まっているかというと、常時約80%の容量が埋まっている状態)
その中のひとつに、朝日ニューススター(CS)で放送している「Democracy Now!」というアメリカのテレビ番組がある。
そこで取り上げられていたのがマックスニーフ氏であった。

マックスニーフ氏は南北アメリカ各地で経済学の教鞭をとる傍ら、貧困層でのフィールドワークにも積極的に取り組んだとされ、その経験から途上国開発における問題点を提起したという。
詳しくは番組ホームページ(http://democracynow.jp)を参照していただきたいのだが、マックスニーフ氏が掲げる「経済理念(公理)」とは以下の通り。

1. 経済が人に仕えるのであり、人が経済に仕えるのではない
2. 開発はものでなく人が対象である
3. 成長と開発は同義ではなく、開発は必ずしも成長を必要としない
4. 生態系の恩恵なくして経済はありえない
5. 経済は生物圏という有限なシステムの下部システムであり、それゆえ永久成長は不可能である

…正直「ドキリ」とさせられた。
昨今の「行き過ぎた経済至上主義」についてはもちろん、このたびの震災による福島第一原子力発電所の事故が頭を過ぎる。
事実上、競争の原理が働いていない電力会社の地域独占により生じた、「人が経済に仕える」という形。
ともすれば「無限に続く経済成長」という幻想をも抱かせる「技術」という言葉。
そして自然および自然エネルギーの存在を「無視」してまで推し進めた原子力政策。

私たちが暮らす社会の歪みを、シンプル且つ的確に指摘する同氏の言葉。
あまりにもタイムリーではないだろうか。
「経済成長」とい聞きなれた言葉の意味について再考を促す。
…いや、それどころではない。
最後の項で、マックスニーフ氏はそれをはっきりと否定している。

―「永久成長は不可能である」

わが国の現政権は、何としてでも東電を存続させたいようだ。
同社が超優良企業であり、今後も「成長し続ける」との幻想に取り付かれているかのようにも見える。
東電救済の資金調達のためには、電気料金の値上げを行い、国(国民)から浅く広く徴収するとの話まで飛び出した。

財務省の顔色を伺い、あえて税金ではなく、電気料金の値上げという形をとったのであろうが、これはまったくの筋違い。
まずは全責任を負うべき東電自らが資産売却などで賠償に充て、それでも足りない分が出た場合にのみ、国会で審議してもらうというのが本来の形ではないのか。
ましてや原子力損害賠償法の適用なんてとんでもない。
このような事態が起きてしまった以上、当事者はその責任をしっかりと全うしてもらいたい。
機関投資家などの株主の損失について優先的に考えてしまっては、周辺住民をはじめとする、直接的に被害を被った人たちへの考慮があまりにもなさ過ぎると言わざるを得ない。
そんなことでは、現在の資本主義社会が「行き過ぎた」と言われても仕方がないのではないだろうか。

「経済が人に仕えるのであり、人が経済に仕えるのではない」―マックスニーフの言葉が辛らつなトーンをもって響いてくる。


余談ではあるが、同氏が出演したこの番組、録画したのはもう随分と前になる。
3月11日の震災よりも前。
テレビ局も、このような形でマックスニーフ氏の主張が日本の現状を指摘することになるとは夢にも思わなかったであろう。

私は、このマックスニーフ氏の考え方に大いに賛同する。
番組HPには動画も掲載されていたので、興味のある方は以下URLからどうぞ。
http://democracynow.jp/video/20100922-2

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登録日:2011年 05月 05日 00:19:28

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