コルチャックのこと
<テニス 07全豪オープン>女子シングルス、シャラポワ ズボナレワをストレートで降し準々決勝進出 - オーストラリア
【メルボルン/オーストラリア 22日 AFP】テニス、全豪オープン(Australian Open tennis tournament 2007)、女子シングルス4回戦。
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(c)AFP/WILLIAM WEST
【老兵は死なず】
ぼくのブログも今回が最終である。1年書き続け、延べ20,000人近い人に読んでいただいた。読んでいただいた方々には心から御礼を申し上げたい。読んでいただいた方が素晴らしい人生を送れることに、少しでもお役に立てれれば、ほんとうにうれしい。書き終わり、「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」というマッカーサー元帥のスピーチがこころをよぎる。ある年齢を超えると、人生の舞台で演じる役割は、次第に主役から脇役へと移り、そして花道からではなく、そっと舞台の袖に消えていく自分を実感するようになる。大きな仕事を終えるたびに、これで自分の仕事の一つは終わったな、と寂しい感傷がこころを満たす。夕暮れの光と同じで、輝かしさはあっても、寂しい思いはぬぐえない。
【コルチャックのこと】
ブログの最後にぼくの人生のロールモデル(こんな人になりたいな、と思える理想の人物)ヤヌシュ・コルチャックのことを書きたい。ポーランド映画界の巨匠アンジェ・ワイダの「コルチャック先生」でも有名になった人である。コルチャックはポーランドの小児科医で、卓越した教育家であり、優れた童話の書き手であった。孤児院を設立し、独創的な教育手法で孤児たちの成長をサポートをしたことでも知られている。ユダヤ人であったので、1942年、ナチスにより、トレブリンカ絶滅収容所で、自分の育てた子どもたちとともに殺された。彼の教育は、子どもたちの自律性を重んじて、徹底的ともいえるくらい自由な教育を行う一方で、子どもたちが自分の人生を、責任を持って生き抜くための意志力を育てることも重視した。彼の著作を読むたびに、襟を正す思いにとらわれる。ぼくの人生が終幕を迎える前に、もう一度、子どもたちといっしょに学べる仕事がしたいと願っている。
【よりよい生への願望】
孤児院を卒業する子どもたちにむかって、コルチャックが贈ったはなむけのスピーチが残されている。(注)子どもたち一人一人が、よりよい人生を送りたいという願いが持てるように、コルチャックが真摯な教育の努力を続けたことがうかがえるすぐれたスピーチである。人生を悲惨なものにするのは、生きることの価値を否定し、人間の尊厳を卑しめる虚無主義であろう。エクセレントな人生を実現しようとすれば、私たちのこころの中に、確固たる「よりよい生への願望」を養い育てなければならないとぼくは考えている。コルチャックの子どもたちへのスピーチの最後の言葉で、このブログを締めくくりたい。「お元気で旅をされますように」
注:ベッテルハイム「フロイトのウィーン」みすず書房 森泉弘次訳 p325
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登録日:2007年 01月 23日 18:39:32
スピリチュアルな話
【マドリード/スペイン 22日 AFP】動物の守護神として知られる「聖アンソニー(St. Anthony)」の祭礼を迎えた17日、スペイン全土では飼い主らがペットを連れて一斉に教会を訪れた。
写真は17日、マドリードのサン・ミゲル教会の前で、ペットの犬に神の祝福を受けさせようと順番を待つ男性。(c)AFP/PIERRE-PHILIPPE
【スピリチュアルって何?】
単行本や雑誌の出版広告を眺めていると、スピリチュアルとか、魂などの言葉に出会うことがある。ぼくはスピリチュアルとは何かがよくわからない。ぼく自身は、教会のミサにもほとんど行かないが、カトリックの洗礼は受けているし、信仰も持っている。しかし、「スピリチュアルな生き方をしよう」とか「自分の輪廻転生を語る」などの話がでると腰がひけてしまう。フランスの精神分析家のジャック・ラカンは「人間は自分が何者かを語ることができない」という意味のことを言っている。自己言及できないような存在である私たちが、自分の魂について説明できるのだろうか?まして前世にさかのぼって自分を発見するとか、自分のみならず、他人の魂まで洗い清めるなどができるのだろうか?できると信じる人を非難する気持はない。カトリック信仰も、それを信じない人にとっては荒唐無稽な話であるからだ。
【スピリットは構成概念ではないか】
