メルセデスの技術トップ更迭とマクラーレンの空力部門補強
<F1・第9戦 カナダGP>M.シューマッハ フリー走行2回目を15番手につける - カナダ
【モントリオール/カナダ 23日 AFP】F1第9戦・カナダGP(Canada Grand Prix)・フリー走行2回目。フェラーリ(Ferrari)のミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)は、17周を走行し15番手となる1分18秒549を記録した。(c)AFP/DON EMMERT
メルセデスF1エンジンプログラム(※)のエンジニアリング・ディレクターであったマルクス・デュエスマンが退任したようだ。伏線としては昨年のV10エンジンのパフォーマンス不足と信頼性不足からドライバーズタイトルを逃したことの責任追及から動きはあったのだろうが、V8となった今年もメルセデス・エンジンのパフォーマンス、特に信頼性は改善されておらず、デュエスマンの更迭という結果になったと思われる。
(※)正確にはメルセデス-ベンツ・ハイパフォーマンス・エンジン社
■ダイムラー・クライスラーのエリートエンジニアを更迭
デュエスマンが同社のエンジニアリング・ディレクターとなったのは昨年春のことで、同年秋に行われるメルセデス-ベンツのイルモアF1エンジン部門買収に合わせてメルセデス-ベンツ側から送り込まれた人物であった。デュエスマンはまだ30台中盤と充分に若いエンジニアで、元々はメルセデス-ベンツの母体であるダイムラー・クライスラー社の研究所でディーゼルエンジンの開発を行っていた。
■メルセデスを引き継ぐエンジニア
デュエスマンの仕事は当面アクセル・ヴェンドルフとアンディ・コーウェルが引き継ぐようだ。ヴェンドルフは2004年にメルセデス(当時はイルモア)に加入したエンジニアで、それ以前はトヨタ(TMG)でF1エンジン開発を行っていた。
一方のコーウェルはF1界を騒がせたこともある有名人(?)である。元々コスワースのエンジニアで、BMWのF1プロジェクトが開始される際、BMWにチーフデザイナーとしてヘッドハンティングされ(正確にはHead of Pre-Development Engine Design)、プロトタイプエンジンの責任者として迎えられた人物である。同年のクリスマスに引退したBMWの名物エンジニア、パウル・ローシュの後継者に目されていた。
コーウェルはコスワースのF1エンジン、CR-1・V10エンジンのキーパーソンの一人で、シリンダーヘッドとカムシャフト周りのデザインを担当していたといわれる。BMWは2000年からのデビューに備えて、1999年の初頭には既にプロトタイプエンジンを完成させていたが、ライバル達のエンジンに比べて大きく重かった。そこで軽量コンパクトで信頼性もあるコスワースCR-1に目をつけ、そのノウハウを輸血しようとしたわけだが、1999年の9月にミュンヘンのBMWに移籍したコーウェルはわずか2ヶ月在籍したのみで、すぐコスワースに戻ってしまった。このコーウェルの行動には不明な点が多いが、2003年にイルモアにチーフ・エンジニアとして移籍し、メルセデスF1エンジンを開発していた。
■マクラーレンの空力部門補強?
エアロダイナミシストにも大きな動きがありそうだ。BARを離脱することが確実となったジェフ・ウィリスに関しては後日改めて取り扱うつもりだが、面白いのはマクラーレンがルノーの空力部門でプロジェクトリーダの職にあるNicolas Hennel de Beaupreauをヘッドハントしようとしていることだ。ニコラス・トンバジスやピーター・プロドロモウら、一流エアロダイナミシストの流出を補う意味でのリクルートであるなら、非常に興味深い。
Hennel de Beaupreauはこれまでメディアに露出することのなかったエンジニアである。1997年のベネトンを皮切りにF1エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたエンジニアであるようだ。専門は空力だが、CFDの専門家のように見える。ベネトンに2年、フェラーリに2年在籍し、2003年よりルノーで現在に至るようであるが、ベネトンとフェラーリ時代はどうやらCFDエンジニアであったようだ。現在プロジェクトリーダーであるようだが、CFDチームのリーダーなのかどうなのか。トンバジスもプロドロモウも元々CFDが専門のエンジニアであった。中堅CFDエンジニアを将来の空力部門幹部候補とマクラーレンがみなしているのであれば、今後のエアロダイナミシストの動きやF1コンストラクターが幹部エアロダイナミシストに求めているものを知る意味で非常に興味深い。
ちなみに筆者も大学院(修士)時代はCFDをやっていた・・・蛇足でした。
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登録日:2006年 06月 21日 20:36:52
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- プロフィール
- 久慈 護
- (男)
- ■現在の職業:図書館職員。
■経歴:米国留学中にパイロットライセンス取得(ME+Inst.)。商船大学を経て、東大先端研で英国モータースポーツ工業を研究。
■得意ジャンル:英国モータースポーツ工業史、「のりもの」全般。IT。スタジオジブリもの。
■ひとこと:キャリア形成や自己実現において、「個」の力だけの徒手空拳でどこまでできるのか、ということに大変興味があります。
■連絡先:kuji_f1@yahoo.co.jp
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