ファッション・マニエリズム(3)
【ロンドン/英国 7日 AFP】豊富なデザインの入れ墨が披露されるTHE LONDON TATTOO CONVENTION 2006が6日、ロンドンで開催された。年1回開催されるこのイベントは今回が2回目。開催期間は6日から8日までの3日間。写真は6日、米国のラスベガス(Las Vegas)から同イベントに参加したモデル、Sabina Kelly。(c)AFP/JOHN D MCHUGH
<その3> 変人王国。
今回はちょっとだけイギリスの話をしよう。イギリスは、世界にも稀にみる個人主義国である。他民族国家である。さらに変人たちであふれている。着ている服といえばみなの主義主張が入り混じり、それぞれ自由気ままである。なにをどう選んで着ても、白い目をされることはほとんどない。そうしたお国柄で、私は案外居心地よく暮らすことができる。
…
アパレルの殿堂はフランスやイタリア。インテリアだとドイツやデンマークやスウェーデン。ではイギリスはというと、アンティークだとか古いものといっておけばおさまりがいいだろうか。アバンギャルド系が盛んで、ミニスカートやパンクが発祥で、などとよくいわれるが、一度それらが生まれると、ずっとかわらない。保持されるのもイギリスである。
パンクはいまや、伝統のイギリスファッションのひとつとして定着しているきらいすらある。車のデザインにしたって同じ。いまだに、イギリスでは日本では考えられないような旧式のヴィンテージカーが普通に走っている。日本だったらただみすぼらしいといわれてしまいそうなものも、である。それが当たり前だし、逆に格好よく見えたりもするから不思議だ。
イギリスでは日本でいわれているほど目だった流行というものはないし、ファッション・ショーで取りざたされるカッティングエッジなものはほんの一部に限られている。とにかく一般に向けては、だいたい年間を通してゆるやかなシルエットや素材の変化があるのみである。若者むけの流行はもちろんあるけれど、前回に話しをしたような「ユニフォーム」的な、大々的な普及はみられない。
黒はイギリスにおいてあきるくらいに永年のトレンドだし、エスニック系は流行というよりは実際にすんでいるインド系やイスラム系の人々の日常服であることも、ごくごく普通のこと。ということで一度気に入ったものを買えば、長く着まわしをしやすい世の中だ。
売っているアイテムも往々にして実用的。だからたとえ物価が世界一高いといわれようとも、トレンドがあっちこっちに行くことが少ないので、ファッション・アイテムに対する累積の出費は少ない。
そういえば、私はルイ・ヴィトンやグッチ、エルメスを街中で持ち歩いている人を、イギリスではまずほとんど見かけたことがない。彼らにとっての外国のブランドが実は一体なんであるのかよく知らない人も、それほど珍しくない。
日本で「ああいったヨーロピアンブランドは、特に女の子たちの間で大変な人気なのだよ」と”説明を加える”と、ただ軽く「フーン。日本には沢山いいものがあるのになぜわざわざ高いヨーロッパのものを買うのだろうか?」とかえされてしまうお国柄である。
私は、着るものに関しては格別目をひくような派手なもの、個性的なものは身につけない。それでも、話をしていると、「変わり者」といわれることがよくある。これは着ている服から判断されるものではないようだ。私自身どの部分をどう感じ取られて「変わっている」と形容されるのかはよくわからない。何と比較して変わっているのか。それはおいおい、時間のあるときに検証してみるとして、とにかくちょっとだけマジョリティの方法論を逸すると「変わっている」とすぐにいわれる日本社会である。
イギリスにいると、冗談まじりに「ミカはクレイジーだ」といわれることがある。それは案外ポジティブなほめ言葉であったりする。ましてや実際に、ちょっと会って話をした程度で「変わり者」といわれることは、完全ではないにしろ、滅多にない。そういう国では、自分自身の個性を過剰に装飾する必要も、周囲に合わせて削り取る必要もない。流行の、あるいはアートとしての流行をおうことをしないかわりに、自分自身に向き合うことができる。それが私にとってのイギリスという国である。(その4へ続く)
カテゴリー[ ファッション・マニエリズム ], コメント[1], トラックバック[0]
登録日:2006年 10月 23日 13:36:29
コメント
<ファッション・マニエリズム>は不定期更新の連載企画です。
Vol.4は、また後ほど。どうぞよろしくお願いいたします。
mika @ 2006年 11月 04日 09:58:47
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ライター・ジャーナリスト・エディター。東京生まれ千葉育ち。千葉県八千代市在住。玉川大学文学部外国語学科を卒業後、広告制作会社、新聞社勤務を経てフリーランスとなり、日本や海外で活動中。「ガンダーラ・ハウス」は気軽なエッセイ集です。近況などは上記「ブログ」のリンクからどうぞ。
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