構成概念は、「とりあえず、その存在があると仮定したら、ある現象がたいへんうまく説明できるコンセプト」で、統計学などでよく使われる。「知能」も構成概念の一つである。計算を正確にできる人と、計算がまったくできない人がいて、年齢、健康状態、教育機会などが同じであれば、その違いの背後に「知能」というものが影響を与えていると想定すれば、計算能力の違いをうまく説明できる。知能を実際に見た人もいないし、手に取ることもできないが、学業成績や仕事の成果を予測したり、その差を説明するのに、とても便利である。神や、スピリットは構成概念だと、ぼくは考えている。神は、「とりあえず存在すると仮定して、毎日の生活を送ると、幸福な感情をもちやすくなるもの」だとぼくは思っている。「とりあえず」というところがミソで、とりあえずだから、自分が間違っているかもしれないという可能性にもこころを開けている。スピリチュアルもそれと同じ類のもので、とりあえずスピリットが人間のこころのなかに宿っていて、それを洗い清めれば人間は幸せになると、個人が信じることはすばらしいことだが、「とりあえず」が「絶対」という言葉に代わると、要注意である。
【オープンな場所の大切さ】
劇作家の平田オリザさんは、演劇ワークショップは人間微妙な心理の動きを取り扱うので、オープンな空間で実施するようにしているという意味のことを書いておられた記憶がある。ぼくは平田さんの意見には大賛成である。オープンであるためには、研修空間が物理的にも、心理的にも、社会から隔離されていないこと、参加者は研修に自由に参加し、気に入らなければ退席や批判が可能であること、研修を主催する講師が絶対的な権威を持たないことなどいくつかの条件を満たすことが必要だと、ぼくなりに考えている。なんらかの心理学系の研修プログラムに参加をしよう思う人は、参加希望のプログラムがオープンなものなのかどうかを事前に確認することをおすすめしたい。
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登録日:2007年 01月 23日 18:29:05
自信を持てない人のために
<テニス 07全豪オープン>女子シングルス、シャラポワ ガルビンを降し4回戦進出 - オーストラリア
【メルボルン/オーストラリア 20日 AFP】テニス、全豪オープン(Australian Open tennis tournament 2007)、女子シングルス3回戦。
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(c)AFP/WILLIAM WEST
【自信を持てる人と自信を持てない人】
自信を持てる人がすばらしいが、持てない人は自信をもつべきだ、と単純には割り切れない。20世紀を代表するオペラ歌手マリア・カラスの生涯を振り返ったとき、彼女は「自信を持てない人」に分類されるかもしれない。オペラの歴史を変えた大歌手なので、自信にあふれて当然なはずなに、リハーサルにおいても完璧を期した彼女のこころの底には、本番で大きな失敗をするかもしれないというおそれがあったように思われる。世界のトップレベルにいる人たちは、いままでだれもやったことがないことにチャレンジするので、常に失敗の不安を抱えることことになる。もし、私たちがより高いレベルの課題に挑戦しているがゆえに、自信が持てないならば、その苦しみは一種の勲章だと考えてよい。しかし、毎日同じことを繰り返しているにも関わらず、自信が持てないのであれば、おおいに問題があると自省すべきであろう。以前にも書いたのだが、自信を持っている人でも、不安はある。反対に、まったく不安がない人は、過信であったり、自信を無理に抑圧している可能性があり、要注意である。不安と共生してこそ、ほんものの自信と考えたほうがよい。
【自信を持てない人のための処方箋】
“Applied Sport psychology”( Jean M.Williams Mayfield出版 p46)をもとに、とくに難しい課題に挑戦していないにも関わらず、自信がもてない人のための処方箋をまとめてみた。
(1)小さくてもよいから、困難な課題に挑戦し、成功を積み重ねる
(2)ほかのアスリートができるなら、自分もできるはず。自分よりも少しだけできる人をベンチマークをせよ
(3)優れた師をみつけ、信頼関係を築く。信頼できる人から言われた適切なアドバイスは大きく自分を成長させる。
(4)どんな状態でもベストを尽くせる心身の状態を作り出せるように、自分を鍛える(自律訓練法、呼吸法など)
(5)ネガティブな感情を感じても、それを利用して、ポジティブな思考ができるようにする
(6)高い目標に挑戦するとき、念には念を入れて準備し、リハーサルもしっかりやる(イメージで目標達成までのシミュレーションを何度も行う方法もよい)
上記の6つから、自分が納得できる方法を選択し、1つでもよいから完全にマスターすること。
【自分が納得できる方法を選ぶ】
メンタルトレーニングにはたくさんのトレーニング法があるが、どの方法も万能ではないし、人によって効果も違う。一般的に良く知られたイメージトレーニングも効果のあるアスリートもいれば、効果のないアスリートもいる。自信を持てずに悩んでいる人は、紹介した6つの方法を1つづつやってみて、効果がある方法を取り入れればよい。私自身は一番目の「小さくてもよいから、困難な課題に挑戦し、成功を積み重ねる」方法がぴったりくる。4番目の自律訓練法的なアプローチは苦手である。幼いころ身体が弱く、行動や生理状態を変えようと努力しても、いつも裏切られてきた体験が染み付いてしまっているからだと思う。くれぐれも無理に効果があると信じ込まないようにしていただきたいと願っている。
