F1デザイナー/エンジニアになりたい方たちに(最終blog)

<07 F1>レッドブル ニューマシン「RB3」を公開 - スペイン

【バルセロナ/スペイン 26日 AFP】F1に参戦しているレッドブル(Red Bull)が、2007年シーズンのニューマシン「RB3」を公開した。
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(c)AFP/CESAR RANGEL

AFPBB News


 こんなタイトルをつけてしまいましたが、むしろ私の「F1 MUSICAL CHAIRS」ブログを愛してくださっている方々の多くは、現在においてF1はおろか自動車メーカーともあまり関係が無い仕事に就いていて、しかも結構いい歳になってしまった社会の中堅を支えるサラリーマンであったり、学生さんであったりしているのでないかと想像しています。

■中堅エンジニアの平均年俸
 一見華やかなF1デザイナー/エンジニアの世界ですが、その中核をなす中堅エンジニアの平均年俸は6万ドルといいます。2006年のデータなので、日本円にすればおよそ約720万円といったところではないでしょうか。産業別で開きはあるものの、日本人サラリーマンの平均年収と変わらないと考えていいでしょう。むしろF1の人材市場は流動的ですから、待遇としては日本人サラリーマンより低いと言っていいかもしれません。

■文系偏重・理系軽視の構造はいずこも同じ?
 これはF1コンストラクターのほとんどが拠点を置く英国の理系職業人の不満そのものでもあります。組織のプロモーションにおける文系偏重・理系軽視の構造は、日本も英国もそんなに変わりません。現在はルノーF1チームのエンストン側で(英国サイドで)テクニカル・ディレクター補佐を努めるエアロダイナミシストのジェームス・アリソンがルノーF1の前身であるベネトンのチーフ・エアロダイナミシストであった頃のインタビューは印象的です。彼はケンブリッジ大学を出ているのですが、にもかかわらず「イギリスで理工学を学んだ者は、卒業後、その分野に残ろうとしないものが大部分です」と言っていました。「なぜなら、イギリスではエンジニアの賃金が安いからです」と。

 私はアリソンと仲の良いF3のエンジニア(元マクラーレンのテストチーム・マネージャー)にインタビューする機会に恵まれまして、英国に取材に行ったときに携帯でですが少しだけアリソンと話をしたことがあります。2002年のことで、当時アリソンはフェラーリのエアロダイナミシストでした。・・・話はそれましたが、アリソンのように英国で高学歴、高学位を持つ者が規模でいえば中小企業にしか過ぎないF1コンストラクターに就職しようとする理由として大きなものは、平均給与が高いからです。これはアリソン自身を始めとして、多くのデザイナー/エンジニアの証言があります。もちろん人材が流動的なF1の世界で生き残っていくためには賃金待遇だけでなく、彼らがよく言う「enthusiastic」(モータースポーツへの情熱)があることが不可欠な要素であるのことは言うまでもありません。賃金に見合わない仕事であることは、中堅クラスのデザイナー/エンジニアにインタビューしてみると良く分かることです。

■あなたに度胸はあるか?~F1コンストラクターへの就職
 日本でいえば旧帝大で博士課程を修めたような彼らが中小企業に就職する理由がここにあります。1991年、ホンダの後藤治さんがマクラーレンのエグゼクティブ・エンジニアに転職する際、本田宗一郎さんから「マクラーレンは小さい会社と聞いているが大丈夫か」と訊かれたという実話にして笑い話があります。ですので先ほどの話は大袈裟ではなく、英国で名門大学の博士課程を出たような者がF1コンストラクターに就職するということは賃金の面もさることながら、「enthusiastic」でなければならず、今の日本の状況に例えれば、トヨタ等の大企業の研究所や都銀に就職できるようなエリート学生がベンチャー企業に就職するような行為なのです。

■「F1 MUSICAL CHAIRS」で目指したもの
 AFP BB NEWSのオフィシャル・ブロガー、つまり原稿料を頂いてblogを書かせて頂いて丁度一年経ちました。つまりライター契約はこれでおしまい。「F1 MUSICAL CHAIRS」の連載はこの回で最後となります。

 普通のモータースポーツ情報誌では満足できない方たちのために切り口の違う一風変わった記事を書いてきたつもりです。具体的にはつまりどんな記事か?それはF1やモータースポーツ、自動車産業等に関係の無い職業に就いておられる方が読んでも自分たちの日々の仕事にも引きつけて感じることができるような、感情移入できる世界、「職業人」として共通した世界がF1デザイナーやエンジニアの仕事にもあるということ、引いてはF1コンストラクターも個人個人の能力によって成り立っている人間臭い有機的な組織であることを改めて示したかったからです(最近それが徐々に薄れてきていることが指摘されておりますが)。

 フィールドこそ違うにしろ、皆さんもそれぞれの職場のデザイナーであったりエンジニアであったりテクニシャンであったりするし、中にはF1の世界に例えればテクニカル・ディレクターやチーフデザイナー、チーフエンジニア的ポジションで仕事をされている方も少なくないのではないでしょうか。

 実際に就職を考えた場合、F1はまだまだ遠い世界の話かもしれません。特に極東の日本人の我々にとっては。しかしこれまで当ブログ「F1 MUSICAL CHAIRS」で語ってきたように同じ「職業人」によって成り立っている世界であるということを忘れないで下さい。「enthusiastic」に仕事ができれば、今いる職場が「F1コンストラクター」に見えてくるでしょう。

■原稿依頼について
 「F1 MUSICAL CHAIRS」を実績として、今後も「一般モータースポーツ誌の記事とは切り口の違うもの」をプロとして書きつづけていく場所を探しているところです。臆面もなくこんなことを書いてお恥ずかしい限りですが、「久慈護に原稿依頼したい」と思ってくださる関係者の方がおられましたら
 kuji_f1@yahoo.co.jp
まで原稿依頼をいただければ幸いです。

AFP BB NEWSにはオフィシャル・ブロガーとして在籍し、ボランティアとして月イチペースで何か書かせていただけることにはなっておりますので突然のお別れはありません。

またどこかで皆さんと再会できる日があらんことを!

カテゴリー[ モータースポーツ、F1 ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2007年 01月 31日 03:25:17

コメント

お疲れさまでした。
また記事を楽しみにしていますね!

晴天 @ 2007年 01月 31日 07:51:52

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プロフィール
久慈 護
(男)
■現在の職業:図書館職員。
■経歴:米国留学中にパイロットライセンス取得(ME+Inst.)。商船大学を経て、東大先端研で英国モータースポーツ工業を研究。
■得意ジャンル:英国モータースポーツ工業史、「のりもの」全般。IT。スタジオジブリもの。
■ひとこと:キャリア形成や自己実現において、「個」の力だけの徒手空拳でどこまでできるのか、ということに大変興味があります。
■連絡先:kuji_f1@yahoo.co.jp
■原稿依頼はお気軽にご相談ください(^^)
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