運命の男

■運命の男
「運命の男」に会った。
勘違いされそうな書き出しだが、別に一生を共にするといった意味での「運命」ではない。
お互い既婚者で、いわゆる「non気」の男同士である。
それでもお互いが一緒になる「運命」にあるというのであれば、それはそうなのであろう…。
だがこのケースに限っては、おそらく…いや、ほぼ100%の確立で違うハズ。
そうでないと妻に申し訳が立たなくなってしまう。
のっけから話が脱線してしまった。
この「運命の男」なる人物、実は大学院時代に知り合った友人なのだが、彼の「運命」の部分については今回初めて知ることとなったのである。
現在、都内大塚にあるギャラリー「Misako & Rosen」にて開催中の展覧会『Happy Mind - My View』に出品している友人。
その関係からこの度帰国することとなり、久しぶりに会う手筈をとった。
待ち合わせ場所となった同ギャラリーへと出かけると、そこにはきれいに伸ばした髪を後ろに結んだ一人の男がなにやら作業を進めていた。
「オウッ、久しぶり」
その半ばアメリカンなフランクさを携えた挨拶で確信した―間違いない、彼だ。
ロサンゼルスに活動拠点を構えているせいか、前にも増してこんがりと日に焼けている。
韓国人俳優の某ヨンジュン似(笑)のはずだったのだが、浅黒くなったせいで、どこかもっと逞しくなった感じを受けた。
セルフ「人体の不思議展」+α的(?)な制作活動を続ける友人。
今回の展覧会では、切れ目のない、超ロングな自家製ソーセージを使った映像作品を出品していた。
どこか中央アジアを思い起こさせるリズムに乗って、超ロングなソーセージがうねうねと動き回る映像なのだが、初見の印象は「スネークマンショー」だった。
おそらく逆回転再生による不自然な動きも、そんな印象を抱かせることに一役買っているのだろう。
思わず「レッドスネーク、カモン!」とつぶやくと、周りからは冷たい反応が返って来たのは言うまでもない。
自分、人体、不思議、ソーセージ、逆回転、うねうね、etc.
これらエレメントが紡ぐもの…後はご想像にお任せいたします。
■何がそんなに「運命」なのか
ギャラリーを後にし、近くの居酒屋に場所を移した我々。
久しぶりに会ったせいか、話のネタに困ることはなかった。
そんな中、ふとあることに気が付いた。
友人の口から、「たまたま」とか「偶然」といった言葉が多く発せられるのである。
例えば…ある時、大好きな作家の話をしていると、相手が「たまたま」その作家の知り合いで繋がる事ができた―とか、またあるアーティストにソーセージの作品を見せた際に、「偶然だね、僕もソーセージの作品を作っているんだ」と言われたことがある―など。
後者についてはかれこれ十数年前の話で、これをきっかけにそのアーティストの元で働くことになり、現在もその関係は続いている。
「ソーセージ と アート」…ピンと来た人もいるでしょう。
他でもないポール・マッカーシーさんです。
現代アートでは超有名人ですね。
ほかにも多くの「たまたま」や「偶然」が話にでてくるのだが、中でも極めつけは昨年生まれた子供についてだった。
■生まれ変わりの「運命」
この友人には、昨年秋に子供が生まれている。
本当に楽しみにていたようで、出産に立ち会うため前もって色々と準備を進めていたという。
しかしこの小さな命、予定されていたその日を前倒しすることを決めたようで、友人夫妻は不意打ちを喰らうことになった。
本来ならどこにいても駆けつけるつもりだったというが、海を越えてしまってはやはり難しかったようだ。
出産当日、友人は英国に出張中だった。
大西洋の向こう側から「もうすぐ生まれる」との一報を聞き、相当焦ったという。
それはそうだろう。
「予定日までまだ数週間あるはずなのに、なぜだ?」
「どうにかして早く帰らないと」
「一本でも早い飛行機に乗らないと」
「テロへの警戒?飛行機が飛ばない!」
「俺は爆発に巻き込まれて死ぬのか?」
「海の向こうで生まれるのは…俺?」
「そういえば今日は俺の誕生日だ」
「今日死んで、今日生まれる」
「また同じ誕生日だな」
「運命…なのか」
気が動転している様子がしっかりと伝わってくる。
遠く離れた空港でテロへの警戒が出されるだけでも普通は動揺する。
ましてや妻が産気づいたと聞けば尚更のこと。
奇しくもその日が自分の誕生日ともなれば、変な液体で脳みそが満たされることも容易に想像できる。
これぞ「生まれ変わりの運命」と思い込んでしまうシチュエーション…なの…だろう…か。
■誕生
この「運命の男」、見方によっては「偶然の男」とも形容できる。
中には「奇跡」と捉える人もいるかもしれない。
その違いを考えるとき、自分には明確な答えを出すことができない。
「匙加減」ひとつなのだろう。
私はこの友人について、「偶然の男」や「奇跡の男」ではないと決めた。
「運命の男」がここに生まれた。
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登録日:2011年 07月 13日 01:53:23
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