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登録日:2007年 01月 21日 17:59:55
折かえし地点をどう折り返すのか
<ダカールラリー2007>エルマー・シモンズ 第4ステージで事故のため死去 - モロッコ
【ワルザザート/モロッコ 9日 AFP】ダカールラリー2007(Dakar rally 2007)、二輪部門・第4ステージ(エルラシディアからワルザザート、競走区間405キロメートル/総距離679キロメートル)。
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(c)AFP/FRANCISCO LEONG
【スポーツの折り返し地点】
昨年の12月24日に帯広で行われた全日本スプリントの試合が、スピードスケートの今シーズンの折り返し地点になる。後半戦の戦い方は、前半戦の結果に大きく影響される。スピードスケートの場合は、前半戦の戦績がよければ、日本のトップ選手として、世界のひのき舞台であるワールドカップや世界距離別選手権、それに今年はアジア大会に出場できる。反対に結果が残せなかった選手は、国内にとどまり、マスコミが注目しない大会に出場することになる。世界で戦う選手と、日本で戦う選手では、試合レベルが違ってくるため、緊張感や意気込みも変わる。折り返し地点といっても前半と後半では、選手が体験する情景はまるで違ってくる。世界で戦えば、技術的に得るものが多く、それが次のシーズンに影響してくる。
競馬では先行して逃げ切る馬と、前半を抑えておいて、後半一気にトップに躍り出る馬がいるが、スピードスケートでは、前半不調で、後半調子を上げてくる選手は少ない。夏場のトレーニングをしっかりやって、万全の肉体と技術を作り上げた選手が、シーズンを通して活躍するのが普通である。スケートは非常にデリケートな競技で、すべるとき、身体の軸の僅かなずれがあると、0.1秒とか0.2秒の遅れが生まれ、よい競技結果が出なくなる。シーズン中にずれの修正をすることが困難で、不調な選手はシーズンを通して調子がでないまま終わる。悪いことに、前半絶好調でも、正月休みで調子を崩したり、スタミナぎれで下降線をたどる選手もいる。折り返し地点を過ぎると、悪くはなっても、よくは成らないのが、スケートの怖さである。
【人生の折り返し地点】
人生の折り返し地点はどこにあるのかは分からない。その人の人生が終わってから、振り返ってみれば、あそこが折り返し地点だったのではないかと初めて分かるものではないだろうか。スピードスケートにせよ、サッカーにせよ、シーズンがある競技は、シーズンの日程を半分にしたところが自動的に折り返し地点である。マラソンでは距離の半分。しかし人生は、人によって生きる長さが違うので、時間を半分にできない。最終のゴールをあらかじめ知ることができないので、厳密に言えば折り返し地点などはない。終身雇用と年功序列が一般的だった20年くらい前のサラリーマンの世界では、課長に昇進した時点が折り返し地点と考える人が多かったように思われる。現代のビジネス社会では、課長昇進は折り返し地点の目安にはならない。昇進する年齢もばらばらだし、課長というポストがない会社もある。仮の折り返し地点をそれぞれの人が自分で決めるしかない。ただし、折り返し地点までの前半が悪くっても、後半の展開は予測できない。この波乱万丈さが人生レースの醍醐味であろう。折り返し地点と思しきところにきたとき、あまり肩に力を入れず、過去にもとらわれず、残された時間の短さを嘆くこともなく、いままでよりも「よりよく生きる」ことに集中したほうがよいと、個人的には考えている。
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登録日:2007年 01月 10日 23:35:03
ベテラン選手の偉大さ
【東京 30日 AFP】イングランド代表チームの元キャプテン、デビッド・ベッカム(David Beckham、31)選手が29日、携帯電話のプロモーションのため来日した。
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(c)AFP/Yoshikazu TSUNO
【勝ちにいけるすごさ】
2006年のスピードスケートの最終戦は、12月23日と24日に、帯広で開催された全日本スプリントだった。ダントツ光ったのが、岡崎朋美、清水宏保、田畑真紀の3人のベテラン選手たちである。いずれもオリンピックに3度以上出場している強豪である。清水と岡崎は、10月のシーズン開始から12月の帯広の全日本スプリントに照準を合わせている感じだった。順位や記録がよくなくっても動じる様子がまったくなく、ぴったり12月23日に、今シーズンの、第一のピークをもってくるように調整をしていた。田畑はシーズン開始から快進撃を続けていた。田畑は長距離の選手なので、持久力や疲労に対する耐性がほかの2人の選手よりもあり、すべての試合に全力投球しても大丈夫という自信がある。短距離専門の選手は、田畑の真似はできない。500メートルと1000メートルを全力で滑り終えると、疲労困憊してしまう。シーズン後半まで戦い続けるためには、すべての試合に全力投球はできない。1つのシーズンでピークにもっていく試合は多くても3試合くらいだと思う。清水、岡崎以外の短距離選手も事情は同じで、帯広は、後半に予定されているアジア大会やワールドカップの選考会を兼ねているので、何が何でもいい結果を残さなくてはならない試合だった。しかし結果は、清水、岡崎、田畑の3人が狙い通りの試合結果を出した。単なる「勝てる選手」ではなく、「勝ちにいける選手」であることを証明した。
