ファッション・マニエリズム(1)
07年春夏ミラノコレクションで見るトレンド:引き続き根強い人気のプラットフォーム・シューズー東京
【東京 2日 AFP BB News】
過去現在未来、様々なスタイルから次のトレンドを先読み。
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<その1> ないないづくし。
ファッション関係の取材をすることがある。そうしたときはもちろん、ごくごく冷静に、仕事で「来シーズンのファッション・トレンドは云々」なんて書いている。それらを書いているときの実際のさまはトレンディでもなんでもない。すっぴんかつ髪をテキトーにたばねて、よれよれTシャツで、そば茶をすすりながら、あるいは庭いじりのためにすっかり赤やけした状態で、世間でいうファッショナブルな記事を書いていたりする。ぜんぜん「おしゃれ」ではないのである。鶴の恩返しのように見えない羽をこっそりと文章に織り込んでいると描写できるならばせめてもの救いだ。
…
ファッションといえば、お金はあまりかけない。あくまでもほどほど。なによりも、自分の心と体を無理強いしてまでトレンドに振り回されたくない。ローライズすぎるジーンズはおなかが冷えそうだし、高いピンヒールはおそろしく歩きづらいのでよろしくない。“よせて上げる下着”は窮屈だし、バックルがやたらとついたバッグは重すぎるから実用的でない。同じ牛革のデザインであったなら、はきにくいバーニーズ・ニューヨークの高いブーツより、はきやすいイトーヨーカドーのお値ごろなブーツのほうがお財布にも害がない。
***
新聞記者時代、毎日朝から晩まで取材・執筆・入稿・校正という猛烈な作業に追われて息つく暇もないほどに働いていた。そうした日々の中で無理がたたって、いよいよ週末の休みだけでは回復不能なまでに疲労困憊してしまったことがある。とにかく疲れのたまったあらゆる体の部位、特に締め付けや圧力のかかる場所に大きなナゾの腫れ物がでるようになってしまったのだ。
これは現場を飛び回って働いていた私にとってかなりの事件であり、耐え難い苦痛であった。靴をはいて歩くことが満足に出来ない。つま先からかかとまで、耐え難い痛みやかゆみをともなって赤くはれあがる。下着や靴下、ベルトの類で体をしめつける部分はすべてミミズ腫れ。ショルダーバッグをかければ重みのかかった部分にもはれものができ、メガネをかければ耳が赤く膨張した。
こんな状態がしばらく続き、私は企業という社会的営利集団から休養期間をとることを決心し、体調をみながらフリーランスとしてぼちぼちと仕事をスタートさせた。しばらくはそのアレルギーとの格闘である。皮膚科の先生からは、詳しい理由はわからないもののある種のストレス性、および食品によるじんましんの一種であろうといわれた。大量のクリームと漢方薬を処方され、おそらく2年くらいはそれを飲み続けていたとおもう。
***
高いヒールははけない。下着はワイヤーなしのゆるいもの。皮膚は過敏だから化繊の類はすべてダメ。ネックレス、指輪、そして時計といった皮膚になんらかの刺激を与えそうなものもご法度である。
ときは不景気の真っ只中、(私にとっては不幸中の幸いで)世の中的に「癒し」が流行し、当たりのやわらかいファッションもさかんに登場するようになったころである。それまで依然名残があったバブリー・世紀末ファッションはなりをひそめて、幅広のぺたんこ靴や、お肌にやさしく伸び縮みするストレッチ性のパンツ、などなどが店に多く並んだ。体とココロにやさしいことを売りにしたファッションは、このときばかりは実質上の大変な癒しになった。
私とてさすが人間、回復の力は持っていた。ちょっと時間はかかったけれど、すっかり復調し、外出する際には本来は好きな高いヒールも体にぴったりとした服も着ることができるようになった。そしてこの一件があって以来、機能性とファッション性、着心地のよさのバランスは一番の重要項目となっている。
トレンドに身を固めることがおしゃれというのでもない。私の場合、決して最高にいけているとは露にもおもわないが、ひたすら働いた経験と、恐怖のアレルギー経験が知恵となって自分自身のスタイルづくりに大きなヒントを与えてくれている。自分にとっての居心地のよいスタイルをつくるには、男女問わずそれなりの経験と失敗が必要だ。こればかりはある程度年季がいるのだから、年を重ねるのも悪いものじゃない。(その2へ続く)
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登録日:2006年 10月 10日 11:21:53
コメント
<<祝>> MODE PRESS創刊
http://www.afpbb.com/fashion/
ということでエントリーしました「ファッション・マニエリズム」は
気取らないおしゃれ論考シリーズとなる予定です。
mika @ 2006年 10月 10日 12:10:51
楽しいファッション考、今後の記事が期待されます。
ファッション、これは外部に対し自分の個性やアピールできるものが
どこにあるのか、しかもそれが願わくば時代の雰囲気や流れに
自然にフィットしているのが望ましいのでしょうが、それをわきまえて
身につけないと様にならないようなものでしょう。そういう意味では、
ハイセンスなファッションを身にまとうということは、自分自身の特性や
気質まで充分に分かった上で、つまり自己認識が深くてハイセンスで
あることが必須でしょうね。
おしゃれの秘訣は身につけるものが絶対に自分に合うという自信と
いうか確信が大事だと以前ダンディな紳士に聞いたことがあります。
自信や確信といっても、それは自分のことをよく知るということがあって
初めてそのような気持ちになれるのでしょうね。
その意味では、程ほどの時代性、場合によっては先端的な時代動向
に鋭敏な感性をもちつつ、その中での自分のたたずまいに対する確固たる
読みが必要になってくるでしょう。ファッションセンスがあって、はっとするような
ハイセンスの衣装や持ち物を身につけているひとは、きっとその人が
自分のことをよく研究し、自分に対する感性に日ごろから磨きをかける努力を
している人ということになるのかも知れませんね。
続編を楽しみにしてます。
Y.F. @ 2006年 10月 14日 11:41:56
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ライター・ジャーナリスト・エディター。東京生まれ千葉育ち。千葉県八千代市在住。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、広告制作会社、新聞社勤務を経てフリーランスとなり、日本や海外で活動中。「ガンダーラ・ハウス」は気軽なエッセイ集です。近況などは上記「ブログ」のリンクからどうぞ。
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