【なぜ勝ちにいけるのか】
スピードスケートは、非常にデリケートなスポーツで、理由がよくわからないまま、スランプに陥り、抜け出られないことがある。ひどいときには、2年も3年も不調が続き、引退に追い込まれることもある。1、2年はワールドカップなどの国際試合で目の覚めるような活躍をしても、そのあと調子を崩して、大成できなかった選手のほうが多いと言ってもよいくらいである。清水、岡崎、田畑の3選手は、20年近い歳月を、多少の調子の波があっても、常にトップを争ってきた。3選手に共通するものは、おそれを知っていることと自律している点だ。練習や試合で、少しでも感覚に違和感があると、神経質なくらいその原因を究明し、真剣に改善対策に取り組む。自分で考え、行動し、自分なりの評価軸をもっていて、納得できるまで試行錯誤を続ける。優れたビジネスリーダーも3選手に共通している。優秀なビジネスリーダーは、ビジネスの怖さを身に染みて知っているし、自律性が高い。他人を頼らないで、問題を直視し、自分で判断し、行動する。彼らに他責という言葉はないのではないか。勝ちにける選手になるためには、警戒信号をキメ細かく受け止め、素早く自律的に軌道修正するノウハウが必須だと思う。
【田畑真紀選手が目指すもの】
田畑のすばらしさは、長距離選手であるにもかかわらず、帯広でもそうであったように、500メートルや1000メートルの短距離に果敢な挑戦を続けることだ。しかもすばらしい結果を出している。田畑選手が目指すのは、かっても氷上の女王橋本聖子選手(現在の日本スケート連盟会長)である。橋本選手は、短距離から長距離まですべての競技を制覇したスーパースターであった。現在のスケート界は短距離と長距離はそれぞれ専門化しており、両方を制覇することは不可能とされている。その高い障壁に田畑真紀選手は挑戦している。彼女が橋本聖子の後継者になりうるか、バンクーバー・オリンピックまで、ぜひ温かい目で見守っていただきたい。
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登録日:2006年 12月 31日 11:28:52
初一念をつらぬく
<第39回サハラ・フェスティバル>ショット・エル・ジェリドの朝日 - チュニジア
【ドウーズ/チュニジア 26日 AFP】】毎年12月にドゥーズで開催されるサハラ・フェスティバル(The International Festival of the Sahara)が、24日に開幕を迎えた。
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(c)AFP/FETHI BELAID
【真山青果は元禄忠臣蔵を通して何を私たちに伝えたかったのだろうか】
劇作家真山青果の傑作「元禄忠臣蔵」3部作を観た。戯曲は岩波文庫に収録されているので、その傑作ぶりを文字を通して知っていたが、実際の舞台を観ると、いっそう、その魅力を余すところなく、堪能することができた。主人公の大石内蔵助は、日本人の大半がエクセレントと思える人物である。歌舞伎の仮名手本忠臣蔵はもちろん、歴史家でも大石のことを悪く書く人は少ない。なぜ、大石内蔵助は日本人の心をつかんで離さない人物なのだろうか?「元禄忠臣蔵」で、真山青果は、「初一念を貫き通す」すばらしさ一点に絞って、大石というエクセレントな人間を描いた。主君浅野内匠頭が、江戸城内で吉良上野介を切りつける事件が起きる。その事件の処罰はたいへん不公平なもので、吉良にはなんらお咎めなく、浅野内匠頭は切腹、藩は取り潰しになる。その報を聞いたとき、大石の最初に考えたこと、つまり初一念は、不公平さを正すことであった。単に主君の仇である上野介の首をとることが目的でなく、鎌倉幕府以来の武家法で決められていた喧嘩両成敗を踏みにじった江戸幕府への政策を正すことであった。そんなことをしても、大石たちには何のメリットもない。しかし大石は、自分と同志の生命をかけ、初一念を貫く通すのである。
【I have a dream】
「元禄忠臣蔵」のフィナーレを飾る「大石最後の日」で、真山青果が追い求めたテーマがくっきりと表現される場面がある。吉良邸討ち入りに対する幕府の裁きが決まるまで、大石は同志とともに細川家にお預けとなる。細川家の若君が大石たちを見舞いにきて、大石に「何か自分の一生の宝となるような言葉を教えてほしい」と依頼する。大石は「人はただ初一念を忘れるな。事にあたってまず浮かぶ初一念、損得を考えずに思い立ったことに善悪の誤りはない」と未来の細川候に語る。人間はあれこれ考えすぎると、いつの間にか欲得に惑わされ、表面的にはきれいごと、実際は自分の利益だけを優先した意思決定をしてしまう。むしろ何か事が起きたら、自分の損得を抜きでぱっと閃いた考えを行動に移し、最後までやり遂げることで、人間として正しい身の処し方ができると真山青果は言いたかったのだろう。マルティン・ルーサー・キング牧師もまさに初一念を貫いた一人である。アフリカ系アメリカ人たちは、1950年代までは酷い差別を受けていた。レストランや学校は黒人と白人は別々であった。トイレですら白人用は清潔で、黒人用は不潔きわまりない状態であった。その差別の現状を目の当たりにしたキング牧師は、このような差別は許されるべきでない、と思い立ち、公民権運動の先頭にたつ。キング牧師の有名な”I have a dream"の演説は、初一念の集大成であり、自分の損益を考えずにひたむきに生きたキング牧師の姿に私たちは感動するのである。
【なぜ初一念は損得を超越するのだろうか】
中学校で、EQについて講演する機会があり、そのとき中学生に感想文を書いてもらうことにしているが、感想文を読むと、大人よりもEQのことを深く理解している中学生にしばしば出会う。『中学生は、世の中のことを大人ほど多く知っているわけではないのに、正しい判断ができる』と考えるよりは、『世の中のことを大人ほど知っていないがゆえに、正しい判断ができる』と考えるべきだと思う。世の中の仕組みを知りすぎると、損得勘定ができるようになり、ほんとうの知恵が曇ってしまうのではないだろうか?子どものときのほうがよい考方ができるのが普通の人。大石内蔵助は、世の中のこと知りすぎるほど知った人間であったにも関わらず、損得抜きの決断ができた。ここが大石のすごさだと思う。
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登録日:2006年 12月 27日 21:45:16
芸術のすすめ
<フィギュアスケート 06-07グランプリシリーズ・ファイナル>浅田 2連覇へ向け首位スタート - ロシア
【サンクトペテルブルク/ロシア 15日 AFP】フィギュアスケート、06-07グランプリシリーズ・ファイナル、(Figure skating Grand Prix Series Final 2006-07)、女子シングル・ショートプログラム(SP)。2連覇を狙う日本の浅田真央(Mao Asada)は、69.34点を記録し、首位に立った。(c)AFP/ALEXANDER NEMENOV
【ヨコメシの話題は芸術にかぎる】
ぼくが会食をしていて、話題に困るのは仕事ばっかりしているビジネスパーソンが相手のときである。反対に話題に困らないのが、欧米のビジネスパーソンである。その違いは芸術にある。ワインやビールを飲みながらの会食は、通常、ビジネスの話し合いのあとである。会食中にビジネスの話を蒸し返すこともあるが、ビジネス以外の話題に移ることが多い。そのときの話題が問題である。政治の話題は、各国の興味の対象が違ったり、利害がぶつかって思わぬ感情問題に発展することがある。とくに中国や韓国の人といっしょのときは政治テーマは避けたほうが無難である。ヨーロッパの人たちとは政治的利害が離れすぎていて、共通の話題がなかなか見つからない。最近なら、アメリカのイラク政策への批判くらいでおしまい。アメリカ人とは政治的話題で盛り上がれる。政治的話題が夕食で語り合えるかどうかという問題は、日本の国際的位置が色濃く反映されていると思う。欧米のビジネスパーソンとは、ぼくはたいてい芸術の話をすることにしている。オペラ、バレエ、文学、映画などを話題にすると、夫人同伴のときなどは、さらに都合がよい。ビジネスに関係がない人も話の輪に加わることができるからである。このブログを読んでいただいている若い読者は、僕たち全共闘世代よりも、はるかに多く、国際的な社交の場に参加する機会が多いので、芸術の造詣を深めることをおすすめしたい。
【芸術は人間理解のもっともよい方法である】
ぼくは長年、心理学を勉強しているが、人間を深く理解しようと思えば、芸術のほうが適している。例えば、フロイトの著作を読むよりは、ロジェ・マルタン・デュガールの「チボー家の人々」や、ロレンスの「チャタレー夫人の恋人」を読んだほうが、性と深層心理の関係についてよく理解できるようになるだろう。嫉妬という情動について知りたいなら、感情心理学の本を読むより、シェイクスピアの「オセロ」を読むことをお勧めしたい。アムステルダムにあるレンブラントの「夜警」を観れば、全盛期のオランダ市民のエネルギーと、独立心旺盛な精神を理解するこができる。すぐれたリーダーは、おしなべて人間通である。部下の感情や考え方がわからないで、組織を統括することはできないからだ。もしあなたが、すぐれたリーダーになりたのなら、質の高い芸術にふれるべきであろう。
【成果主義と芸術】
昨今、成果主義の評判が良くない。年功序列よりも長所が多い考え方だと思うが、導入された時期がよくなかったのかもしれない。日本の経済力が下降線になり、中国や韓国の企業の追い上げにあう時期と重なったため、ビジネスの現場にものすごい負担がかかった。おまけに株主価値を大きくするプレッシャーが経営トップを人員削減へとへとはしらせた。成果主義は、企業に余裕があれば、成果にいたるまでのプロセスも丁寧に評価して弊害を少なくすることもできる。しかし、結果がすべてだ、、無駄なものを切り捨よ、となれば副作用も大きくなる。企業が芸術やスポーツを支援することが悪者扱いされ、企業活動にみずみずしさが消えた。みずみずしさが消失すれば、創造性も衰退する。フィレンツエのメディチ家が芸術に費やした金額は莫大なものであり、現代の経営学の視点では、すべて無駄な経費になってしまう。しかしその無駄がルネサンスを生み出した。企業の第一線で働くと、ついつい芸術の香りから遠ざかりがちだが、遠ざかれば遠ざかるほど、人間の心は枯れて、生きる喜びも失われる。どんなに厳しい環境になっても、美しい絵画や、感動する演劇などを愛し続けよう。芸術を愛することで、私たちはエクセレントな人間として成長できる。
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登録日:2006年 12月 16日 21:58:27
手軽にできる気分転換
<サッカー 欧州チャンピオンズリーグ>バルセロナ ブレーメン降し決勝トーナメント進出を決める - スペイン
【バルセロナ/スペイン 5日 AFP】サッカー、欧州チャンピオンズリーグ(Champions League)・グループA・第6節。
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(c)AFP/PHILIPPE DESMAZES
【長いシーズンを乗り切るために】
スケートシーズンの折り返し地点は12月末に開催される全日本距離別選手権である。この大会で1月から3月までのシーズン後半のワールドカップへの出場者が選ばれる。このころになると夏場のトレーニングで蓄えた筋力や持久力が消費されて、疲労が蓄積し始める。前半戦好調に戦ってきたアスリートが、そのままの調子をシーズン後半に持続できる保証はない。前半戦、調子がでなかった選手は、このままずるずるとシーズンが終わってしまうのでないか、と不安に駆られる。シーズン後半に焦点をあてて計画を立てていた選手も、計画通り後半戦で調子を上げれるかどうかはわからない。前半戦を重視しないと頭で割り切っていても、負け試合が続くと気がめいってくる。メンタルコーチが活躍するのは、このような場面である。シーズン前半のことは清算し、後半戦を新たな気持ちで乗り切れるよう対話を続けることになる。同時に気分転換の方法もいくつか処方しなければならない。
【切り替えがうまい選手はメンタルワイズな選手である】
アスリートの中には、おどろくほど気分転換がうまい選手がいる。ぼくはそのような選手をメンタルワイズネス(自分のこころをうまく働かせる賢さのこと)が発達していると評価している。気分転換のうまい選手の特徴は次のようなものだ。
①未来志向である:過ぎ去ったことは変えられないと割り切り、次に何をすればよいかに集中できる。人間は過去を変えることはできないし、未来を自由に左右することもできない。しかし今日しなければならないことをきちんとしていけば、未来は多少なりともよい方向にすすむことは期待できる。メンタルワイズなアスリートは、よりよい未来を手に入れるために、今日何をすべきかを考えて、それを行動に移している
②明るく振舞う:人間の性格は複雑で、一筋縄ではいかない。切り替えがうまい選手の性格はわからないが、言動はいつも明るい。監督やコーチに叱られても、素直に叱られ、反抗的な態度はとらない。おそらくものの考え方の根底に、自己責任の考えがしっかり根を張っているのだろうと思う。自分の成績が悪いことを他人の責任にしているうちは、トップアスリートにはなれない。反抗的な態度をとる選手は、他人の影響で自分の成績が伸びないと思っているから、他人を受け入れまいとする。他人の影響を受けまいとすればするほど、かえって他人の影響を受けてしまう。
③自分を責めないで、自分を奮い立たせる:自己責任をしっかりと担うアスリートは、自分を責めない。自己責任を感じることと、自分を責めることは別である。自分を責めると、気分が落ち込み、かえって成績が下がってしまう。アスリートの目標は試合で最高の力を発揮することである。自分を責めても、自分のベストを尽くせないことを、責任感の強いアスリートは知っている。彼らは自分のベストを尽くせるように、自分を奮い立たせる。
【手軽にできる気分転換】
前述した3点は、一朝一夕にできることではない。意識しながら、少しずつ賢明な自分を築きあげていくのである。築きあがるまで、手軽にできる気分転換方法を身につけたほうがよい。おすすめの気分転換方法は5つある。
1.深呼吸をする。深呼吸をすると、セロトニンなどの神経伝達物質が活発に分泌されるようになると言われる。セロトニンは神経を安定させる作用がある。また深呼吸で息をはくとき、身体から無駄な力を抜くイメージをするとリラクゼーションの効果がます
2.暇を見つけては、身体を動かし、血液やリンパ液の流れをよくする。身体の動かし方は、有酸素運動のほうが気分転換には効果があると思われる。生理学の勉強をしていると、血液やリンパ液の流れを良くすることが極めて重要なことがわかる。漢方などで身体を温めることを推奨するのも同じ理由からだ
3.友人や家族との会話を活発にする。話を聴いてもらうことは最高の気分転換の一つである。周囲の人とよい人間関係をつくることはメンタルワイズネスの基本である
4.よく笑うこと。面白くもないのに笑えないので、面白いことを見つけるように努力しよう
5.自分が元気を回復する場所を見つけておき、ときどきその場所にいくこと。あんまり遠いところではいけないので、身近な土地がよい。意外なところが見つかる。
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登録日:2006年 12月 07日 21:40:08
長い旅
<サッカー セリエA>ACミラン マルディーニのゴールでメッシーナ降す - イタリア
【ミラノ/イタリア 25日 AFP】サッカー、イタリア・セリエA・第13節、ACミラン(AC Milan)vsメッシーナ(Messina)。ACミランのパオロ・マルディーニ(Paolo Maldini)は前半13分に先制のゴールを決める。試合は1-0でACミランが勝利した。写真は得点を決めチームメイトのマレク・ヤンクロフスキー(Marek Jankulovski、右)と共に喜ぶマルディーニ(中央)。(c)AFP/PACO SERINELLI
【白米、梅干、たくわん、味噌汁の時代ではないけれど】
日本が第2次世界大戦でアメリカに敗れた理由の一つに、食べ物の違いがあげられることがある。アメリカはパン食で、ジャムや肉類も缶詰にでき、極めて効率よく運搬できるし、火をおこさなくても食事が可能だ。それに対して、日本兵は、米の飯を炊かなくてはいけない。飯を炊くには火をおこす。火がおこれば煙がでる。煙がでれば所在がわかり、砲撃の目標になる。それに副食物の沢庵やミソ、梅干などは、ジャムやベーコンに比べてかさばるため、輸送がたいへんである。戦争に負けた後の昭和20年~30年代は、アメリカの食事がいろんな点ですぐれていると宣伝され、学校の給食はパンや脱脂粉乳がメインディッシュだった。そのためか今でも、ホテルの朝食でパン食をとるのは中高年の人たちだ。若い人は日本食のよさが見直された時代に育ったので、和食が多い。昭和20年~30年代では、明治や大正生まれの人たちは洋食を毎日食べる生活になじめず、海外旅行に行くときは、大量の米、梅干、沢庵などを持参する人が多かった。当時は今と違って、海外に日本食材を販売する店がほとんどなかったからだ。今は日本食材は海外の大都市であれば手軽に買えるので、お米などを持参する人はあまりいない。ところが、スポーツ界では若干事情が違う。スピードスケートのメンタルコーチとして海外遠征に同行することがある。コーチや監督の部屋に入ると、カップ麺、お米、醤油、漬物、インスタント味噌汁、海苔などがや山積される。海外遠征は1ヶ月以上続くので、途中で選手たちは現地の食事にあきてしまい、ご飯にふりかけをかけたり、ときには自分たちで日本食を調理して食べる。選手たちの食卓に限っていえば、明治や大正世代の人が海外旅行をしたときの食卓と変わらないかもしれない。
【ふりかけで体力増強ができるのか】
栄養学的に言えば、お茶漬けふりかけよりも、マッシュポテトを食べたほうがアスリートに食事としては理にかなっているように思われるが、情緒的な安定を考えると、お茶漬けふりかけを食べたいと思ったときに、いつでも食べれる状態のほうがよいのだろう。海外遠征は、それを経験したことがない人には想像ができないほど過酷である。ぼくはビジネスの出張も経験しているが、スポーツのほうがあるかにきつい。試合と練習の合間に移動日がくる。疲れがたまれば食欲も落ちる。国際試合はマスコミも注目するために緊張感が高まる。遠征は団体行動を強いられるので、自分のペースですごすことができない。たまの休日には、洗濯をしなければならない。食事くらいは自分の食べたいものが食べたくなる。人間が自分の限界に近づくと、潜在意識に眠っていたものが目覚めるので、子どもの頃から食べなれているものが欲しくなる。かくして旅が長ければ長いほど、日本食の準備が必要である。
【子どものときからバランスのとれた食生活をしておくこと】
世界のトップアスリートたちは、競技種目に関係なく、競技能力を向上させるための食べ物をとるように心がけている。日本のアスリートたちも同様である。しかし長期の遠征では、心理的な疲労を癒すために、子どものころから慣れ親しんだ食べ物が食べたくなる。もし、子どもの頃に好き嫌いが激しくて、偏食の習慣が身についてしまったり、栄養的にみて疑問がある食事をしていると、長期の遠征に出ると、たちまちにして栄養バランスがとれなくなり、体力低下に拍車をかけてしまうおそれがある。つまり世界に通用するトップアスリートが育つためには、子どものころから、好き嫌いをなくし、バランスのよい食事をしておく必要があると思う。少年野球や少年サッカーの試合で、熱心なお母さんやお父さんの姿をしばしば見かける。目の前のわが子のプレーに一喜一憂することもすばらしいことだが、日ごろの食生活にぜひ心配りをお願いしたい。
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登録日:2006年 11月 26日 22:34:24
農耕型メンタルトレーニング
<フィギュアスケート 06-07グランプリシリーズ第5戦>サフチェンコ/ショルコウィー組 FSで2位に入り総合優勝を果たす - ロシア
【モスクワ/ロシア 25日 AFP】フィギュアスケート、06-07グランプリシリーズ第5戦、ロシア杯(Cup of Russia - Bosco Sport 2006)、ペア・フリースケーティング(FS)。ショートプログラム(SP)で首位に立ったドイツのアリオナ・サフチェンコ(Aliona Savchenko)/ロビン・ショルコウィー(Robin Szolkowy)組は、115.49ポイントを獲得して2位に入り、合計179.45ポイントをマークして優勝を飾った。(c)AFP/ALEXANDER WILF
【日本の歴史に名演説が少ない】
欧米の歴史書を読んでいると、名演説によってたくさんの人を感動させ、歴史を変えたというエピソードにしばしば出会う。アントニーによるジュリアス・シーザーの追悼演説、ナポレオンのイタリア戦役での兵士に対する演説、マルティン・ルーサー・キングの"I have a dream"の演説など、枚挙にいとまがないほどである。それに対して日本歴史には名演説がほとんど登場しない。議会政治が登場してからの斉藤隆夫代議士の反軍演説くらいであろう。日本人は言葉や言語を欧米人ほど言語のきらびやかさでこころを動かされないのではないだろうか。腹芸に代表されるように、言語で表現されない相手の思いを汲み取ることが人間として高度なコミュニケーション能力とされる。スポーツのメンタルトレーニングは欧米で発達したせいか、言語を重視する。とくにアメリカでは、認知行動療法の影響が強いせいか、自分自身にポジティブな言葉を語りかけ、プレッシャーをはねのけて、のびのびとプレーできる心理状態を作り出すテクニックが盛んである。アスリートの言語に対する信頼がなければ成り立たないメソッドである。ぼく自身のメンタルコーチとしての体験では、自分に語りかける言葉によって、わくわく感を創り出せる日本の選手は少ないように思われる。とくにオリンピックになるとまったく通用しない。日本人はどうやら自分自身の言語に大きな信頼を置いていないようだ。
【日本人は自分にうそがつけない】
日本人は欧米の人に比べて正直だというつもりはまったくない。しかし、日本人は哀しいくらいまじめで、きらびやかな言葉には気恥ずかしさを覚える。芝居や映画なら言葉によって感動するし、他人の賛辞なら多少はこころを動かすが、自分の言葉に酔いしれる人は少ない。試合中に気後れしたり、あきらめそうになったとき、自分に語りかける言葉をアスリート自身につくってもらう方法がメンタルトレーニングにある。国内試合や、とくに重要でないレベルの国際試合なら、有効だが、選手生命がかかっていると大試合では効果が薄れるのは、日本人が農耕民族だったという歴史的背景があるからではないかと思い始めている。ご存知のとおり、日本は縄文時代の後半あたりから稲作を開始し、米が極めて重要な役割を社会的にも、経済的にも果たすようになった。平家と源氏の戦いも、戦国時代の群雄の戦いも、米作地帯の争奪戦と呼んでもよいくらいである米は農業では中耕作物と呼ばれるもので、栽培の途中で手を入れれば入れるほど、収穫が増える性質がある。つまり日々の努力が確実に成果になってあらわれる作物である。日本人の多くは歴史的には口で言うより、日々の精進が大切であることを身にしみて知っている民族である。日本では、欧米式のメンタルトレーニングよりも、毎日の練習の積み重ねのほうが、選手も監督も信頼できるのではないだろうか。
【農耕型メンタルトレーニングとは】
日本選手がオリンピックで勝とうと思えば、質と量で世界一の練習と試合経験を実際に積んできた手ごたえを持つことが、とくに必要だと思う。監督や技術コーチなどと綿密に打ち合わせをして、充実した練習メニューに従って、世界のトップクラスのアスリートに成長したことを自覚させることに主眼を置いたメンタルトレーニングを農耕型メンタルトレーニングとぼくは呼んでいる。言語以上に実際行動を重視するメソッドである。メンタルトレーニングの教科書には登場しない新しいやり方である。今後、実践を通して体系化したいと考えている。
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登録日:2006年 11月 26日 22:19:44
- プロフィール
- 松下 信武
- (男)
- ■職業:感情心理学の一書生 エグゼクティブ・コーチ&メンタルコーチ
■主な経歴:40歳のとき河合隼雄先生の講義に衝撃を受け、ユング心理学の勉強を始める。その後、Emotional Intelligenceを中心とした感情心理学を研究。現在の肩書きは(株)ベルシステム24・執行役員 総合研究所所長兼ベルカレッジ統括長 日本電産サンキョー・スケート部メンタルコーチ
■ひとこと:レンブラントは絵筆で人間の姿を描き続けましたが、ぼくは心理学をつかって、「こころの肖像画家」になりたいと思っています。
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